武蔵野を歩く

元社会人兼ロースクール生の日記

平成19年11月日8最高裁判所第一小法廷(カートリッジ事件)判決

2007年11月08日 | 選択科目等
キャノンのインクカートリッジ事件の判決が出た。

請求棄却の結論はともかく、特許権の消尽に対して最高裁の判断が初めてなされた事案であり、実務上の意義は大きい。

第一審は、生産アプローチの理論を採用し、差止め請求を棄却。

原審は、消尽アプローチの理論を採用し、一審判決を取消した。そして、消尽の抗弁に対する再抗弁が認められる場合を「第一類型」と「第二類型」に分け、具体的な規範を立てことで話題となった。原審の裁判長は、青色LEDの職務発明訴訟で600億の対価を認定したことで著名な三村判事である。

この点、最高裁は原審の結論は支持したものの、消尽の要件については、次のように述べた。



『しかしながら,特許権の消尽により特許権の行使が制限される対象となるのは,飽くまで特許権者等が我が国において譲渡した特許製品そのものに限られるものであるから,特許権者等が我が国において譲渡した特許製品につき加工や部材の交換がされ,それにより当該特許製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造されたものと認められるときは,特許権者は,その特許製品について,特許権を行使することが許されるというべきである。そして,上記にいう特許製品の新たな製造に当たるかどうかについては,当該特許製品の属性,特許発明の内容,加工及び部材の交換の態様のほか,取引の実情等も総合考慮して判断するのが相当であり,当該特許製品の属性としては,製品の機能,構造及び材質,用途,耐用期間,使用態様が,加工及び部材の交換の態様としては,加工等がされた際の当該特許製品の状態,加工の内容及び程度,交換された部材の耐用期間,当該部材の特許製品中における技術的機能及び経済的価値が考慮の対象となるというべきである。』



ざっと読む限り、最高裁は一審の理論構成を採用したように解される(結論は逆であるが)。

本判決に対してどのような評釈がなされるのかが楽しみである。
というか、調査官解説が待ち遠しい。

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