切られお富!

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『十代目金原亭馬生 噺と酒と江戸の粋』 石井 徹也 著

2010-08-15 23:59:59 | 新釈落語噺
これはとても愛のある本でした。故古今亭志ん生の長男で、故古今亭志ん朝の兄。女優池波志乃の父親でもある故十代目金原亭馬生を語った本です。簡単に感想。

かねてより、「わたしの偏愛する落語家は、十代目金原亭馬生と三代目三木助」と広言してきましたが、要するに渋い語り口の噺家が好きなんですよね。(そういう意味では八代目可楽も結構好きです。)

で、馬生とこの本。

弟子たちの対談や談志の発言もそれなりですが、個人的には中尾彬・池波志乃の夫婦対談が面白かったし、こういう企画本でないと読めないですよね。貴重!

それと、この本で知ったのですが、馬生って、多芸な人だったんですね。特に興味深かったのが、踊りの話。

「踊りの神様」七代目坂東三津五郎の弟子にあたり、坂東流の名取だったという話には驚かされました。

さて、良い本だし、落語ファンには薦めるんですが、あえて苦言。

まず、馬生の落語そのものに関する紹介、分析がやや足らないのではないか。エピソード中心で、馬生の噺の特徴がこの本からは伝わりにくい。

二点目。談志が馬生の死んだ日に高座で落語をやらなかった話を引っ張りすぎ。その日にのちの柳家喬太郎が高座を聴きに行っていたのは興味深い話だけど、所詮は馬生の外側の話に過ぎないと思う。

三点目。談志に対するインタビューの突込みが甘い。談志独特のテレで、もうひとつ馬生の芸について語っていないように思える。CD-BOX『談志の夢の寄席』ではもうちょっと語っていることを考えれば、もっと突っ込んで語らせるべきだし、もっと何を言ってくれるのか、聞きたかった…。

というわけで、十代目馬生を語る上での基本文献だと思います。

ちなみに、わたしが一番好きな馬生の噺は「王子の狐」!飄々としていて、それでいて異界に連れていかれるような、トリップ感のある語り。これは、志ん生にもなかった暗闇だと思いますよ。必聴!




十代目金原亭馬生 噺と酒と江戸の粋
石井 徹也
小学館

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