午後から新しい出し物の打ち合わせがある。だから、ゆっくり、寝ていればいいのにやっぱり、目が覚める。
起き抜けに珈琲をいれて・・・。
そう。
朝のパンがないんだ。
忘れないためには、先手をうつのが一番。サーシャの手紙を読んだら、パンを買いに行こう。
今日の予定が、出来た。とても単純なことだけど、買い物にでかけるのは、なんだか、心弾む。
日差しのやわらかい朝。そろそろ、ライラックが咲き始め . . . 本文を読む
『役に立つ・・?』それが、ターニングポイントを作り出すキーワードだったとは、ターニャは思いもしなかった。
陽射しの中に歩み出たものの、パン屋がひどく遠い。ターニャの頭の中に渦巻くものと対話しながら歩けば、自然と足並みが緩む。サーシャのニュースは姉としてまず、嬉しい。だけど、養成所を造る・・なんて考えはターニャにはない。なによりも、自分の踊りの才能が認められていないのに、ううん・・・。才能が無いの . . . 本文を読む
まだ、温かいパンを胸に抱かえたターニャの行き先は決まっていた。イワノフの事務所に行こう。そして、アフターを辞めると宣言しよう。
パン屋で熱い紅茶を飲む間にターニャのうろこがおちた。
サーシャへの仕送りという目的がなくなった今。「踊りは、無くても生きていける」と、ターニャの根底が変わった。そして、根底の変化はターニャの意識をも、侵食しだした。
簡単な真実が、パンを待つターニャをゆさぶった。
. . . 本文を読む
まだ、舞台には当分早い時刻に現れたターニャにイワノフの動悸が早くなる。昨日の今日。大人しそうに見えて激情家のターニャ。昨日の啖呵。あの捨て台詞。
憤怒解きやらぬ頭でパトロンをチョイスしてきたのではなかろうか?
まさかの思いがイワノフを包みターニャを前にしても、まだ、不安の鼓動が耳に届いていた。
「突然ですけど、私、此処をやめさせていただきます。今までイロイロ、お世話になってそのご恩もおかえし . . . 本文を読む
ターニャの岐路選択。それが、誰かとの契約で無い事に胸をなでおろしたものの、イワノフにとって、深刻な問題が生じていた。ターニャが此処を辞めて・・しまえば、イワノフとターニャの接点が無くなる。接点をなくした男女が、お互いの距離を縮められるだろうか?ましてや、求婚を断られた相手。接点をつくろうとしても、焼けぼっくいにもならなかった二人に火がつくこともなく、不自然な接点をつくろうとするわざとらしさがターニ . . . 本文を読む
「私はやっと、恵まれてるという意味がわかった気がしています。こうやって、自分の人生のプリマドンナになろうと思った時イワノフさんに支援されていた自分にきがつきました。でも、それは、本当の意味で私の・・人生という舞台でソロをはっていた自分じゃなかったから、イワノフさんの支援に、感謝ひとつ、もてない自分だったと思います。でも、そんな私でも、本当のソロ・プリマドンナとして、自分の舞台の主役になれたときのこ . . . 本文を読む
******サーシャ。驚き。驚き。姉さんはなんと、立派なパン職人になっちゃうんですよ。するとね・・・。そこにイワノフさんがパンを買いにくるの。そして・・・。こういうの。「僕の家で僕のためにパンをやいてくれませんか?」そう。そして、姉さんはきっと、こうこたえるの。「YES」
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