引き続き、石割山~大平山のお天気講座で見られた雲を紹介します。
この日は冬型の気圧配置が強まり、日本列島は縦縞模様で等圧線の間隔も狭く、全国的に強い北西風が吹きました。
下の写真のように、9時頃は上空には青空が広がり、富士山も綺麗に見えました。通常の冬型では、富士山周辺ではこのような天気になります。
ところが、西の空から積雲の塊が流れ込み始めました。そして遠くの南アルプスは雲に覆われています。これは、冬型が強く、上空の寒気が強いときによく現れる雲で、このようなとき、八ヶ岳や南アルプスなど中部山岳中・南部でも吹雪になります。
しかし、普通は南アルプスや八ヶ岳を吹き降ろす下降流で富士山周辺や大菩薩嶺などはお天気が良くなるのですが、この日は違いました。どんどん雲が湧きだして、上空を覆い始めたのです。石割山でも小雪がちらつく時間もありました。
さて、下の写真は滝子山上空の雲の様子ですが、雲が連なっており、左から右へと風に流されている様子がわかります。風の強さが下の方と上空とで異なるときに良く現れる雲で、海上や大きな平野部の上にできるときは、同じ形の雲が数珠のように連なっていきますが、地形が複雑な山では形が変わってきます。
このような雲が山を越えて石割山周辺にも現れてきたのは、下層に強い寒気が入ってきたことを現わしています。
上の2つの図は850hPa(高度約1,500m)付近の気温予想図です。17日の9時と15時の予想を示しています。石割山は、9時よりも15時の方が気温がぐっと下がっており、強い寒気が南下してきていることがわかります。強い下層の寒気が流れ込むとき、積雲や層積雲のような低い雲が出現することが多くなります。
また、上の写真は相模湾上空にできた積雲です。相模湾のように海の上では、熱と水蒸気の補給を受けて雲が発達しやすくなります。したがって、他のエリアよりも、相模湾上空では雲が発達しています。
もうひとつ雲が発達した理由はここにシアーライン(風と風がぶつかり合うところ)ができているためです。観天望気講座52で説明しましたように、風と風がぶつかるところでは、上昇気流が発生するため、雲ができやすくなります。特に、冬型が強まると、下図のように相模湾や伊豆半島付近でシアーラインができやすくなるのです。
※地上天気図は気象庁提供。予想図は山の天気予報、有料サイトの専門天気図より。図は猪熊隆之または、山岳気象大全(山と渓谷社)より。図、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。
文責、写真:猪熊隆之