山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座75

2015-10-27 09:37:34 | 観天望気

今日は少し前になりますが、久しぶりに雲がやる気を出した日がありましたので、そのときの雲の解説をしていきます。

この日の天気図を見ると、日本の東海上から日本海、朝鮮半島と3つの高気圧が連なっており、高気圧の中心に近い北日本や日本海側を中心に天気が良くなりそうな感じです。実際晴れたところが多くなりました。

写真1 茅野市蓼科方面から見た甲斐駒~守屋山方面

ところが、午後になると上の写真のように、守屋山~入笠山の伊那側(下の地図参照)で積乱雲が発達しています。一方で入笠山~守屋山の上に浮かぶ小さな雲(白い囲み線)は、積乱雲の卵、積雲です。ここでは入笠山~守屋山の斜面に沿って上昇した空気がこの積雲を作っています。手前(茅野側)で積雲が発達せず、奥側(伊那側)で雲がやる気を出して、積乱雲にまで発達した原因はなんでしょうか?

 

雲にやる気を出させる要因は、大きく分けて2つです。1つは、上層に強い寒気が入ること、もう1つは下層に温かく湿った空気が入ることです。

上図は500hPa(高度約5,700m)の気温予想図です。17日12時の予想を表しています。10月中旬~下旬における雲がやる気を出す目安は500hPaで-18℃以下です。日本海から南下してきた-18℃以下の寒気が中国地方から中部地方にかかってきています。この寒気が、雲にやる気を出させた原因になります。

それでは茅野側では雲がやる気を出さなかった理由というと、地図を見ていただくと、守屋山~入笠山の西から南西側には伊那盆地があります。伊那盆地は茅野に比べて標高が低く、盆地となっているため、日中、茅野側よりも気温が上昇します。この温められた空気が谷風によって守屋山~入笠山の斜面を上昇していったことが大きいものと思われます。

写真2 写真1の1時間後の状況

 

雲はさらにやる気を出して、1時間後には上の写真のように成長しました。茅野上空にも暗灰色の雲が達しています。ただ、これは積乱雲本体の雲ではありません。積乱雲の本体はあくまで山の反対側にあります。実際、蓼科では一滴も雨は降りませんでした。それでは、この雲の正体はなんでしょう?

この雲は巻雲が発達したものです。複数の積乱雲が発達し、それが上空でまとまって、上空の風(地図中の矢印参照)で茅野の方に流れてきています。巻雲は通常透き通った薄い雲ですが、このように積乱雲の上部では厚い、黒い雲になることもあるのですね。

※地上天気図は気象庁ホームページより。500hPa面の気温予想図はヤマテンの山の天気予報、専門天気図ページより。写真は猪熊隆之撮影。
※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

文責:猪熊隆之


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