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還元香

2015-03-09 | Wine Making

ワインの欠陥に紐づけられた香りのひとつに「還元香」がある。ワインの醸造・熟成時に空気に触れさせすぎると酸化の問題が生じるが、嫌気的な環境にさらされすぎると還元状態となり不快臭の原因となる。しかし、実際のところは嫌気性の環境下で生成されやすい、芳香性の高い硫黄化合物の香りの総称として、還元香とか還元臭と呼ばれている。酸化したイオウ化合物も存在している。

一般に強い不快臭とされるものに硫化水素がある。腐った卵、イオウ泉などに代表される香りがある。もう一つ、マイルドなものにメルカプタンが上がる。こちらは、キャベツやゴムのような香りで、不快とまではいえないものの本来の果実の香りなどを覆い隠してしまうので、問題と思われる。さらには、3MHA、3MH、4MMPといったチオール類(イオウを含んだ有機物質の総称)は、グレープフルーツ、パッションフルーツ、ツゲといった香りに相当し、ソーヴィニョンブランの特質を構成している。イオウの混入が全てダメと断じることはできない。

プラス面のあるソーヴィニョンブラン関係の香りはおいておいて、健全さを損なう還元香について考えてみたい。定義が曖昧なため乱暴な議論であることはご承知いただきたい。

最近、いささか閉じ気味の赤を飲むことが多い。空気を絡めながら口で吸い上げると口の奥を回って果実の豊かな香りを感じるのだが、グラスに鼻を寄せても、スワリングをしても、キャベツのような香りが支配的でちょっとがっかりする。見出し写真のDRCリシュブール95を筆頭に、ガヤのソリ・サン・ロレンツォ96、ルソーのクロ・ド・ベーズ99、ロベール・シュルグのヴォーヌ・ロマネ村名2005、そしてヴィラデストのピノ2013。何が問題なのであろうか?「日向は赤に厳しい」と指摘されるので、ちょっと掘り下げてみた。

これらのそうそうたる生産者を見ると、農薬散布などによる、多量のイオウ分が混入したためとは考えにくい。マロラクティック発酵時に、嫌気性の環境に置かれたまま醸造・熟成させたため酵母がよけいな化合物を生成してしまったとの説明もある。熟成時に十分なバトナージュ(撹拌)がなされなかったからと考えるのは乱暴だろうか。

シャサーニュ・モンラッシェにいるラモネは、バトナージュをそれほど行わない。彼のワインを含めた水平テイスティングを幾度かしたことがあるが、新しいビンテージでは火打石の香りが強く(これも還元香の一種)、訴えかける香りは少なく人気はないが、年代を経たものを比べると傑出している。薄いメルカプタン系の還元香は、時間を経てゆっくりと還元から酸化へと向かうのかもしれない。そして、上記のワインを含めた多くの還元した赤ワインも長い年月を経て酸化して行くと考えたくなる。

硫化水素を取り除くのは難しいが低濃度のメルカプタンは除去可能とも言われる。銅の棒で撹拌することで酸化を促し、6時間前に抜栓して還元香があればデキャンティングをすることで対処できるとか。十分な熟成期間を経ていないワインに心を開いてもらうには、手間と時間が必要かもしれない。

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