感想:女王はかえらない

2016-02-04 02:17:37 | ミステリ


女王はかえらない 降田天
2015年作品

「このミステリがすごい!大賞」2014年度大賞受賞作品。


とある地方の小学校の三年一組。
クラスではマキが絶対的な権力を持って牛耳っていた。
マキに認められた階級に応じて
女子が着ける髪留めの模様も定められていて
少しでも女王の機嫌を損ねれば
凄絶なクラス内での仕打ちが待っている。

ところが、進級してクラスが四年になると同時に
東京から大手企業の娘であるエリカが転校してきて
その圧倒的なカリスマ性によって
パワーバランスに変化が起こり始める。



小学校でこんな生々しいヒエラルキーがあるか!
と思ったりもしたけれど、もしこの舞台が中学高校だったら
よっぽどえげつないイジメにしないと逆にリアリティがなくなるので
なかなか絶妙なバランスの設定だと思う。

二人の女王が女王たる理由も文章で見事に表現できていて
徐々に取り返しのつかないバトルに発展していく過程は
読んでいてヒリつく恐ろしさ。




で。
読み終わった感想。


あぁーーーーーーーー!!
もぉーーーーーーーー!!
またかよ!!!!!
俺は推理小説が読みたいんだよ!!!!


ぶっちゃけ、作者も作品も悪いわけではないけれど
読んだタイミングが最悪だった。
理由はここまでのミステリのエントリを遡ってください。

疑心暗鬼に陥りすぎてたせいで
途中である程度のトリックを見抜けてしまった。


第一部 子供たち
第二部 教師
第三部 真相

の3つに物語が分かれていて
はっきり言って2部は丸ごといらないし
わずかでも真相から目を逸らそうとするためのミスリードのせいで
1部での「クラス内の仁義なき抗争」という
素晴らしい着眼点のプロットまで台無しになってしまっている。

あとがきの「このミス大賞」選評にも書いてあるとおり、
トリックそのものがまさに「やりすぎ」な印象。



降田天という作家はプロットと執筆に分かれた女性二人組で
すでに少女向けラノベで実績があるとのこと。

今回の作品に関して言えば
荒削りだけれど文章で引き込む力はかなり高いし
順序立ててストーリーを積み上げていく構成力も申し分ない。

こういう小説が書きたかったんだ、というのはわかるのだけど
肝心な部分があまりに雑だったのが惜しすぎる。
この作者にはもっと色んな推理小説を読んで欲しい。
受賞したこの作品を自分の持ち味だと勘違いせずに
ひとつずつステップアップしていけば
後世に名を残すミステリ作家になれるかもしれない!!


文章   ★★✩
プロット ★★★
トリック ★
(★5個で満点)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする