切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

ソニー・ロリンズと「中国行きのスロウ・ボート」。

2005-07-12 04:58:36 | カメレオンのための音楽
ジャズ界の大御所に対してこんなことを言える義理じゃないのだけど、「ソニー・ロリンズ、日本で引退公演」という記事を読んで、「まだ引退してなかったんだ!」と思ってしまったわたしはいい加減なジャズファンですね。

正直なところ、癖の強いものが好きだったわたしには、力の抜けた感じのソニー・ロリンズのサックスのよさがなかなか解らなかった。でも、突然開眼したのは、有名な「サキコロ(サキソフォン・コロッサス」でなく、MJQと競演したアルバム。その中でも特に好きだったのが"on a slow boat to china"(中国行きのスロウ・ボート)という短い曲です。

村上春樹の最初の短編集のタイトルにもなったスタンダードナンバーで、「恋敵を岸に残し、あなたを中国行きの船に乗せてしまうんだ。のんびりと行く船で、月の光を浴びれば、石のように冷たくてかたいあなたの心もやがて融けて私のものになるだろう・・・」というユーモラスな歌詞の一曲。(ただし、ソニー・ロリンズの演奏にはもちろん歌手はいません。)

この曲のほのぼのとした感じと自由で伸びやかなサックスは、コルトレーンあたりの緊張感あるサックスとはまったく違った味わいのあるものです。気負わない"個性”というものもあるんだなってことを教えてくれたミュージシャンですね。

それと、ついでながら、村上春樹の本の方も、彼の短編集の中ではベストなんじゃないかと思うのですが・・・。

尚、この曲に関しては『ジャズ・スタンダード100―名曲で読むアメリカ』(新潮文庫)という本を参考にさせて頂きました。絶版みたいだけどいい本ですよね。

ソニー・ロリンズ、日本で引退公演 (日刊スポーツ) - goo ニュース

ソニー・ロリンズ・ウィズ・ザ・モダン・ジャズ・クァルテット
ソニー・ロリンズ, パーシー・ヒース, ジョン・ルイス, ミルト・ジャクソン, ケニー・クラーク, ケニー・ドリュー, アート・ブレイキー
ビクターエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る


中国行きのスロウ・ボート

中央公論社

このアイテムの詳細を見る


ジャズ・スタンダード100―名曲で読むアメリカ

新潮社

このアイテムの詳細を見る
コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 文藝春秋と花田家騒動。 | トップ | 季刊「21プリンツ」の安野... »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お富さんお早う御座います (不老愚 助光)
2005-07-12 11:09:50
ソニーロリンズはいつも単独プレイで演奏するスタイルを貫き通して居ますので聞く人によっては「つまらない」とか「ものたりない」と思えるでしょう。でも 1960年代コンボやビッグバンドの全盛期からたった一人のスタイルでやり通し、こんにち迄生き残ってきたと云う事は凄い事だと思いませんか?

40年程まえ、来日した時に松本英彦が競演して汗ビッショリで頑張ってましたが、圧倒的な肺活量とジャズセンス違いに力尽きた感じでした。やらなければよかったのに。

 MJQは私もCDを持っていますがいつ聞いても新鮮で、堪りません。

でも いなかの悲しさ 殆どのショップに無くてこのCDを入手するのに大変苦労しました。
返信する
まったく (ての)
2005-07-12 14:29:21
まったく同感。ソニー・ロリンズの力の抜け方って私も好き。でも引退していなかったって知りませんでした

村上春樹について書いた文を勝手ながらTBさせていただきました。
返信する
コメントありがとうございます。  (切られお富 )
2005-07-15 01:59:53
不老愚助光さん、てのさん、コメントありがとうございます。



お二人ともジャズはお詳しいみたいですね。



わたしはたいしたジャズファンではないのですが、やっぱり、最初はバド・パウエルやチャーリー・パーカーみたいな生き急ぐようなミュージシャンが好きでした。



でもソニー・ロリンズみたいなタイプの、短命でなく息の長い持続した個性に、最近は親近感を持ちます。これは自分も少しは年をとったことと、社会人経験を多少は積んできたことに関係あるかもしれません。



ソニー・ロリンズの力の抜け方と村上春樹の小説の主人公の「やれやれ」っていう口癖って何か通じるものがあるような気がしますよね。
返信する

コメントを投稿

カメレオンのための音楽」カテゴリの最新記事