「『堕胎児』の『堕』を削除」するよう厚労省が干渉―栗生楽泉園・慰霊祭をめぐって

7日、検証会議の調査以前に処分された標本「胎児」の慰霊祭が行われた。

これについて、自治会と施設側(楽泉園)が「協議を重ねる中で、(名称を)『堕胎児合同慰霊祭』とすることで合意していたにも関わらず、突然厚労省より施設当局に対し…『堕胎児』の『堕』を削除し、同時に弁護団の『慰霊の辞』を断るようにとの干渉があ」ったとし、自治会が抗議の声明文を提出。
 「私たち自治会は…治療の身ゆえにやむを得ず受け入れざるを得なかった」。

「園長を通すことで、いやが応でものめというやり方に我慢なりません」(国賠訴訟全国原告団協議会の谺雄二会長) 【2006年11月3日 しんぶん赤旗】

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<11月7日 中日、読売、朝日、毎日>

 厚労省の『干渉』に抗議    胎児合同慰霊祭で

 草津町のハンセン病療養所「栗生楽泉園」で七日に予定されている胎児標本の合同慰霊祭の名称と式次第をめぐり、入園者らでつくる自治会が六日までに、国に対する抗議声明を出した。

 声明では、厚生労働省側の「干渉」で、慰霊祭の名称が「堕胎(だたい)児合同慰霊祭」から「堕」を削除された「胎児等合同慰霊祭」になり、式典でのハンセン病訴訟弁護団代表の「慰霊の辞」も認められなかった、としている。

 自治会は「堕胎児」でないと、強制的に生ませなかったという意味合いが薄れると主張。藤田三四郎・自治会長は声明で「同園で療養する身として受け入れざるを得ないが、納得がいかない」と述べた。

 これに対し、同省国立病院課は「『干渉』というのは事実誤認。相談は受けたが、施設側が自治会と協議して決めた」としている。同課によると、施設側から「胎児等」の名称で弁護団の式辞も行わないとの内容の相談があり、他の療養所の慰霊祭の実施例に沿って「適当」と答えたという。

 合同慰霊祭は、国立感染症研究所(東京都)に残っていた胎児標本が同園に返還されたことを受け、一九八三年に同園で火葬、納骨された二十五体とともに慰霊する式典。当日は柳沢伯夫厚労相の参加も調整されている。 (石屋法道)
【中日新聞ネットニュース】
http://www.chunichi.co.jp/00/gnm/20061107/lcl_____gnm_____002.shtml

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 毎日新聞

群馬・栗生楽泉園自治会、厚労省に抗議声明
2006.11.07 東京朝刊 
 
 ◇きょう「胎児」慰霊祭

 群馬県草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」で7日開催される患者の胎児の合同慰霊祭を巡り、入園者自治会(藤田三四郎会長)が6日、厚生労働省の対応に抗議する声明を発表した。慰霊祭の名称を「堕胎児合同慰霊祭」から「胎児等合同慰霊祭」に変えるよう同省側から干渉を受けたと主張している。

 同園では先月、園に返還された胎児のホルマリン漬け標本1体の葬儀が営まれた。慰霊祭はこの標本を含め、堕胎の記録が残っている26体を弔うため企画された。

 声明は元患者らの支援グループが自治会の依頼を受けて公表した。それによると、名称変更のほか、式次第からハンセン病訴訟弁護団代表の「慰霊の辞」を外すよう同省側から求められたという。

 慰霊祭の名称を巡っては園と自治会の間で協議が行われ、自治会は園側の強い要望を受け入れ、最終的に「堕胎児」を「胎児等」に変えたとしている。声明で同自治会は「激しい怒りを覚え抗議する」と訴える。

 自治会の谺(こだま)雄二副会長は「『堕胎児』を『胎児等』に言い換えるのは、強制堕胎という人間の根源を踏みにじる人権侵害があった事実から目をそらすことになる。園が厚労省の意を受けて変更を押し通したのは明白だ」と憤る。

 一方、厚労省国立病院課は「省からは干渉も要請もしていない。声明は事実と異なる」と事実関係を否定。そのうえで「園の考えを尊重するのが国の立場」と強調している。

 東正明園長は「自治会と園の話し合いの中で合意に至らず、私が直接出ていってまとまったもの。無理強いはしておらず、声明の内容は当たらない」と話している。【藤田祐子】

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読売新聞

ハンセン病胎児慰霊祭 草津できょう 「堕」の字削除、納得いかぬ=群馬
2006.11.07 東京朝刊  

 ◆入園者反発

 ハンセン病のため、国の隔離政策で強制的に堕胎させられるなどした胎児や新生児26体の慰霊祭を7日に行うことにしている国立療養所「栗生楽泉園」(草津町草津)で、慰霊祭の名称などを巡って、入園者でつくる自治会が園側の対応に反発、抗議声明を出す事態になっている。

 6日、県庁で会見した自治会の代理人などによると、慰霊祭の名称については、園側は「胎児等合同慰霊祭」とするよう提案したが、自治会が「強制的に堕胎させられたことが問題」として「堕胎児合同慰霊祭」と主張。また、ハンセン病訴訟弁護団の代表による「慰霊の辞」も行うべきだとし、協議の結果、自治会の主張通りで合意したという。

 しかし、数日後、同園の東正明園長から、自治会に対し、厚労省から『堕』の字を削除し、慰霊の辞も断るようにとの要請があり、要請を受け入れざるを得ないと説明があった。自治会は、園長の立場に配慮して受け入れを決めたが、2日、「この慰霊祭は納得いかぬまま開催され、納得いかぬまま出席する」などとする抗議声明を厚生労働相などに送った。

 東園長は、取材に対し、「合意した覚えはない。交渉の途中で国に相談したことはあったが、(それで名称を)覆したわけではない。もともと『胎児等』と言ってきた」と話し、両者の言い分は食い違いをみせている。

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朝日新聞

慰霊祭名称巡り厚労省に抗議 ハンセン病療養所「栗生楽泉園」自治会 /群馬県
2006.11.07 東京地方版/群馬 
 
 草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」が中絶された胎児や新生児を悼んで7日に開く慰霊祭について、「式典の名称に堕胎児という言葉を使わないようにと、厚労省から干渉を受けた」として、園自治会が同省に声明文を送った。同省は「助言」とするが、自治会は「園で療養する身で受け入れざるを得なかった」とし、圧力と受け止めている。

 名称については、自治会の「堕胎児合同慰霊祭」という案に対し、園は「胎児等合同慰霊祭」を主張、協議していた。自治会は「単に胎児とすると、問題が覆い隠される」と反発。だが、最終的に自治会は園が主張した名称を受け入れた。

 声明は藤田三四郎・自治会長名で、2日に送付した。厚労省から干渉があったと受け止めたうえで、声明では「激しい怒りをおぼえ抗議する。慰霊祭は納得いかぬまま出席する」としている。

 東正明園長は話し合いの状況を厚労省に逐一報告し、その助言を採り入れたとして、「国の文書では胎児等という言葉を使っており、他の園の慰霊祭でも胎児としている」「堕胎児とすると精神的に苦痛を感じる人もいる」ことなどを、「堕」の文字をはずす理由に挙げた。

 厚労省の担当者は「どちらがいいか園から助言を求められたので、堕がない方がいいと助言をした」としている。



 

<11月8日>慰霊祭後の報道

朝日新聞

栗生楽泉園で合同慰霊祭 位牌には「堕」の文字、 抗議声明反応なく /群馬県
2006.11.08 東京地方版/群馬 群馬県央  

 草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」で7日、中絶された胎児や新生児の合同慰霊祭があった。正式に追悼できたことを安堵(あんど)する声がある一方で、入園者らには厚生労働省の対応への不満も残っている。

 慰霊祭は、同園で中絶されたとみられる男の子の胎児標本が都内の研究所で発見され、同園に戻ったことから実現した。カルテの記録と入園者の記憶から、中絶されたとみられる26人が、一緒に弔われた。この26人については一部標本が残っていたものの83年に焼かれてしまったため、式壇には木製の位牌(いはい)が置かれた。

 入園者、職員ら約150人が参列。厚労省からは、当初、大臣か副大臣が出席するとされていたが、国会会期中のため、関山昌人国立病院課長ら3人が出席した。

 自治会は2日、「慰霊祭の名称に堕胎児という言葉を使わないようにと厚労省から干渉を受けた」として同省に声明文を送っていたが、特に厚労省側から説明はなかったという。藤田三四郎自治会長(80)は「大臣が来るなら式の後に懇談したいと申し入れていたが、残念だった」と話す。位牌(いはい)には「堕胎児之霊位」と記し、来年建てる慰霊碑にも「堕胎児」という言葉を使う予定だ。「声明への答えもなく、一つの節目が終わったが、なんだかすっきりしない」

    ◇

 慰霊された新生児の中に、入園者で詩人の桜井哲夫さん(82)の娘、「真理子」さんがいる。人工早産の後しばらくは息があり、桜井さんは、砂糖水を作って飲ませたり、抱いて寝たりしたという。標本室からこの子の泣き声が聞こえるという詩、「津軽の子守唄(うた)」も作っている。

 出席者の中で、慰霊される子どもの実の親は桜井さんだけ。祭壇に置かれたつぼの中には、26歳で亡くなった妻の骨と、自分のロザリオを入れた。自分も最期を迎える時は、一緒に故郷青森にある墓に入りたいと思っているという。

 【写真説明】

 献花する参列者たち。正面の幕は「胎児等合同慰霊祭」になっているが、木の慰霊碑には「堕胎児之霊位」と記されている=草津町草津の栗生楽泉園で

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毎日新聞

ハンセン病:強制堕胎の子どもら供養 150人参列し合同慰霊祭--草津 /群馬
2006.11.08 地方版/群馬 
 
 ◇「どうぞ天上で見守り下さい」--国立ハンセン病療養所栗生楽泉園

 ハンセン病元患者が強制堕胎され、ホルマリン漬け標本となった胎児や新生児を供養する「胎児等合同慰霊祭」が7日、草津町草津の国立ハンセン病療養所栗生楽泉園(東正明園長)で営まれた。

 標本は全国で115体見つかっているが、今年6月、厚生労働省と全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)が「遺族の意向に沿って1体ごとに供養する」ことで合意し、全国の13療養所で慰霊祭が開催されている。楽泉園は11番目。

 この日の慰霊祭には関係者ら約150人が参列。白い菊やユリで覆われた祭壇には「堕胎児之霊位」と記された白木の位牌(いはい)が置かれた。

 厚労省からは白石順一審議官が出席。「多大なる精神的苦痛に対し、おわびする」との柳沢伯夫厚労相の慰霊の言葉を代読した。入所者自治会の藤田三四郎会長は「改めて強制隔離政策に怒りがこみあげる。どうぞ天上で見守り下さい」と声を震わせた。小寺弘之知事は「歴史を踏まえ正しい知識を伝えるよう取り組む」と誓った。

 当初、柳沢厚労相が出席の意向と伝えられていただけに、慰霊祭終了後、藤田会長は「直接謝罪を得られず、非常に残念でさみしい」と話した。園と自治会の間で名称や式次第を巡り意見が対立した点についても「大臣と直接話をしたかった」と不満をもらした。

 白石審議官は「格の落ちる私(の代理出席)で申し訳ない」と述べ、自治会との懇談については「大臣と全寮協が先月、話し合いをしているので」と言葉を濁した。【藤田祐子】

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読売新聞

胎児・新生児26体、やっと天国に 草津・ハンセン病施設で慰霊祭=群馬
2006.11.08 東京朝刊 
 
 ハンセン病のため、国の隔離政策で強制的に堕胎させられるなどした女性の胎児や新生児26体の合同慰霊祭が7日、草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」で行われた。遺族や入所者ら約150人が参列し、献花した。

 慰霊された26人は、ハンセン病研究センター(東京都)で保存されているのが発見され、10月に同園で告別式を行った胎児に加え、標本となってその後処分された12人と、カルテなどから親が同園にいたとされる13人。

 式では、はじめに東正明園長が「闇の中で手を差し伸べることなく、宙にさまよっていた。放置されてきたことは遺憾」と悼んだ。当初、柳沢伯夫厚労相が出席予定だったが国会対応のため欠席。慰霊の言葉を代読した同省の白石順一審議官は「多大な精神的苦痛を与えた。心からおわびを申し上げる」と、国として改めての謝罪を表明した。

 慰霊祭を巡っては、入園者でつくる自治会が名称などについての園側の対応に反発、抗議声明を出していたが、この日は目立った動きはなかった。慰霊祭後、自治会の藤田三四郎会長は「大臣が欠席し、直接、補償など今後の国の姿勢について思いを伝えることができなかったのは非常に残念。だが、慰霊祭で一応の区切りをつけることが出来た」と語った。同園は、来年にも、園内に26人の慰霊塔を建設する予定という。


 写真=祭壇を前に、献花をする参列者たち

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中日新聞ネットニュース

胎児の慰霊祭 厚労相は欠席   草津・栗生楽泉園

 草津町の国立ハンセン病療養所「栗生楽泉園」で七日、国の隔離政策に伴って強制的に堕胎( だたい)された胎児二十六体の合同慰霊祭が行われた。入園者をはじめ、厚生労働省幹部や小寺弘之知事など約百五十人が参列。柳沢伯夫厚労相は公務のため出席しなかった。

 入園者でつくる自治会の藤田三四郎会長は「天上にて見守りください」と冥福を祈った上で、「堕胎された胎児たちは母に抱かれることなく、人間の尊厳を無視され命を奪われた。隔離政策に怒りが込み上げる」と国を批判した。柳沢厚労相の言葉を代読した同省の白石順一審議官は「両親、家族、入所者に多大な精神的苦痛を与え、誠に遺憾。心からおわび申し上げます」と謝罪した。しかし、式典後に会見した藤田会長は「大臣、副大臣が欠席したとは誠意ある対応と思えない」と話した。

 今回の慰霊祭は、国立感染症研究所ハンセン病研究センター(東京都)に標本として保管されていることが分かった胎児が同園に返還されたことを受け、一九八三年までに同園で火葬、納骨された二十五体とともに慰霊した。 (禰〓田功)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/gnm/20061108/lcl_____gnm_____007.shtml


 

 

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