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雲から山の天気を学ぼう(第10回)

2017-06-10 17:46:16 | 観天望気

雲から山の天気を学ぼう(第10回)

やる気のある雲、やる気のない雲

 

今回は、冬山の天気を予想するうえで重要な雲の見分け方をご紹介します。

 

雲は大きく分けると2種類あります。

・やる気のない雲

・やる気のある雲

 

雲は空気の状態によってやる気を出して、もくもくと上方へ成長したり、やる気がなくなって、雲のてっぺんが平らな雲になったりします。

 

つまり、雲の形を見ると、空気の状態(気持ち)が分かるのです。

 

雲のやる気がないとき

空気は温かいと軽く、冷たいと重くなる性質があるので、本来であれば、下図のように冷たい空気は下に、温かい空気が上にいきます。

こういう状態を大気が安定な状態といいます。空気にとって理想的で、居心地の良い状態です。

※上図 山岳気象大全(山と渓谷社より)

 

このようなときは、空気は動こうとしませんので、やる気を出して上に成長できません。特に雲の上に大気の安定した層があると、雲はそれ以上、上にあがっていかれず、下の写真のように雲のてっぺんが水平な雲になります。

このような雲が朝、出ているときは、大気は安定しており、好天が期待できます。

 

雲がやる気を出すとき

 

しかしながら、大気が安定な状態はあまりありません。皆様もご存じのとおり、普通は空気は上に行くほど気温が低くなっていきます。高い山になればなるほど、寒くなっていくのはそのためです。つまり、ほとんどの場合、空気は下の図のような状態になっています。

空気は普段から理想には程遠い、イライラしている状態になっています。そんなときに、下の2つのケースが発生すると、イライラしていた空気は遂にキレてしまい、雲はやる気を出してしまうのです。

上図のように、上空に寒気が入ると、空気はキレて温かい空気は冷たい空気の中に突っ込んでいこうとします。このとき、強い上昇気流が発生し、雲はこれに乗ってやる気を出して上へ上へと発達していくのです。

 

ケース2.下の方に温かく湿った空気が入ってくるとき

これは、夏場に多いケースですが、上図のように、下の方に温かく湿った空気が入ると、空気はやはりキレやすくなり、雲がやる気を出して発達することが多くなります。

 

雲がやる気を出すときは、下の図のように、上方へモクモクと雲が発達することが多くなります。夏場は日中になると、このような雲は普通に見られますが、冬はこのような雲が見られたときは、天候が急変しますので、すぐに安全なところまで逃げるのが無難です。

八ヶ岳上空で雲がやる気を出しています。やる気のないときの雲と違い、上へもくもくと成長していきます。

 

さらに、雲の底が真っ黒になったら、その下では雪が降っています。山では荒れた天気になります。

 

上の写真は、やる気のある雲の端が風でなびいたようになっています。風によって流された雲が手前側の乾いた空気に触れて蒸発して消えていっているためです。このような雲が見られるときは、上空の風が強く、稜線では荒れた天気になっています。

 

雲を見ることで、上空の寒気の強さや風の強さがある程度、分かります。登山口で必ず、雲の状態をチェックし、空気を読んでから登りましょう。また、登山中も開けた場所で、雲をチェックすることが、その後の天候の急変を知るうえで大切です。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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