Vino Masa's Wine Blog

Weekly notable wine update.
毎週、気になったワインをアップデートします。

セロスのミレジメ 2002

2015-05-27 | Essay

ワイン倉庫整理のデータベースの写真をチェックしたところ、セロスのミレジメ2002年を良く見ると同じヴィンテージにもかかわらず、異なったラベルが使用されている。掲載した写真の左右が2002年のミレジメ(真ん中は2003年)。それぞれ2002年の印字の他に、ミレジメが造られたと思われる2002年前後の年号が印字されている。この表記されている近傍の年号が左右の2002年ミレジメのラベルで異なっている。実は、左側がマグナムボトル、右側がレギュラーボトル。熟成のポテンシャルなどは大きく異なるはずなので、造り方が違うのは当然かもしれないが、澱引きのタイミングが異なるので見かけのラベルだけでは判断できない違いがあることがわかる。印字が異なるのも、ボトルサイズによってリリースされた年号が異なるためなのであろうか。

左側の2002年ミレジメに印字されている年号は、1999、2000、2002、2004、2005、2006 瓶詰は2014年4月12日

右側の2002年ミレジメに印字されている年号は、1999、2000、2002、2003、2004、2005 瓶詰は2012年5月22日

 

 

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ブルゴーニュが目指す遺産の継承

2015-05-24 | ワイナリー訪問記

ブルゴーニュの世界遺産登録が話題になっているが、何故ブルゴーニュ人はこれにこだわりを持つのか。我々愛好家にとってテロワールは確立された概念ではあるが、一般には必ずしもそうではない。世界遺産登録の旗振り役のオーベール・ド・ヴィレーヌは、「テロワールとは、これを聖杯とみなす者がいる一方、否定する生産者もいるという確立途上の概念である」と語っている。

リチャード・スマートは、テロワールはジャーナリストによってカルト的なものに祭り上げられたが、その中で重要なことは、畑が水を吸収する力と保持する力の性質に限られ、斜面、日当たり、高度、ミクロクリマの影響といった要素は変更可能として、アンチ・テロワールを表明している。また、同じ畑の異なる生産者のワインを並べてみてもそれほどの同一性を感じないという、一般的な経験則を上げる者もいる。ヴィンテージに加えクリマごとに細分化された商品群を造ることは、マーケティング戦略上のメリットのためで、差異を感知できるだけの味わいの違いがあるかは微妙でもある。

それぞれに対する反論もあり、議論は容易に収束するとは思えない。ヴィレーヌ氏は、「ユネスコの世界遺産への登録を検討するほどの確固とした枠組みがあるのだろうか」と問いかけているが、クリマを世界遺産登録に諮ることによって、テロワールが具現化されたクリマの概念の確立を一歩進めたいのであろう。

世界遺産登録によって土地の売買、分割などが阻まれるリスクは増大する。病害対策などへの対応が他地域に比べて遅れる懸念もある。雹対策としてのネットはすでにAOC法上許容されていないが、世界遺産の景観の基準に照らしてさらに融通は効かなくなるであろう。最悪の事態においては、景観が損なわれて登録抹消に追い込まれるだけなので対応不能とはならないが、足かせになることは否めない。

それでもなお、世界遺産の登録を目指すのは、ヴィレーヌ氏が引用する、ブルゴーニュ大学のジャン・ピエール・ガルシア教授の言、「自然から賜り、人間によってつくられたものーーークリマはまさしく歴史的な遺産であると、村の人々が証言しており次の世代に引き継がれなければならない」との思いが強いからであろう。

ヴィレーヌ氏は、景観が重視される世界遺産とは別に、クローンなどの苗木の保存にも熱心である。ルイ・ラトゥールのデニス・フェッツマンとともに、ブルゴーニュ品種保護協会(Association pour la Sauvegarde de Cepages de Bourgogne)を設立し、ブルゴーニュの植物材料が継承して来た遺伝的特性の保護を目指している。今後15年で、新しく200種のクローン育成が計画されている。

参考文献:山本昭彦氏「ワイン・レポート」http://winereport.blog.fc2.com/blog-entry-1350.html

レミントン・ノーマン著「ブルゴーニュのグラン・クリュ」(白水社)特にこの「序」は、オーベール・ド・ヴィレーヌが寄稿している

 

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テロワールを決める物質

2015-05-06 | Essay

以下の研究論文を見て、アントシアニンの成分による違いが我々がテロワールの違いと称する感覚に影響を与えていると感じる。われわれがブラインドテイスティングをするとき品種の特定を目指してしまいがちだが、ある著名ソムリエはまずどこの土地を感じるようにワインを利くと言っていた。特に赤ワインの場合、産地によって色合いや質感が異なってくるのであれば、このソムリエの言は意味深に感じる。

この研究はテロワールを科学的に分析しようとした点で画期的であり、更なるテロワールの端緒となることが期待される。様々な場所(国、土壌、気候)、多様な品種・クローン、多くのヴィンテージなどの違いについての研究が待たれる。

 

国際的にも権威あるアメリカの学会誌、「American Journal of Enology and Viticultreu」にマルベック種のテロワールについて科学的な実証を試みようとした興味深い論文が掲載されていたのでその紹介。

2015年のVolume1に掲載されたのは「Phenolic Composition of Malbec: A Comparative Study of Research-Scale Wines between Argentina and the United States」と題するもので、Univeresity of California, DavisのFernando BuscemaとRoger B. Boultonが発表したもの

栽培地は、アルゼンチン(メンドーサ):トゥプンガト、ルハン、マイプ、サンカルロス、カリフォルニア:ナパ、ソノマ、モントレー、サン・ホアキン、レイク、ヨーロー

それぞれ、同じ台木、同じクローンのワインを同一の仕立て、同じ剪定法等の栽培を行い、同水準の糖度に達した時点で収穫し、同一の商用酵母、同一のMLFスターターを用いて醸造の後、同じ熟成方法、期間を経たものの分析を行った。

含まれているアントシアニン(Gallic Acid、エピカテキン、各種シアニジンなどが例)は、HPLCを利用して分類し、さらに吸光光度分析器を用いて既知の成分と合致するアントシアニンの含有量を計測した。これとともに、総フェノール、総アントシアニン、LMWP(Low Molecular weight henolics、フェノールのうち小粒のもの)の計測も行った。

この結果、総フェノール量、総アントシアニンともにメンドーサとカリフォルニアの間に顕著な違いがみられた。LMWPは構成物質によってばらつきがあり、産地の違いが殆どないものから産地によって含有量が大きく異なるものもあった。

各アントシアニンの結果も合わせて主成分分析、重回帰分析を行ったところ、メンドーサのものについては相関性が高いが、カリフォルニアの各州のものにはばらつきが多かった。

この論文で結論付けられていることは、カリフォルニアに多いとされるアントシアニンがmalvidin-3-glucosideとmalvidin-3-transisomer、メンドーサに多いとされるのが、syringic acidとgallic acids。結果、カリフォルニアのものはより色が濃く、メンドーサのものは紫が強い。また、gallic acidsの影響でメンドーサのものはより収斂性が強く苦さを感じることになる。

http://ajevonline.org/

見出し写真はUC Davisの農場で収穫されなかった黒ブドウ。この投稿と関係はない。

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クロマトグラフィー

2015-05-06 | Wine Making

ワイン醸造に関わる研究でクロマトグラフィーと呼ばれる装置が使われている。先般、とあるワイン会でガス・クロマトグラフィーについていい加減なコメントをしてしまったので、その訂正も含めて解説したい。

クロマトグラフィーとは、物質を分離する技法を用いた成分の分析方法である。基本原理は、移動相が固定相の中を進む速度などが物質ごとに違うことを利用して成分を抽出している。

中学・高校の授業に登場した、ペーパークロマトグラフィーもその一種で、サンプルの水溶液など(移動相)を紙(固定相)の一端に浸し、決められた時間内での浸漬速度の違いによって混入されている物質を特定している。

ワインの醸造においてよく利用されるのが、HPLCとGC/MS(見出し画像)。前者は、High Performance Liquid Chromatographyの略称が一般化したもので、後者はGas Chromatography / Mass spectrometryの呼称。

HPLCは液体を移動相に用いたもので、移動相と固定相の組み合わせ分子の大きさ、電荷、吸着力、疎水性などを利用して有機酸の特定などに利用されている。ワイン醸造においては、主な用途として、UV-VIS(吸光光度検出器)を利用したアントシアニンの検出、イオン交換を用いた有機酸や糖類の検出などが挙げられる。タンニン分とも関連性が高いアントシアニンの分析は注目を集め、多用されている。

GC/MSは、サンプルを不活性ガスの中に気化(移動相)させた上で、極性の異なるいくつかの物質(固定相)を通して成分を抽出するもので、沸点の異なる脂肪酸やアルコールの検出に優れている。これに質量分析器をつなぎ、それぞれのポイントにおいて抽出された物質の質量電荷比から分子の特定を行っている。これを用いるには、対象となるものが揮発性であることが必須だが、微量でも検知可能であり、その精度が高いことから近年注目を集めている。

写真を含めた主な出典:Chemical analysis of grapes and wine: techniques and concepts 2nd Edition, Patrick ILAND, Nick BRUER, Greg EDWARDS, Sue CALOGHIRIS and Eric WILKES

その他の参考文献:Wikipedia

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