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雲から山の天気を学ぼう(第7回)

2016-08-22 18:39:17 | 観天望気

雲から山の天気を学ぼう(第7回)

天気が崩れていくときの雲partⅠ

低気圧の北側と温暖前線編

 

前回は、低気圧や前線が近づいてくるとき、つまり天気が崩れていくときに、最初に現れる雲について学びました。ただ、雨巻雲(あめけんうん)が現れても必ず天気が崩れる訳ではありません。天気図で低気圧や前線など、天気を崩す要素が見当たらないかを確認するとともに、その後の雲の変化を見ることが大切です。そこで、今回は、低気圧が近づいてくるときに、どのように雲が変化していくかを見ていきます。

春や秋の時期、日本付近を通過する低気圧は温帯低気圧と呼び、温かい空気と冷たい空気がぶつかり合うと発生します。暖気と寒気が共に強い場合には、低気圧は発達します。温帯低気圧は、温暖前線と寒冷前線という2つの前線を持つことが多いです。温暖前線は低気圧の進行方向前方に、寒冷前線は後方にあります。従って、低気圧が接近してくるときは、温暖前線が先に接近してくることになります。

下の図をご覧ください。これは上の図におけるA-Bの断面図です。温暖前線は冷たい空気が元々あったところに、温かい空気がやってくることで、その境界にできます。温かい空気は軽く、冷たい空気は重いので、温かい空気は冷たい空気の上を乗りあげていきます。つまり、前線は地上付近にのみあるのではなく、進行方向に向かって上空に延びています。

温暖前線の構造(山岳気象大全 猪熊隆之著:山と渓谷社より)

 

上昇気流が起きるところで雲は発生します。冷たい空気の上を温かい空気が乗り上げて上昇していますので、前線付近では地上近くで上昇気流が発生し、前線から離れるにつれて(Bに近づくにつれて)上空高いところで上昇気流が起きています。つまり、前線に近いほど低いところから雲ができ、前線から離れるにつれて高い雲になっていきます。

低気圧が接近すると、最初に高い雲が現れ、次第に低い雲に変わっていくのはそのためです。

典型的な雲の変化は以下の通りです。

①  巻雲(けんうん)→②巻層雲(けんそううん)、または③巻積雲(けんせきうん)→④高層雲(こうそううん)→⑤乱層雲(らんそううん)

 

 巻雲、巻層雲、巻積雲は「晴れ」、高層雲に覆われると「くもり」、乱層雲に覆われると「雨」ということになります。

 それでは、実際に低気圧や温暖前線が近づいていくときの雲の変化を見ていきましょう。

 

①    雨巻雲

②    巻層雲、薄雲

③    巻積雲(けんせきうん・うろこ雲)

時々、雨巻雲が現れた後に、巻層雲が現れず、全天に巻積雲が現れることがあります。このようなときは、低気圧が急激に発達したり、台風が近づいてくるなど大きな天候悪化が予想されるときです。特に注意しましょう。

④    高層雲(こうそううん・おぼろ雲)

巻層雲や巻積雲が高層雲に変わってきたら、山では数時間後に雨が降り出すことが多くなります。この雲に覆われてきたら、雨を覚悟した方が良いでしょう。

⑤  乱層雲(らんそううん・あまぐも)

雨や雪を降らす雲です。山ではあまり遭遇したくないですね。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 


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