さよなら神様 麻耶雄嵩 2014年作品
自分のインテリジェンスだと小説の感想が非常に難しいのだけれど
読んだだけで感想を書いてない本が増えすぎて
感想ブロガーとして少し奮起せねばならないと思った!!
~あらすじ~
町で次々に起こる殺人事件を解決しようと奮闘する久遠小探偵団。
しかし、自らを神様と称する転校生の鈴木太郎は
「犯人は〇〇だよ」と的確に犯人を名指ししていく。
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昔きまぐれで読んだ『神様ゲーム』という作品。
転校してきた鈴木太郎は自分を神様だと名乗る。
その時点では主人公も読者も半信半疑ながら、
次第に人間では起こり得ない宣託を的中させていく。
そして殺人事件の驚愕の犯人は……!
という設定をそのままシフトさせた連作短編集。
各篇の書き出しは前述の「犯人は○○だよ」から始まる。
身近な人間もいれば、まったく聞いたことのない名前すら出てくる。
犯人が確定している状況にもかかわらず、
神の宣託というオカルトに抗う団員たち。
もちろん神様である鈴木は未来すら予知できるのだけれど、
自分の楽しみのために人間の姿を演じ、
かつ自ら未来視をシャットアウトしている。
感情すら見せることなく、自身をイケメンの造形にして
常時クラスの女子から囲まれている鈴木。
そのいけ好かなさが読者にもビシビシ伝わってきて
いつしか登場人物たちの意識とシンクロさせられる!
最初の一篇ではあっさり事件が解決してしまってなんとも肩透かし。
しかし、2篇目3篇目と読み進めると徐々に濃いトリックが事件に絡んでくる。
終盤にはさらにとんでもないトリックがいくつも仕掛けられていて
狂気に満ちた展開に震えてしまった。
はたしてこれはハッピーエンドなのだろうか。
すべて神様の手の上で踊らされているだけではないだろうか。
運命とは一体なんなのだろうか。
そんな思考に至ってしまうほどの鈴木の圧倒的存在感。
ミステリとしてまるで期待できなかった序盤からぐんぐん引き込まれていき
爽快感と後味の悪さの入り混じった、得も言われぬ読後感。
それにしても、この小説の基本設定。
小学生にしてはやたらと難しい言葉で会話をするし、
探偵団としての論理的思考力もえらく高い。
この作品は舞台が小学校である必然性があるのか?
中学高校ではダメだったのか?
……なんていう疑問を呈したものの。
以前にも何かの感想で書いた気がするけれど
作中のイジメの描写で読者の共感を惹くためにはリアリティが重要。
「ある程度の凄惨なイジメ」を「小学生」に行う必要がある。
なぜなら中学高校が舞台だと半端なイジメは逆に生ぬるく見えてしまうから。
あと、ネタバレにはならないだろうから書くけれど、
主人公の桑町淳は男言葉を使うので当然男子なのだろうと最初に思わせておいて
話が進むごとに実は女子であるということが明るみに出る。
何故こんな叙述トリックを入れなければならなかったのかを考えてみたが、
作者は1話目を書いた時点では本当に淳を男子として作ったように読み取れる。
連作全体のストーリーが決まったことで性別すら転換させる豪腕。
本当に色んな角度から楽しめる作品だった!!
満足度(星5個で満点)
文章 ★★★★
プロット ★★★★
トリック ★★★★☆