切られお富!

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【追悼】 歌舞伎役者 坂田藤十郎

2020-12-13 20:56:12 | かぶき讃(トピックス)
好きな役者の一人だったので、残念ですが、この人くらい生きたいように生きた人も稀だから大往生でしょう。ということで、ご冥福を祈るとともに、個人的な思いを綴りましょう。

わたしが本気で歌舞伎を見始めた頃には、すでに六代目中村歌右衛門は舞台に出ていなくて、先代の雀右衛門、芝翫に坂田藤十郎(三代目中村鴈治郎)が女方の大役をやる役者というイメージでしたが、なんだかんだで歌右衛門の影響下にある二人とは全く違う舞台、世界観を見せるのがこの人でした。それに、立役の大役もやっているので、幅が広かったですよね。

で、個人的に記憶に残る舞台ですが、列挙しましょう。

①仮名手本忠臣蔵(上方版の通し上演)
②伽羅先代萩
③妹背山婦女庭訓 山の段
④毛剃(團十郎と共演)
⑤吃又(團十郎と共演)
⑥夏祭浪花鑑(大阪松竹座)
⑦河庄(鴈治郎の名前で最後の舞台の千穐楽)
⑧摂州合邦辻

上記を見て、「曽根崎心中」とか「吉田屋」がないとか言われそうですが、そのあたりは他の人が語ってるでしょうから、あくまで個人的な思いの深いモノについて書きます。

まず、①はロビーにいた扇千景さんにサインしてもらった思い出の舞台ですが、残された上方の役者たちでちゃんと継承してほしい。映像も保存版として残してほしいです。落語における桂米朝が果たした役割みたいなものがあるとおもいます。

次に、先代萩。この人の場合は大道具も違うんですが、それより何より、一番「おっかさん」って感じの政岡なんですよね。玉三郎など現代的な女方がやると、神経質な教育ママみたいになるのに、この人だと「おっかさん」なんですよ。そこが面白い!

山の段とか忠臣蔵の九段目とかは、貫禄がないと、女方の刀を構えたところがサマにならない。かっこよかったですよね。

毛剃と吃又は今は亡き團十郎との相性が抜群でした。二人とも陽性の人だし、過剰に心理主義っぽくないところが、かえって情が深く感じるんですよ。特に毛剃の太平楽な気分はこの二人以外では出せないと思います。誰かやれる人いますか?

夏祭は大阪遠征して観た舞台ですけど、東京のこの芝居に慣れた目には、この人と我當の関西弁の舞台が、「これが本当の夏祭だ!」と思わせるものでした。津大夫とか住大夫の義太夫に通じる熱気。上方の役者さんは是非継承してください!

河庄は、鴈治郎の名前でやった歌舞伎座での最後の舞台で、なおかつ千穐楽。この月は共演の雀右衛門(先代)の小春が休演していたんだけど、月末になって復帰。舞台も素晴らしかったんだけど、最後にカーテンコールに答えたご本人が元気溌剌で、一生青春とばかりに藤十郎襲名について嬉しそうに語っていたのが思い出されます。これくらい元気じゃないと、年取ってから襲名という長年の夢を叶えられないんだな〜と今になって思いますね。

最後が、個人的に因縁のある合邦。わたし、実はこの舞台観ていないんです。「鴈治郎の合邦が観たい!」と書き続けて、とうとう国立で公演が決まり、いい席を取って楽しみにしていたのですが、ドイツ旅行から帰国後に足を骨折。絶対安静で観に行けなかったんですよね。わたしの生涯の後悔の一つになっているんですが、NHKはこういう舞台こそ、BSとかEテレなんかで追悼放送してください。曽根崎心中は散々やっているんですから。

そういえば、Eテレ売却とか言ってる、元大蔵官僚(窃盗かなんかやりませんでしたっけ?)がいますが、数学得意なだけの人は教養がないという、学生時代からのわたしの経験則を裏打ちするもので、「愛国を語る者ほど、地頭が悪く、日本文化にも興味なし」という経験則と並んで、今の政治を語るうえの要注意ポイントではないでしょうか!

ま、そんなことはともかく、70過ぎても、廓文章吉田屋で、軽快にあのお洒落な柄の炬燵を飛び越え、舞台狭しと走り回っていた坂田藤十郎丈みたいな歳のとり方をしたいなと思います。

ま、長くなったんで、こんなところで!





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