Vino Masa's Wine Blog

Weekly notable wine update.
毎週、気になったワインをアップデートします。

ミクロクリマ

2015-03-21 | Viticulture

ミクロ・クリマ(英語におけるマイクロ・クライメット=micro climate=日本語の微気候)の意味する範囲はしっかりと規定されているわけではない。拙訳本「ブルゴーニュのグラン・クリュ」によると、通常の気候climateが広い地域一帯を指すのに対して、その地域のある特定の場所を指す用語がメソ・クリマ、畑内の一部を指す用語がミクロ・クリマとある。しかしながら、本書内ではメソ・クリマと捉えるべき事柄もミクロ・クリマと記載されている。どの程度の広さを指すのかははっきりしないが、地域内の気候特性の違いを表現するものとして話を進めたい。

「日本海側は雪が多い」これは誤りではないが、ブドウ栽培における雪対策が統一できるほど雪の深さが均一ではない。以前紹介した、メルシャンの枕子ヴィンヤードは、長野県の県北に位置する。標高も600mと高いが積雪量は数十㎝、突然の大雪時などを除けば特段の雪対策は不要である。新潟県にあるフェルミエも日本海側ながら雪は少ないので、特段の対応はしていないようだ。

(枕子ヴィンヤード2015年2月)

 

一方、北海道の岩見沢の10Rワイン、山形県庄内地方の月山ワイン(一部例外?)、福井の白山ワインなどは雪深く、樹は斜めに生育させて冬場は樹を寝かせて雪に埋めている。

月山ワインの限定キュヴェ、カベルネ・ソーヴィニョンが造られる庄内の袖浦地区は、海岸の近く(庄内空港の近く)に位置し、今年のような雪がほとんどない年であれば寝かせる必要はないはずである。一方、個人的に着目している同じ酒田市の八幡町付近の高原には、標高400m程度の南向き斜面で1m強の積雪がある。直線距離で30キロしか離れていない。ここまで雪があると、未だ剪定を開始できる状況ではない。庄内平野の中でもはっきりとしたミクロ・クリマ(或はメソ・クリマ)の影響があるとの印象を持たずにはいられない。

(鶴岡市豊栄付近)

 

 (酒田市湯ノ台付近)

 

 

ブドウ栽培適地を探すべく気象データの比較を行ってきた。ベンチマークとしたのが、フランスのディジョンと山形県の酒田市。しかし、いずれも気象観測点は、ブドウ栽培地(候補地)からは数十キロは離れている。コート・ドールは、ディジョンに比べて温暖であろうし、鳥海山麓は酒田よりは標高差以上に冷涼と思われる。通常標高は100mごとに気温を0.6℃補正して行われるが、鳥海山の場合上部に万年雪があるので、そこから吹き下す風が標高差以上の温度低下をもたらす気がする。

先般、長野のヴィラデストのピノ・ノワールを飲む機会を得た。標高差を単純に考慮するとディジョンとそう変わらないが、ここのワインはブルゴーニュのものより冷涼なところ、アルザスなどに似たところで造られたニュアンスを感じる。今までは、長野県の標高700m、山形県の標高400m、北海道の標高100mがピノ・ノワール適地と考えていたが、日本の急峻な山から吹き降ろす風、寒さによる発芽の遅れを考えると、あと200m低くても良いのではないか?

また、月山ワインの限定キュヴェであるカベルネ・ソーヴィニョンを試飲する機会も得たが、果実の熟度が高く驚いた。このワインは、酒田市の袖浦地区で造られるものだが、この地がボルドーに似たニュアンスの果実を生む気候であると感じてしまう。

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 還元香 | トップ | ワインの詰まった瓶を閉める... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Viticulture」カテゴリの最新記事