W.C.カラスの駄々漏れ日記

駄々漏れに日記をつけています

231121

2023-11-24 15:43:10 | 日常
朝は運動して洗濯

めしは食べない。

昼頃出立

荻窪へ
ア・ビアントといふサ店で木村勝千代の浪曲独演会かつちよかいがある。

店の前に満員御礼とチラシの看板に貼ってある。

受付は勝千代さんと曲師沢村まみさんがやっていた。
飲み物は何にするか聞かれホットコーヒーといったらコーヒーと書いた小さな紙切れを持たされた。
どこでも好きな席にと言われたが、前の方の4人がけテーブル二つには多分常連らしき人たちが座っていたので空いてはいたがそこは止して後ろにあるカウンターにした。

お店のひとが水を持って来てくれたので紙切れを渡すのかなと思ったがそれは中入りでTタイムがあるのでその時にといふ。

あまり広くはないお店でお客は12人であった。私よりやや上かと思うほどのひともいるが大半は老人であった。私はやや死角のある席にしてしまって曲師の沢村まみさんは見えない。

時間となり勝千代さん前に出てくる。
演台は私の座るカウンターとは反対側なので椅子を前に向き直す。

まず枕といふか
昨夜嬉しかったことがあったと勝千代さんがいふ。なんでもなんかBSなんとかの徳光和夫がやっている番組の公開収録があってとっくに引退した二葉百合子が久方ぶりに実演するからその観覧に応募したらあたってしまって御大を観られたといふのである。テレビでしか観たことがなかったらしい。前に書いたが勝千代さんは変わった子だったようだ。お父さんが浪曲好きで二葉百合子の映像をみせこれを覚えたらテレビに出られるとそそのかし、それが勝千代さんは予想以上の反応、号泣してしまって二葉百合子の虜になったのだった。勝千代さん11歳の時である。変わった子だといわざるを得まい。私なぞ今でこそ浪曲に取り憑かれてはいるが当時は二葉百合子は婆婆くさくてダサくて嫌だなあと思っていた方であり子供はみんなそうだったろう。
勝千代さんはすぐに木村松太郎の弟子となり今に至るのである。
二葉百合子さんは92歳になっているも関わらず昔と変わらぬ素晴らしい唸りで感服し勝千代さんは涙が出たそうだ。
と、なんか慣れたようなお客が楽屋にいきゃあ良かったんじゃないかと勝千代さんに話しかける。ん~やや!実演者に個人的に話かけるたあなんたらおやじだ。音楽ライブにもたまにおるタイプ。
勝千代さんは真面目に答えた。確かに行こうと思い画策してみたが叶わなかったそうだ。

それで最初の演目は長短槍試合
槍の素人だった木下藤吉郎が同じく素人大勢に槍を教えて試合にのぞむコミカルな話である。

沢村まみ(このひとはわたくしの浪曲実演初体験神田落語カフェで玉川奈々福と一緒だったのを見たのだった)の三味線弾き出しから外題付け(テーマソングみたなもの)に移行する。
すると私はあろうことかズーンと気持ちよくなってしまい催眠術にかかったようにガクーンと気絶しそうになった。そんなアホないくらなんでも開始早々とは、と私も思ったのだが、
本当だ。なんと気持ち良いのだろうか。
勝千代の声が、あの節回しにコブシを回す時に発する音波のようなもの、三味線の音色。おっそろし魔術的である。嘘だと思うなら浪曲に特に勝千代にいってみるといい。
私は我慢して目ん玉をひんむいた。
いよっ!名調子!とか日本一!とか声をかけられるようになればこの問題は解決できると思うのだが。
勝千代はここ一番といふ時に出るボリウムがすごい。パワーがある。耳にクイーンて来る。脳に響く。で、それがまた気持ちいい。堪らない。

中入りを設けてあってTタイム。
紙切れを出さなくてもコーヒーをもて来てくれた。なんたらうまい!チーズケーキも実にうまい!私は朝からめしを我慢しているからなおのことうまい!
と、さっきのおやじたちが勝千代さんとまみさんを独占して話し込んでいる。
ん~なんたら羨ましい、
話し込んでいるから少し遅くなり2nd口演

その前に三味線についてまみさんが話をした。
はっは~ん、
三味線は分解できるのだが大体普通はそのまま持ち運ぶそうだ。なんとなれば糸を緩めるしその他、部品の緩みが落ちつくまで音程が安定しないからだ。
だが、浪曲は基本旅の芸であるから分解してトランクに詰めて汽車に乗ったそうでその伝統がそのまま残って分解は平気でやるそうだ。6個に分かれる棹もあるといふ。
その他いろいろ説明してくれ勉強になった。と、また件の慣れたおやじが話の途中に口をはさみなんでも話しかける。音楽ライブにもたまにおる。まみさんは質問を受けるとも何ともいっていないのに。いや、時間が押しているし私は早く次を聴きたい。おやじ黙ってくれと少し思った。狭量だろうか。まみさんはやさしい。全部真面目に答えていた。

2席目は
武田信玄初陣
といふ話であった。
硬い話である。
なんだか嫌な話であり、武田信玄が父信虎を押さえつける話だ。嫌だなあ。勝手に権力争いしてやがれってんだ。
私は正直にいふと勝千代にはこんな話は止めてほしい。だが木村派で受け継がねばならないのだろう。確かに戦いに行く場面では三味線と節が突っ走り迫力があってすごいのは認めるが。
私は勝千代の芝浜が聴きたいのだが。
いや、でも実に良かった。
かつちよかい
また伺いたい。

終わって予定よりかなり遅くなった。
そそくさと店を出る。
私は知人と浅草で待ち合わせがあるのだが、遅れると連絡す。

4時半くらいに浅草に着く。

なんだかこう暖かいもんが食いたいなあ。
酒も呑みたいなあ。
おでん屋に入ることにした。

たまたまあった。
地酒と書いてある。
知人と入ってみる。

暖簾をくぐると店の人はだあれもおらない。左側手前にひとりお客がおって、店主はいま2階に客を案内しに行ったからすぐ戻るといふ。
そうすか、では待ちます。

お客は勝手にその辺に座ったらよいといふ。
あ、そうすか。

どうも常連のようだ。

店主やって来て予約はしたかといふ。
いや、たまたま入ったといふ。

しばらく調べて
この席なら空いているから座れといふ。

それは先ほど話しかけてくれたお客の隣であった。
お客はこの店で一番いい席になりましたね。といふ。
へえ、そうなんすか。
ほれ、そこに窓みたいに隙間があるでしょう。そこに酒なんかをひょいと出して置いてくれるんですよ。といふ。
はっは~ん、ショージマルの楽屋みたな。

お客はいい店に入りましたね。といふ。
ここは大当たりですよ。といふ。

こんな店は他にありません。
とキッパリいふ。
相当惚れ込んでいるようだ。
私より10歳くらい歳上である。
そのお客は利き酒師であった。

メニューを開いてこれを見よといふ。
こんないい酒をこの値段で出す店はありますか!といふ。
私は驚いた。ほんとだ!えー!
高級かどうかに関わらず、全て一律一合700円だ。有名な酒もあるし聞いたことのないのもある。大吟醸も純吟も純米も特純も同じだ。驚きだ。普通なら1300円いや1500円で出すところもあるような酒ばかりだ。
それで240分飲み放題3300円と書いてある。えー!これだけの酒が飲み放題になるのもおっそろし話だが240分といったら四時間ですぜ!私みたなもんは一升呑んじゃうよ。店が損するじゃないですか。

続く