切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

『先達の御意見』 酒井順子 著

2005-06-07 23:58:00 | 超読書日記
『ぴあ』最新号の「今週話題の本」というコーナーで、『負け犬の遠吠え』の著者・酒井順子さんの姿を初めて見た。高野文子のマンガに出てきそうなルックスの方なんですね。今回の新刊『先達の御意見』は、人生の大ベテランたちと「負け犬」論を語り合うという対談集。

わたしは『負け犬の遠吠え』という本を肯定的に捉えていて、筆者自身がいわゆる「負け犬」であることを自嘲的に認めつつ、いかに前向きに生きるかを語ったものだと思っている。巷に起こった「負け犬」論争は、どうもこの本自体を読んでいない人たちが、勝手にレッテル貼りして批判している印象で、聞くに堪えるようなものは実際には少なかったと思う。

で、この本なんですが、目次でちょっと驚かされる。

「五十代になると勝ち犬も負け犬も歩み寄るのよ」阿川佐和子
「還暦を迎えたら迷いも期待もなくなって懊悩から抜け出すわよ」上坂冬子
「負け犬は、嫌になったらトランクひとつで旅立てばいいから」香山リカ

これだけ読むと、なにか「励まし」というより「脅し」のような気がしてくるのだけど・・・。

でも、酒井さんというひとは、なかなか飄々として、うまいこと脱力した書き手だなと思うところがあって、フグと居酒屋の譬え(フグを食べに行こうと誘う男と居酒屋に誘う男がいた場合、フグを選んでしまうのが「負け犬」だという話。)なんかは妙に現実味を感じてしまう。

個人的に面白かったのは、女性ばかりの対談者のなかで、「黒一点(?)」鹿島茂氏との対談。要するに、「負け犬」問題というのは、女性の「負け犬」の背後に男性の「負け犬」もたくさんいるんだってことですよね。(ちょっと、江国香織の小説『間宮兄弟』を思い出した。)バブルとの関わりでいえば、フリーター・ニート問題と一脈通じるというのか・・・。

フェミニズム系のある種マッチョな理屈とは違う、肌触りとか皮膚感覚の状況論って感じで楽しく読めます。おすすめですよ。

先達の御意見

文藝春秋

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