山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座101

2017-10-12 12:31:36 | 観天望気

今回は、9月30日~10月1日に山ガールネットさんとの共催で行われた赤岳登頂ツアーの際に見られた雲についてです。

この週末は中部山岳では良い天気になりました。

天気図を見ると、朝鮮半島の南に高気圧があって東日本から西日本はこの高気圧に広く覆われていますね。

上層の谷の通過で午前中は八ヶ岳でも雲は多くなりましたが、高気圧が西側にあり、等圧線の間隔が広がっているときは天気が崩れる心配はありません。こういうとき、唯一心配なのが午後からの積乱雲の発達。つまり、雲がやる気を出してしまうことです。

この日は、日中気温が上がったために、地面付近で温められた空気が上昇し、午後遅くなって積雲が杣添尾根の上で発生しました。これは尾根の両側で温められた空気が尾根上でぶつかって上昇気流が強まったために発生したものです。

ただ、この日はそれほど雲にやる気がなかったので、この程度で終わりました。

雲がどういうときにやる気を出してどういうときに出さないのかは「観天望気講座77」でご確認ください(下記のURL)。

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/d8d91a3876370b0670790c4b3b078e43

この積雲のおかげでブロッケン現象が見られました!

ブロッケン現象については観天望気講座93で説明していますので、興味がありましたらどうぞ。

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/3f8e6696c91739f680fe1f447cf2236a

さて、今日のメインはこちらの雲ではなく、下の写真で遠くに見える雲です。

実はこの雲こそ、やる気を出してしまった雲、つまり積乱雲です。別名、入道雲と呼ばれ、ソフトクリームのようにモクモクと上方に成長した雲ですが、このように雲が単体ではなく、帯状に連なっているときは要注意です。こうした雲は寒冷前線に伴うもので雲が近づくと風が急に強まり、雷を伴った激しい雨や雹が降る恐れがあります。気温もぐっと下がってきます。

このような雲がどんどん接近してくるときはすぐに安全地帯まで逃げましょう。

今回は、積乱雲が発達しているのは新潟県の山岳で八ヶ岳からは遠く離れており、東から西へと動いて接近することはありませんでしたので問題ありませんでした。

それではなぜ、この雲が新潟県で発達しているのかを天気図から見ていきましょう。

気象庁の天気図では分かりにくいので、ヤマテンの専門天気図から見ていきます。

上手をご覧いただくと、1008や1012の等圧線が折れ曲がっているのが分かります。このように気圧の低い方から高い方に張り出している部分を結んだところ(赤い破線の部分)を気圧の谷と言います。

この谷が午後になって東北地方から新潟県にかかってきました。

気圧の谷付近では上昇気流が起きるので雲が発生します。

さらに、この日は500hPaでマイナス18度以下というこの時期としては強い寒気が北日本の上空に流れ込んできました。

そのため、雲がやる気を出してしまったんですね。飯豊・朝日連峰や月山、鳥海山などにお出かけの方は、この雷雲に捕まってしまった方もいたのではないでしょうか?

そんなときは、先ほど説明しましたように、やる気のある雲が接近してくるかどうかを確認しましょう。接近してくるときは「逃げるが勝ち!」です。

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

 

 

 

 

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