明日香の細い道を尋ねて

生きて行くと言うことは考える事である。何をして何を食べて何に笑い何を求めるか、全ては考える事から始まるのだ。

(月)政経:今週の気付き(72)森辞任までの奥深い事情

2021-02-15 20:27:03 | ニュース

このところの人種差別問題・LGBT問題の世界的運動の流れを受けて、オリンピック組織委員会森会長が女性蔑視発言で辞任に追い込まれる騒ぎになっている。こういう世論の盛り上がりによる炎上騒ぎというのは芸能人不倫の問題などSNSに見られる「興味の偏り」が特徴的で、賛同する人もいれば「やり過ぎ」と眉を潜める人もいるのが事実だ。ところが今回は、世界的な空気の流れに乗っかって、一気に「時代の要求」とマスコミも煽り立て、誰もが反対出来ないような雰囲気にまでなって言論を席巻した。

毎日のワイドショーを眺めていると「森は辞めるべき」との意見が日増しに強くなってきて、2週間も経たないうちに森氏が辞任せざるを得ないほどに圧倒的だった風に見える。何よりも森氏発言の翌日に、海外のカナダかどこかの女性元五輪選手が「この男を必ず倒します!」云々の発言が報じられると、オリンピック組織委員会会長の女性蔑視発言というマイナーな問題が「あっという間」に「日本の恥」というナショナリズム問題にすり替わってしまった。日本人は外国の批判に弱い、というのは昔からである。

森氏の発言が「ウケ狙い」の軽口であって、それほどヤバイ問題発言とは思わなかった、というのは「同じ考えの人が会場にもいっぱいいる」という安心感からだったのだろう。組織委員会の理事会メンバーも、発言に即時反対して撤回要求しなかったのは「同罪」である。第一、そういう「女性差別」に抵触する発言は許さないという「オリンピック憲章」をよく理解して遵守している人ばっかりの緊張した会場だったら、森氏があんな発言をしようと思う「わけがない」のだ。森氏は「受ける」と思っていたからニコニコして発言していた。もし森氏に女性理事の人数を40%まで引き上げる気があったのなら、わざわざ「会議が長い」などという発言はしなかっただろう。

あらかじめ女性理事の「人数比率」を決めること自体が「不公平で能力無視のやり方」だと思っている森氏にしてみれば、その意見を「いちいち理事個人の能力を挙げて反論する」ような正当な議論に持ち込まず、会議の長さという「ソフトな例えを持ち出して、サラリと反対」してみせた切り返しには、さながら得意満面、さぞかし鼻息が荒かったことと思う。ところが会議が終わって家に帰ったら「孫娘に叱られた」っていうんだから情けない。ホントかいな?。まるで冷蔵庫のアイスクリームを勝手に食べたと言われて「シュン」としている介護老人みたいな話である。

次の日の謝罪会見では最初はしおらしくお詫びの言葉を述べていたが、記者の嫌味な質問に「逆ギレ」して更に延焼させるという失態を演じて、「こいつ、何にも分かってないじゃないか!」と傷口を広げてしまった。ここまでは、森氏の時代錯誤とマスコミの加熱報道が起こした「単なる差別発言」である。これは森氏に限らず日本スポーツ界には根深く広がっている暴力や差別の問題が、「オリンピックまで5ヶ月も無いという今、又しても表に出た」ということに過ぎない。つまり、森氏がどうのこうの言う問題ではなく、昔からずーっとあって「よりによって今、取り上げる問題」なのではないのだ。言うなればオリンピックが終わって、それからゆっくり議論すれはいいのである(日本人は「喉元過ぎれば」って悪癖があるから無理かな?)。

じゃあ、何でこれほどまでの大問題に発展したのか?というと、田中宇の言う「左翼リベラルによる人権外交」の一角としての日本叩きが、こっそり裏で行われている可能性が出てきたらしいのだ。IOCの発表が一転して森を非難するし、スポンサーも横並びで森批判という「なだれ現象」が起きたのも、皆んな英米の覇権維持勢力が仕掛けたワナである(と、田中宇は言っているように私は読んだ)。こないだは香港で過激なデモを先導して多数の指導者を逮捕・投獄した中国を非難。その後はウィグル自治区での民族浄化問題で又しても、中国を制裁しようと各国に呼びかけた。そして最近ではミャンマーのクーデターを民主主義への挑戦などと文句をつけ、暗に軍部と仲のいい中国を牽制している。そして今度は「森氏のジェンダー差別発言」を捉えて、日本を「オリンピックに相応しくない差別大国」と追い込んできた。要するに、その国の特殊な事情などはお構いなし に、「一律に理念を強調」して政敵を叩き潰す政権転覆策である。以前は911に始まり、イラクやシリアでISISなど多大な損害を出して泥沼戦争にまで発展した。今回は「マスコミを巻き込んで」世論を煽る方法で、オリンピックという日本の国益を担う大プロジェクトを揺さぶってきたのだ。

この勢力のぶち上げるスローガンは「差別を許さない」といったような「誰も反対出来ない抽象的なテーマ」を全面に押し出して非難する。その御先棒を担ぐのがマスコミである。彼らは覇権維持勢力の片棒を担いでいるとは知らずに「差別反対!」と叫んでいるわけだが、実は「裏の裏では、覇権維持勢力に踊らされている」という構図なのだ。こうして、あちこちの国で「弱者を救済」し、民衆を反政府運動に導いていくことで「政治を思うがままに動かし」て弱体化させ、相対的に覇権を維持するというのが彼等のお得意の作戦である。今回は日本の政治家達が「ジェンダー問題に疎い」ことを暴き立てて、女性の地位向上に関しては「遅れた国」という印象を世界に与えることに成功した。これで貿易や経済活動の面で伸びようとしていた日本企業のトップ達も肩身が狭くなって、しばらくは大人しくしているだろう、というのが覇権維持勢力の思惑である(と、私は考えた)。


そう言えばアメリカも大統領がバイデンに代わって、色々と「政府の外交方針」も変化してきているようである。トランプが選挙で負けて以来、急にあちこちで「きな臭い」政治がらみの紛争が増えてきたようにも思えてならない。どうも中国の台頭を恐れている覇権維持勢力が、中国周辺に問題が起きるように色々と画策を始めていて、ミャンマー問題なども「マスコミの報じるような簡単なクーデター」ではないような気がしてきた。森氏辞任による後継者問題で、肝心のオリンピック開催も危うくなってきた日本。私が思うに、この問題は「オリンピック憲章という理念に合わない」からといって、急遽代役を立てて決着するような「簡単な問題」では無い。この「女性の権利を男性と平等に扱う」ことは、これからの日本社会を根底から変えてゆく「基本中の基本問題」である。だから、目の前に迫ったオリンピック開催とは切り離して、もっと国民全員が「時間を掛けて」一人ひとり、社会全体の中で実現していく方法を議論していくべきなのだ。

森氏は確かにちょっと迂闊である。しかしそれは83歳の総理経験者が大活躍していた旧世界では「当たり前」のことであり、今でもオリンピックを推進している人達は皆「似たような考えの人」で占められているのである。そういう旧態依然とした人たちを相手にして困難な交渉事をバリバリこなしていた彼だが、実生活では「普通のおじいちゃん」としては「だいぶ理解を示しているほう」だと家族に認められていたと言う。そりゃあそうだろう、83歳の老人が「LGBTの権利を守れ!」などと国会前でデモしていたら、「ちょっと普通じゃない」と思われるのがオチである。せいぜい森氏の年代でやれることと言ったら、じっと「黙っている」くらいしか残されてはいない。ただ、おしゃべりな森氏は「マスコミを前にして軽口を叩いた」というだけである。年齢が近い私などは「別に騒ぐほどでは無いんじゃないの?」と思うだろう。

実際、大したことじゃないのだ。森氏が「女性が多いと会議が長引く」と発言したからって、だから女性を増やすのに反対だと言ってるわけではない。問題は理事に相応しい「能力のある人物かどうか」ではないだろうか。そのような能力がなくて「女性というだけ」で理事になっているような人が、会議で無用の意見を言うことに苦言を呈しているのである。女性理事の割合を無理矢理40%に引き上げれば、そりゃ会議だって長引くに違いない。だがこれは、事実を確認しなければ森氏が正しいかそうでないかを判断することは、出来ない(勿論、誰が判断するかというのも問題である)。しかし森氏が多方面の交渉事を見事に切り盛りし、余人に代え難い能力を発揮していたというのであれば、彼が判断しても良いのではないか。どのみちこういう問題は「水掛け論」になるだけである。解決方法は「実績で上回る」しか無い。だが交渉事というのは相手がある事である。その相手が「ジェンダー差別論者」であった場合、どうやって実績を挙げることが出来るだろうか。これは単に能力の問題では無い、ということがお分かり頂けると思う。もっともっと社会や人々の「生き方そのもの」まで変えていって初めて「競争になる」世界である。時代はまだ始まったばかりなのだ。だからオリンピックがどうこう言うのではなく、じっくりと諦めずに最後まで議論していこうではないか、皆の衆!。

我々はジェンダー問題をオリンピックと切り離して考えていればいいが、当の組織委員会は「決着させ」なければならないところまで追い込まれてしまった。ところがここで覇権維持勢力の思惑とは逆に、「中国が密かに日本にエールを送ってきている」らしい、というから外交は分からない。実は、来年の冬季五輪開催国は、中国なのである!(おおっ!)。中国はその関係から「日本のオリンピック開催」を後押ししてくれているというのだ。コロナの猛威にさらされ、ロックダウンなどを余儀なくされて経済に大打撃を受けた英米EU諸国にしてみれば、中国は当初コロナの発生を隠していて、その報告の遅れから「世界中に被害を拡大させた張本人」である。その中国が共産党独裁の強み発揮して、人権無視のやり方でいち早くコロナを収束させ、GDPも回復して結果「一人勝ち」の様相を呈している。そんな「散々悪事を働いた」中国が冬季五輪などと言って世界の注目を浴びるなんぞ「絶対に許さん!」と覇権維持勢力は怒り心頭なのだ。必ずや、ボイコット運動ぐらいは仕掛けてくるだろう。だが今年、日本で「オリンピックが開催できちゃったら」中国でダメって反対する「理由がなくなって」しまう。つまり日本は「コロナで中止」しないとマズイのである(おおっ!)。ところが森は「コロナと関係なくオリンピックは開催する」と公言しちゃった!。だから追放されたのである(ガチョーン!)。・・・見事な推論だ・・・。

まあ、いつものように田中宇の陰謀論と片付けるか、それとも信用するか。どちらを選ぶかは、「あなた次第」です(チャンチャン!)。

 

(おまけ)わたし的には、オリンピックは「世界規模の余興」だと考えています。だから、世間で言われているような「アスリートファースト」という考え方には、とってもとっても違和感があります。オリンピックは、それを待っているファンの為に開催するものであり、音楽イベントやスポーツ大会などと同じで「観客が楽しむもの」ではないでしょうか。なのにアスリートファーストとかいう理屈を前面に掲げて「選手は人生が掛かっているんだ」などという「変な理屈」を言い出す人が多すぎます。競技がなんであれ、選手は当然必死に努力しているでしょう。それはオリンピックでなくても、何の世界でも常に要求されている「競争原理」ではないですか?。お笑い芸人で頑張っている人にだって、同じくらいの努力が要求されているんです。それなのにオリンピックだからといって、「選手が可哀想」ってなんなんでしょう。コロナでどんなに感染爆発していても、アスリートファーストだからどんなにお金が掛かってもオリンピックは開催するんだ、というのは間違っています。コロナで「オリンピックどころじゃない」のなら、今回は諦めて次の開催まで待とうじゃありませんか(次回はパリでしたっけ)。東京でやらなければ意味がないなんて、世界でそう思っているのは「日本だけ」なんですよ(中国は別の思惑で賛成してるかも)。

もし今年のオリンピック開催都市がロサンゼルスだったとしたら、あなただって「中止したほうが良くない?」って言うんじゃありませんか?。


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