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切られお富!

歌舞伎から時事ネタまで、世知辛い世の中に毒を撒き散らす!

シガテラ②~⑤

2005-05-21 16:28:47 | 超読書日記
以前、このマンガのことを大絶賛したせいか、「シガテラ」で検索して私のブログに来る人が結構いるんですよね。というわけで、⑤巻も出たことだし、期待に応えて私の感想。

平凡な高校生の日常を話の縦糸にしているこのマンガについて、多くの読者は「リアル」だという感想を書いているし、私も「リアル」だと思うのだけど、このマンガの「リアル」について真剣に考えてみる必要があると思う。

正直なことをいうと、主人公の彼女・南雲さんというキャラは私には全然リアルな女の子ではない。どちらかというと、いじめっ子・谷脇の彼女アキコちゃんの方がキャラが立っていてリアルな気がする。(もし、仮にこの作品が映画になった場合、アキコちゃん役はおいしい役じゃないかなという意味で。)

では、なぜ読んでる方は南雲さんが気になってしまうかというと、彼女が彼氏のことを「きみ」と呼んでいる辺りに答えがあるような気がする。最初、映画『アイデン&ティティ』のなかに出てくる、主人公のバンドマンの出来すぎた彼女が、やっぱり彼のことを「きみ」と呼んでいて、彼を諭したりなだめたりしている姿を思い出してしまった。(みうらじゅんの原作は読んでいないので判断保留です。)確かある映画評で、麻生久美子演じるこの役を「全然リアルじゃない」と書いていた人がいたけど、多分的外れで、この手の女の子キャラというのは、実は「女」というより、主人公の<自己確認>のためにキャラクターなのだと思う。(だから、リアルになりようがない。)

つまり、二人称「きみ(YOU)」で書かれた小説、ジェイ・マキナニーの『ブライトライツ・ビッグシティー』に近い形で、主人公と主人公に感情移入している読者を追い詰める役目が南雲さんなんだと思う。(もっといってしまえば、主人公の男の頭が作り出したキャラみたいな部分もあるといえる。)だから、④巻以降に出てくる、南雲さんの貞操の危機は、南雲さんの<肉体の危機>というより、主人公と主人公に肩入れしている読者の<心理的な試練>という印象を与えている。

このマンガのもうひとつの特徴である、次々に登場しては消えていくちょっとグロい、<ありそでなさそな>キャラたちは、村上龍の小説『ライン』やルイス・ブニュエルの映画『自由の幻想』さながらの現代を映す絵巻物のようなのだけど、「リアル」なのはそれぞれに虚無を抱えた人物たちが、主人公や主人公の分身である南雲さんになんてことなく接近していく、何気ない間合い。一本乗る電車が違えば、地下鉄サリンやJR西日本の事故にあったかもしれないような、身に迫った怖さがある。

そういう意味では、このマンガ、決して「ホラー」でなく、日常の「サスペンス」だと私は思うのだが…。

なんだか、取り止めがなくなってきたんで、この辺で。(滅茶苦茶尻切れトンボだ!!)

8月発売予定の⑥巻は結構急展開になるのかな?
というわけで、私はやっぱりアキコちゃんを応援してます!

シガテラ 5 (5)

講談社

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【以前書いた私の感想】

『シガテラ』①古谷実 講談社

【参考】
映画 『アイデン&ティティ』 公式HP 

ブライト・ライツ、ビッグ・シティ ジェイ・マキナニー著
ライン 幻冬舎文庫 村上龍著
自由の幻想(ルイス・ブニュエル監督)

ビデオメーカー

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