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猪熊隆之の観天望気講座41

2014-06-21 20:30:55 | 観天望気

先日、「空見ハイキング」で那須岳に行きました。興味深い雲が見られたのでご紹介します。

当日は、500hPaで-12℃以下の寒気に覆われる予想でした(下図)。上層に寒気が入ると、大気が不安定になり、入道雲が発達しやすくなります。

 気圧配置は夏型のような南高北低型。等圧線が東西に寝た形で那須では南西~西風で天気が崩れにくい形。ということで、心配なのは午後の雷だけという状況でした。雷の予想は天気図だけだと難しいことが多いです。そこで、現場での観天望気が重要になります。

案の定、積雲がもくもくと発達してきました(下の写真)。いわゆる入道雲です。この程度ですと、まだ雷を発生させたり、強い雨を降らせる雲ではありませんが、これ以上発達すると怖い存在になります。

ただ、この日は、雲は那須連峰の東側(関東平野側)で発達する傾向がありました。それは、稜線では西風が吹いていたからです。

上の写真は、那須岳山頂付近から北側を見た写真です。この写真から当日の風の様子がわかります。雲はしたの方では日中の谷風によって右方向から左側に吹いていき、山腹に沿って上昇させられて雲が発生しています。一方で雲は稜線を越えて上昇すると、今度は上空を吹いている西風に押し戻されているのです。しかも、この西風は乾いていて、雲は発達することなく、次第に消えていっています。西風がなぜ乾いているのかは、下の写真を見るとわかります。

緑線で囲んだ雲は入道雲の卵ですが、どれも発達していません。那須岳の西側で空気が乾いているため、発達できないのです。つまり、西側から吹いている風は乾いていることになります。緑の矢印のところでは上昇気流による雲が発生していますが、上方へ成長していくにつれて消えていきました。これも空気が比較的乾いていることを表しています。

このように、雲は目に見えない空気の状況を表してくれています。この日は結局、雷雲が那須岳で発達することはありませんでした。これが西風と谷風が稜線付近でぶつかり、西側で雲が発達するようなときは要警戒です。雲を観察して、早めに雷の危険から身を守りましょう。

※図、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

文責:猪熊隆之


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