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猪熊隆之の観天望気講座122

2018-12-01 18:17:08 | 観天望気

~弱い冬型のときの北アルプス~

今回は冬型が弱く、上層にも強い寒気が入っていないときの雲について見ていきます。

冬型の気圧配置になると、日本海側では雨や雪、太平洋側では晴れという天気になります。ただし、冬型の強弱や、上層の寒気、風向きなどによって天気は大きく変わります。

今年はなかなか強い冬型になりませんので、今回は昨日(11月30日)の午前中、弱い冬型になったときの北アルプスに天気について解説します。 

図1 冬型が弱いときの天気図(気象庁提供)

図2 冬型が強いときの天気図(気象庁提供)

冬型とは、シベリアや中国大陸方面に高気圧、千島列島やオホーツク海、日本の東海上に低気圧というように、日本列島から見て東側や北側の気圧が低く、西側が高いという気圧配置です。そのため、西高東低型(せいこうとうていがた)とも呼ばれます。したがって、等圧線は縦縞模様になるのが特徴です。冬型が強いときは、等圧線の間隔が狭く(図2参照)、冬型が弱いときは、等圧線の間隔が広いときです。目安としては東京/名古屋間(図1、図2の赤い矢印)より狭いときは強い冬型、広いときは弱い冬型と覚えておくと良いでしょう。

さて、図1は、日本列島から見て西側に高気圧があり、東側や北側に低気圧があるので、冬型の気圧配置ですが、明らかに等圧線の間隔が広いですね。つまり、弱い冬型になります。さて、このようなとき、北アルプスではどんな天気になるのでしょうか。 

写真1 山麓線(塩尻-松本)からの北アルプス南部

風下側の平地、安曇野盆地は快晴です。写真1は西側を向いています。写真左側が南、右側が北の方角になります。この日は北西から北寄りの風が吹いており、北アルプスの中でも日本海からの湿った空気が入りにくい南部は晴れています。槍ヶ岳の穂先も見えますね。穂高連峰の辺りのみ、飛騨側(日本海方面)からの湿った空気の影響で雲があります。 

写真2 山麓線(塩尻-松本)からの北アルプス北部

一方、写真1の右側にあたる写真2では燕岳を除き、広い範囲で雲がかかっています。特に右側に行くほど、雲は灰色がかって厚みも増しています。

このように、冬型が弱いときは、北アルプス北部では白馬岳など北に行くほど天気が悪くなりますが、北アルプス南部では飛騨側の一部を除き、お天気は良くなります。ただし、上層に強い寒気が入ると、南部でも雲がかかります。山麓から山にかかっている雲の感じで、冬型が強いか弱いかが分かります。冬型が強いときは、森林限界より上部では猛吹雪となっているので、稜線での行動は非常に厳しいものになります。それに対して、冬型が弱いときは、行動できる山が多くなります。予想天気図と観天望気を組み合わせて、気象リスクが少ない日に行動するようにしましょう。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 


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