整列機とは?

部品供給方法、部品供給装置のいろいろ

多数個同時用治具というのは、効果抜群な反面・・・

2017-09-11 13:06:48 | 効率アップ
ウエステックの整列機は、多数個同時整列装置です。

多数個を同時に整列させ、次工程に部品を供給、
もしくは多数個同時に部品の向きを変える
多数個同時に製品の組立を行う
などの作業ができます。

これはうまく行くと、大幅な効率UPがはかれます。
最初にお客様が想定していた能力以上に
効率が上がる事も珍しくありません。

その反面、多数個同時用治具というのは、
或る意味非常に難しい面も有ります。

整列や移し替えが、全ての整列穴で
毎回100%成功する、とは言えないからです。

部品の形状や仕様にもよりますが、
整列時に100%並んでいない、
移し替えで100%は成功しない、
組立で100%は成功しない、
という事が起きる場合があります。

並べた後の工程によっては、必ずしも100%である
必要はない、という事も有ります。
例えば焼成用トレーへの部品の供給などです。

しかし、次工程で組立とかを行う場合は、
並んでいない整列穴に手で補充してやる
などの必要に迫られます。部品の欠品は、
製品としては不良品になるからです。

すると、できるだけ整列率を高くして、
未整列穴の手修正は最小限に抑えた方が
効率が上がります。

ただ、わかってはいても、部品によっては
整列率100%は無理な物があります。

その場合、整列機を使わなかったらどうなるか、
というシミュレーションとの比較になります。

例えば、100個の部品が3分で並ぶ整列治具が
有るとします。整列率は98%だとします。

毎回、平均して2個くらい、並ばなかったり、
違う向きで整列穴に入ってしまう部品が
あるとします。

この場合、供給能力は、3分×60秒÷100個
ですので、部品1個あたりにすると、1.8秒
かかる計算になります。但し、これは整列率が
100%の場合です。

平均の整列率が98%として、残り2個を手で入れる
時間を考慮しなければなりません。

ここで、その部品を手で入れる作業が
どの程度難しいかによって、かかる時間が
変わって来ます。例えば、1個あたり2~3秒で
済んでしまう部品ならば、時間的には
100%並んだ時とほとんど変わりません。

しかし、拡大しないと部品の向きが分からない、
ピンセットを使わないと摘めない、といった場合、
1個あたり10~15秒くらい、手間取る可能性も
あります。

修正時間も含めると、3分半くらいかかる、
という計算になります。この場合、
3.5分×60秒÷100個で、部品1個あたり
にすると、2.1秒かかる事になります。

仮に、パーツフィーダやロボットなどを
使っての供給力が1個あたり2秒だとすると、
整列機よりも速い事になります。

ただ、整列機が安い事から、この程度の差は
許容範囲内に収まる場合も多いです。
整列機を2台買えば能力は倍増しますが、
それでも自動機よりは安かったりします。

また、自動機にはつきもののチョコ停が、
その復旧にどの程度の手間と時間が掛かるかも、
整列機の手修正の手間・時間と比較してみる
必要があります。

なお、整列機は、並べる部品が小さくて多い程、
強みを発揮します。数千個もの部品が2分間で
100%並んだりすると、整列機に匹敵する
能力の装置は有りません。

以上は、多数個同時の整列機・整列治具を
使う時の難しさですが、作る時の難しさもあります。

整列治具の整列穴を、精度良く多数加工しなければ
なりません。数百ヶ所ならまだしも、並べる部品に
よっては、数千ヶ所、数万ヶ所に上る場合もあります。

加工に非常に時間が掛かりますので、
高速かつ高精度で加工できるマシニングセンタを
4台揃えています
。通常のマシニングセンタの
3~5倍くらいの値段です。

それでも、物によっては加工に何十時間も
かかります。金曜日の夜に加工を始めて、
月曜日の朝になってもまだ加工中、
なんてのもザラです。

しかも、一ヶ所でも失敗すればNGとなり、
最初から作り直しになります。
細心の注意を払って加工する必要があります。

また、多数個同時に組立をする治具として、
整列穴数と同じ数のピンを圧入した、
剣山状の治具があります。これも高価かつ
製作が大変です。

ピンの単価が仮に50円と安くても、
それが1000本必要であれば、ピン代だけで
5万円になります。それに治具本体の加工費が
加わり、更にはピンを1本1本圧入する
工賃がかかります。作るだけで大変です。

しかも、その治具を使った組立の成功率が
95%くらいだったとします。ピンの先端を
0.1mm細くすれば、更に成功率が上がりそうだ、
となった場合は、1000本のピンを外し、
先端を追加工し、再圧入しなければなりません。

完成品だけを見ると、その裏に隠れた苦労が
見えませんが、これが多数個同時用治具の
世界です。