切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『嘔吐』 J・P・サルトル 著 (鈴木道彦新訳)

2010-10-11 23:59:59 | 超読書日記
学生時代から何度もトライしては、挫折してきた一冊。最近プルーストの翻訳で知られる鈴木道彦さんの新訳が出たので、久々に再トライしました!そして、ついに完読!いや~つまらなかった!というわけで、簡単に感想ですっ。

なんで再トライする気になったかというと、開高健がやたらにこの本をほめていると知ったから。

で、率直にいっちゃうと、出てくる人物がみんなつまらないし、共感できない!

高等遊民的な主人公ロカンタン、彼の唯一の友人で図書館の本をアルファベット順に読み続ける「独学者」、ロカンタンのセフレのおばさん、そして、ロカンタンの元カノ…。

特に元カノが強烈にいやなキャラですが、「独学者」の性癖もおいおいって感じ…。

また、文章が「インテリのたわごと」っぽくてよくないんですよね。当たり前なことを当たり前でなくす異化作用を狙っているんでしょうが、全然こなれてなくて、ヘンリー・ミラーやセリーヌの文章の破壊力からすると、なんだか…。

ということで、今読んでどうなのって感じが残る作品でした。

同じサルトルの小説だったら、新潮文庫に入っている「水いらず」の方が断然よいです(これは学生時代に読んだ!)。触覚的な文章で、読み手の感覚をくすぐるところがある。小説以外だったら、『実存主義とは何か』とか『言葉』とか『ユダヤ人』あたりの方がよっぽどいいんじゃないのかな?

でも、この本、戦後すぐくらいの日本でベストセラーになっているんですよね。このあたりについては、『百年の誤読』という本でも話題になってます。

それと、日本で一番実存主義っぽい言説を吐く文化人は、大江健三郎じゃなくて、大島渚だったんじゃないかって思っているのはわたしだけか?!固定概念から入るんじゃなくて、自分の皮膚感覚からものを語るという意味でなんですけどね…。

というわけで、この本、お暇な方にのみ薦めます。

<過去の関連記事>
・モンパルナス墓地へ行ってみた。(サルトルのお墓があります。)
・踏切事故、雑感。(サルトル&ゴダールねた)
・作家、倉橋由美子さん死去(日本の実存主義関連)


嘔吐 新訳
J‐P・サルトル
人文書院


開高健の文学論 (中公文庫)
開高 健
中央公論新社


水いらず (新潮文庫)
サルトル
新潮社


百年の誤読 (ちくま文庫)
岡野 宏文,豊崎 由美
筑摩書房


ユダヤ人 (岩波新書)
J‐P. サルトル
岩波書店
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