山の天気予報

ヤマテンからのお知らせや写真投稿などを行います。

猪熊隆之の観天望気講座156

2020-07-05 16:38:14 | 観天望気

地形と雲の関係 ~南西風~

この日は、天気予報では朝から雨予報、フタを開けてみると、次第に青空が広がってきました。昼頃からは雨になりましたが、午前中の青空が広がった理由は地形の影響が大きいです。

そこで、今回は地形と雲の関係について書かせていただきます。

観天望気ファンの方は耳にタコができているかもしれませんが、初めてお読みいただく方のために、まずは山の天気の基本をご紹介させていただきます。

平地では低気圧や前線が接近してきたりするなど、天気を悪化させるハッキリとした要因が現れることが多いのですが、山ではそうしたことがなくても天気が悪くなることがあります。「天気予報では晴れだったのに、行ってみたら・・・。」という経験をお持ちの方も多いと思います。

天気が悪くなるのは雲ができて、雲が成長する(やる気を出す)からです。雲は、水蒸気を含んだ空気が上昇して冷やされることでできます。この「空気が上昇する」ということが雲を発生させるのにとても大切で、山では風が吹くと、簡単に空気が上昇してしまうので、低気圧や前線などが来なくても雲ができて天気が崩れることがあります。

図1 風が吹くことで山の天気が崩れる理由(山の天気リスクマネジメント「山と溪谷社」より)

上図のように、右から左に風が吹くとします。平地や海の上など山がない場所では風はそのまま吹き抜けていくので上昇しませんが、山がある場合は、山にぶつかった風は斜面に沿って上昇していくため、雲ができるのです。特に、海側から風が吹くときは、海上に溜まっている水蒸気を多く含んだ空気が山に運ばれてきます。そのため、山の天気は崩れやすくなります。海側から風が吹くときに山の天気は崩れやすいという山の天気の原則を覚えておきましょう。

この原則を頭に入れると、山にかかっている雲の理由が分かることが多いです。

写真1 南西風が吹くときの雲

さて、写真1は南西風が吹いているときに八ヶ岳山麓で撮影したものです。このときのカメラの位置は、図1(下図)をご参照ください。写真の右側が北北西、正面が南南西、左側が東南東の方角になります。正面奥に山が見えますが、入笠山から守屋山に連なる山並みです。つまり、南西方向になります。山の周辺では雲底が暗くなっています。これは、湿った南西風がこれらの山にぶつかってで上昇し(図中緑色の矢印)、雲が発達しているからです。一方で、写真の手前側に行くにつれ、雲は弱まっています。これは山を越えて下降気流となり(図中オレンジ色の矢印)、雲が蒸発していくためです。

一方、写真の左側には山の手前に塊状の雲ができています。この動きを確認したところ、写真の右奥(西の空)から左手前(東の空)に流れていました。つまり、守屋山~入笠山の山を避けて北側から回り込んだ西風によって、天竜川方面からの湿った空気が入ったことと、山梨県北杜市の方から回り込んできた風とぶつかって成長した雲であると思われます。

図1 撮影ポイントとその周辺の地図

雲を見ることで上空の風の流れを読むことができ、その風の流れが雲の成因を教えてくれます。こうやって雲を見ていくと、楽しいですよ!

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猪熊隆之の観天望気講座155

2020-07-05 16:38:02 | 観天望気

~すじ雲(巻雲)が語ってくれること~

すじ雲(巻雲)は、青空に筆でスーッと筋を書いたような雲です。半透明なのは、上空高い所(高度8~13km付近)にあり、雲が全て氷晶でできているからです。私がもっとも好きな雲でもあります。すじ雲には直線上のものと、折れ曲がったものとがあります。今日(5月12日)は折れ曲がったものが見られました。

写真1 折れ曲がったすじ雲

上の写真で真ん中やや左寄りに見られるのがすじ雲です。雲がカーブしています。その理由について述べていきます。

写真2 写真1の解説図

まず、雲がもっとも濃くなっている部分では上昇気流が起きて水蒸気が次々と雲に変わっている場所です(雲がどんどん誕生している場所)。上昇気流により、雲が濃密になっています。そこから右下(私たちから見ると)に雲は流れて折れ曲がっています。これは下降気流により、雲が高度を下げていくときに、風の向きや風速が変わるためです。そこからさらに右側に雲は流れていき、薄くなっていますが、これは雲がさらに下降していき、蒸発して水蒸気に戻りつつあることを示しています。

写真3 直線状のすじ雲

こちらの雲は直線状ですね。下降しながら風向、風速が変わらない場合にはこのような形になります。

すじ雲を見たら、雲がどの方角に流れていき、どこで生まれてどこで消えているのか考えてみましょう。雲の気持ちに耳をすませば、答えが見えてくるでしょう。

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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ヤマテン動画講座番外編「マスクを付けての登山を試してみた」配信のお知らせ

2020-07-05 09:20:08 | おしらせ

山の天気予報会員各位

平素より「山の天気予報」をご利用いただき、まことにありがとうございます。
ヤマテンでは「天気図の見方」の動画配信講座に続いて、「withコロナ時代の登山スタイル」についての動画配信を不定期でおこなうことにしました。

第1回目は、「登山中のマスクを着け心地はどれがいい?」です。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、人が多い登山ルートや山小屋の中では、マスクを付けることが推奨されています。しかしながら、実際に登山中(運動中)に着用する際、呼吸のしやすさや着用時の蒸れ・暑さなどに不安がある方もいるかと思います。
そこで、複数のマスクを使い、実際の着用感はどうなのか、霧ヶ峰で試してみました。
ぜひご覧いただければと思います。

 

ヤマテンのYoutubeでは、ヤマテンユーザーが利用できる専門・高層天気図の使い方について説明もしております。ご興味のある方はチャンネル登録をお願いします。
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株式会社ヤマテン
講習会担当

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