山の天気予報

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雲から山の天気を学ぼう(第3回)

2016-04-19 19:56:28 | 観天望気

雲から山の天気を学ぼう(第3回)

 今回は、上層雲より低い高度(約2~7km)に浮かんでいる中層雲について紹介します。

 Ⅰ.中層雲(中位のところに浮かんでいる雲)

 中層雲は、なめらかで一様な雲を表す「層」がつく「高層雲」、塊状を表す「積」がつく「高積雲」に分けられます。「高」がつくのは、これより低い下層雲にそれぞれ「層雲」、「積雲」があるためで、それより高い雲という意味がこめられているからです。

 また、ここで「乱」という字がつく雲が初めて出てきます。「乱」は、雨や雪を降らす雲で、10種雲形の中で2種類のみになります。このうち、中層雲に属するのは「乱層雲」というなめらかで一様な雲です。

 

a)高積雲(ひつじ雲)

 高積雲は、ひつじ雲とも呼ばれ、巻積雲(うろこ雲)より低い、高度2~7㌔くらいに浮かぶ雲です。うろこ雲と似ていますが、それよりもひとつひとつの雲塊が大きく、雲の底が灰色になりっていたり、陰影があることでうろこ雲と見分けられます。夕焼けに染まる高積雲はとても美しく、筆者の大好きな雲のひとつです。空全体に広がっているときは、天候が悪化することが多いので注意が必要です。

 

b)高層雲(おぼろ雲)

 太陽がおぼろげに透けて見えることが多いことから、おぼろ雲とも呼ばれます。「曇り空」から連想される代表的な雲です。空全体を覆う灰色の雲で、太陽や月が雲を通して透けて見えることがあります。時間と共に巻層雲(うす雲)が厚みを増し、高層雲に変化したときは、低気圧や前線が接近していることを示しており、数時間後に雨が降り出すことが多いです。高層雲が厚みを増してくると、標高の高い山では霧に包まれ、雨や雪が降り出します。

 

c)乱層雲(雨雲、雪雲)

 雨や雪を降らせる、暗い灰色の雲です。雲の底は2km位で、発達した雲になると、雲のてっぺんは6~7kmに達します。雨や雪が降る直前には、ちぎれた低い雲が現れることがあります。「雨雲(あまぐも)」や「雪雲」とも呼ばれます。この雲による雨や雪は、シトシトと長時間、降るのが特徴です。高層雲(おぼろ雲)が出現した後に現れることが多いですが、高い山ではガスに包まれて高層雲から乱層雲への変化が分からないこともあります。温暖前線の前面や低気圧の東側、北側に現われる雲です。

 

 

次回は、下層雲について学んでいきましょう。

 

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

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猪熊隆之の観天望気講座81

2016-04-19 19:56:14 | 観天望気

3月28日(月)は全国的に不安定な天気となり、各地でにわか雨が降った他、東京などではひょうも降りました。ここ八ヶ岳周辺でも午前中の好天から一転、午後は標高の高い場所で降雪となりました。このような天候の急変を雲の変化から察知していきましょう。

さて、上の天気図を見ると、日本付近は日本海側を中心に日本の東海上と中国大陸東岸にある高気圧を連なる高圧帯に入っています。つまり、好天が続く気圧配置です。

このため、朝から青空が広がりましたが、午前早い時間から山の方にはもくもくとした積雲が湧き立ってきました。まるで夏のような光景です。このような雲が朝のうちから現れるときは大気が不安定な証拠です。雲がやる気を出していくかどうか注意します。

時間とともに、雲は上方に成長していきました。雲がやる気を出している状態です。

さらに、雲は発達を続け、雲の中に真っ暗な部分がでてきました。このような雲は雷を発生させる可能性があります。高いところから、低いところや車の中、建物の中に避難しましょう。

山の中でこのような雲が出てきたときは、雷や沢の増水、落石、土砂崩落などのリスクが少ない場所に避難することをおすすめします。

さて、このように雲がやる気を出す原因については観天望気講座77 http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/d8d91a3876370b0670790c4b3b078e43 で解説しておりますので、参考になれば幸いです。

今回は、上層の寒気が雲のやる気を出させてしまいました。

上の図は500hPaという高度約5,500m付近の天気図です。赤い線は-24℃の等温線で上空に強い寒気が入ってきていることが分かります。目安となる等温線は季節により異なり、真冬は-36℃や-30℃、この時期は-27℃になります。日本付近は-24℃以下の寒気に覆われて輪島や潮岬の気温は-28℃以下となっています。このようなとき、地上付近の気温が上昇したり、湿った空気が入ると雲はやる気を出してしまうのです。

雲がやる気を出したときの観天望気講座は過去にも説明しておりますので、参考にしてください。

観天望気講座75

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/2ad54953e87c9aa02a50f56d3f5850ee

※図:気象庁提供

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

写真、文責:猪熊隆之

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猪熊隆之の観天望気講座80

2016-04-19 19:56:05 | 観天望気

観天望気講座もおかげさまで80回に突入です。ここまで長く付き合っていただいた皆様方、ありがとうございます。

今回は、先日、国立登山研修所の大学生登山リーダー冬山研修会で立山連峰の大日岳に行っていたときに見られた雲を紹介します。

この日の朝6時の天気図が下の図です。

東日本に中心を持つ高気圧に大日岳は覆われています。このため、下の写真のように朝は良く晴れていました。

ただ、青空の中にスジのような雲があります(写真の中央やや左)。これは巻雲と呼ばれる雲で、氷の結晶でできている、雲の中でもっとも高い所にある雲です。天気が崩れるときに、まず最初に現れる雲でもあります。また、写真の奥の方には帯のような白い雲が見えています。これは巻層雲(薄雲)と呼ばれる雲です。画面奥は南西方向です。このように、巻雲が現れた後、西の空から薄雲が広がっていくときは天気が崩れることが多く、その後の雲の変化に注意しましょう。

薄雲は徐々に全天を覆っていき、上の写真のように、太陽の周りに虹色の暈ができました。これを日暈(ひがさ、にちうん、ハロ)と呼びます。薄雲も巻雲と同じように六角形の氷の結晶でできています。太陽の光が六角形の氷晶を通り抜けるとき、氷晶がさまざまな面を向いていると、このような暈ができます。暈ができるということは、薄雲が広がっている証拠で、天気が下り坂に向かうことが多いものです。

実際に、このときも次第に雲は厚みを増し、高層雲(おぼろ雲)に変わっていきました。

このように、一様な灰色の雲を高層雲(おぼろ雲)と呼び、巻層雲が高層雲に変わると数時間後に雨や雪が降りだすことが多くなります。さらに、赤いカコミの部分に見られるように、雲の下に幕が垂れ下がったような模様が見えるときは、まもなく雨や雪が降りだす兆しです。雲粒は非常に小さく、軽いので上昇気流によって支えられ、空に浮かんでいますが、雲粒が成長して重くなると、上昇気流で支えらず、落ちてきます。さらに成長して雨粒や雪片になってもやはり、落ちてきます。成長した雲粒や雨粒、雪片などが落ちてくる間に蒸発すると、このような幕ができるのです。これは雨や雪がいつ降ってもおかしくない状態です。

ところが、赤いカコミの左下に見える、雪の山(加賀の白山です)は、雲に覆われておらず、色も明るい感じです。太陽の薄日が当たっているようにも見えます。つまり、雲の向こう側はまた、天気が良くなる感じです。つまり、この曇り空は一時的なもので、これが通り過ぎるとまた、晴れてくるという予想が経ちます。実際、さきほど(一番上)の天気図で見ても、①の高気圧が通り過ぎた後、②の高気圧が近づいてくることが分かります。つまり、今回の雲の広がりは、①と②の間の弱い気圧の谷が通過したことによるものです。

午後の天気図(下の図)を見ると、①の高気圧は東海上へ抜け、②の高気圧は動きが遅くなっています。その間に弱い谷ができて、雲に覆われたのです。

もし、①と②の高気圧の間に低気圧が出れば、もっと天気が崩れ、雨や雪が降りだすことでしょう。そのときは、白山などの遠くの西の山は雲に覆われて見えなくなり、さらに西の空に明るいところは見られず、さらに暗い雲で埋め尽くされます。

観天望気と天気図を組み合わせることで、天気の崩れていく兆候や、今後どの位天気が崩れるのかを知ることができます。皆さんのチャレンジしてみてください。

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

図:気象庁提供(作図は猪熊隆之)

写真、文責:猪熊隆之

 

 

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今朝の八ヶ岳・甲斐駒

2016-04-19 08:09:59 | 日記

今朝の八ヶ岳・甲斐駒は晴れて、稜線がきれいに見えています。 

7時のウィンドプロファイラでは、河口湖の上空2kmで8m/sとなっています(河口湖、熊谷ともに3kmは欠測)。

 

●赤岳天望荘は休館中です。

●八ヶ岳山荘(1502m) 7時現在  3℃  晴れ

今朝の最低気温 1℃  昨日の最高気温 13℃

 

 

 

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