Vino Masa's Wine Blog

Weekly notable wine update.
毎週、気になったワインをアップデートします。

さくらんぼの仕立て方

2015-02-22 | Viticulture

東京の有名店に卸す黄桃農家の方を訪問し、お話をうかがう機会を得た。この方は、元々は東京でサラリーマンをされていたそうだが、10年ほど前から単身赴任して、ご両親が営まれていた山形県寒河江市の果樹園を継いでいる。サラリーマンからの転身であることに加えて、現在は東京の某ワイン学校にも通われているそうで、親近感を覚える。

この方、漫然とルーチンをこなす栽培者とは異なり、大志を持って故郷に帰ってきただけあって、発想の柔らかさがあって、好奇心がくすぐられる。

空気がよどんだところでは果樹はうまく育たない。川の上は空気もよく流れ、果樹に良い影響がある。朝の太陽を受ける東向の畑がベスト。梅雨時の雨避けはもっとも重要で、ビニールハウスを使わないと果粒が裂けてしまう。開閉式のビニールハウスを造りたいのであれば、NZで使われているアコーデオン・カーテンのようなビニールハウスにしてはどうか。継続的に収穫を手伝ってもらえる人でないと、経験が継承されず役に立たない。色づきと糖度の上昇が必ずしも一致しないので、糖度が上がっているのに実が赤くならない時は売り物にならない。.......所詮ブドウ樹も果樹である。日本のテロワールで果樹を育ててきた方の意見には多くのヒントが隠されている。

なんといっても驚いたのが、カバーフォトの写真の仕立て方。イギリスなどのチェリー栽培に用いられている仕立て方で、彼がこの地に持ち込んだ。

あたかもブドウのコルドンを何層にも重ねたようだ。次の写真の遠景にあるのが山形で一般的に黄桃の栽培がおこなわれる仕立て方。こちらはブドウのブッシュ(株)方式に近い。仕立て方が問題となるのは、ブドウの専売特許ではなく、黄桃もそうであった。周りはほとんどがブッシュ方式のようで、剪定やキャノピーは経験と勘に頼らざるを得ないので3次元の発想が必要だが、コルドン方式だと剪定のノウハウを定義しやすく誰にでも取組・継承可能になる。まだはじめて10年、味わいへの影響が生じるには至っていないそうである。

畑においては、芽カキも実践していただいた。6-8個ぐらい芽生えたものを1、2個に減らすことで、収量コントロールが行われている。

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テロワール表現にドサージュは必要か?セロスのリューディーでドサージュ比較

2015-02-15 | Essay

Peter Liemは、シャンパーニュに特化したワインライター。更新頻度は少ないものの、英文で書かれた興味深い記事がアップされている。今回、目を引いたの記事の概要は、次のとおり。

高級シャンパーニュでお馴染のジャック・セロスのセミナーにおいて、澱引き時に糖分を添加するドサージュが必要か否かが話題となった。これを受けて、当主のアンセルム・セロス主導のもと6本のリューディー・ワインそれぞれに6段階の異なるドサージュを2014年11月に施した合計36本が準備され、プロ向けのテイスティングが行われた。

各畑のテロワールが表現されたワインを造るのであれば、畑とは関係のない糖分や濃縮果汁などのドサージュ添加を行わないノンドゼが一番ではないか?これへの反論は、ドサージュによって影が薄いテロワールを引き出すために効果があるとのこと。それを確かめるべく、0g/ℓから3.33g/ℓまでの六段階の同一ワインが6畑分用意されて、比較試飲が行われた。リューディーシリーズのワインは、シュブスタンスという銘柄同様ミニ・ソレラ方式と呼ばれるブレンディングが行われ、ヴィンテージの異なるワインが混ぜ合わせて熟成されるため、ヴィンテージ表記はないが、2008年のブドウがベースとなっているようだ。

詳細な結果は、記事を参照してもらうこととするが、Peter Liemは、0.67g/ℓ添加したものが最良とした銘柄が多く、アンセルムは、1.33g/ℓを最良としたものが多かったようだ。その他、各畑のブドウ樹の樹齢なども書かれ面白い。

記事は、https://secure.champagneguide.net/homeに掲載されている。有料サイトのため、契約が必要かもしれない。

シャンパーニュに添加するドサージュ量が減少傾向にある。甘さの少ないドライなものが消費者に好まれ、今やノンドゼは珍しくない。その一方で、ワインを熟成させて、糖分のメイラード反応に起因するナッツ香などを楽しむために糖分添加(ドサージュ)は必要との意見も根強い。セロスのワインの多くは、添加量は極めて低いがゼロではない。しかし、この微量の添加に確固とした裏付けがあったことをこの記事を通して知ることができた。このさじ加減の最適値が熟成期間に応じて変化するものなのか?個人的には興味が尽きないテーマである。

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冬のブドウ畑  北信

2015-02-08 | Viticulture

北信のブドウ畑が冬どういう状態なのか見たかったので、長野県のワイン会に参加するついでに、朝二番の新幹線にてひと足先に長野入りして畑を散策してきた。

新幹線の中で、山形で購入した長靴を忘れたことを悔やんだが、それは杞憂であった。日蔭で通行の少ないところに多少の残雪がある以外、長野県県北の上田市・東御市の道路に大した雪は積もっていなかった。昨冬、大雪にともなう災害で全国各地の除雪車が長野県に集まったが、もともと北信地区はそれほど雪のない土地のようで、降雪に対する備えもそれほど厳重にする必要はないのであろう。

ブドウ畑も、一面雪に覆われているものの積雪は数センチ。ふつうのウォーキングシューズで畑を歩いても雪が入ってくることはない。この程度の雪であれば、ブドウ樹を寝かして雪に埋める必要もないし、思いのままの仕立てをすることが可能である。

現在、畑は剪定途上。長い枝がついた剪定前の樹、剪定が終わった直後で切れ目を入れられた上側の枝がまだワイヤーに巻き付いたままのもの、枝が畝間に積み重ねられているところ、綺麗に片づけられた短い樹など様々。雪深い北海道や山形では不可能であろう。1月下旬から剪定ができるのであれば、ダブルプルーニング(12月に大枝を切り落とし、3月に新梢の手前まで切る剪定手法)は不要かもしれない。

メルシャンマリコヴィンヤード、ヴィラデスト、はすみふぁーむ、リュードヴァンの各畑を周ったが、ワイナリー訪問はパスした。全般的に樹間は狭く1.2m前後、畝間はもう少し広めで1.5~2.5メートルくらい?マリコヴィンヤードの畝間のみが広い。トラックなどが入ることを想定しているのであろうか。

 

1)マリコ(枕子)ヴィンヤード

マリコヴィンヤードは、標高が低めで斜面はなだらかな東向。南向き斜面のヴィラデストから眺めることができるので、てっきり北向き?と思っていたが、そうではない。上田の駅から車で10分程度の距離と至極便利なところにある。まだまだ若樹。畑の上部には、簡易気象観測器が置かれていた。さすが大手、畑の管理は入念である。

 

 

 

2)ヴィラデスト

マリコから車で20分程度、湯の丸山の方にぐんぐんと高度を上げて行くことになる。ここは標高600mと周りよりも高いところに位置していると聞いたことがある。それでも積雪はマリコと変わらない。若樹の根元には藁が巻き付けられ、樹を守っている。東御市のブドウ畑は南斜面に生えている。眼下に街がひろがり、周りに遮るものがない絶好のロケーション。

 

3)はすみふぁーむ

前回訪問時にトラックの荷台にのって連れて来てもらったので畑の場所がわかっていた。ワイナリーから尾根を越えたところにある。周りの黒いのは朝鮮人参の畑。畑の支柱は高く、幾重にもワイヤーが張られている。何に使うのだろうか?雨避け?積雪対策?聞いてみたい。

 

 

4)リュードヴァン

はすみふぁーむと道を挟んだ隣にリュードヴァンがある。ここは、ワイナリーのすぐ近くの斜面一帯がブドウ畑となっている。剪定はまだのようだ。筍のようなのは、藁にくるまれた昨秋植えられた苗樹のようである。

 

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料理研究家の方々とのディナー

2015-02-08 | Tasting Note

第3回目の企画は、イタリア料理の名手にご出張いただき、現地の味わいを生かしつつ、日本の旬のものを取り入れたディナーをいただきました。私の役割は、1週間前にいただいたメニューをもとにワインを合わせること。日頃ソムリエが考える視点に立つことができて、とても勉強になります。

拙訳書、「ブルゴーニュのグラン・クリュ」にも書かれていましたが、ペアリングを考えるときにどちらが主役であるかを考えることは緊要です。料理が主役の場合、ワインは引き立て役にならねばなりません。イタリア各地のローカル色が表れた料理のため、基本その地方のワインを選び、脇役であることを心得てグランヴァンは避けました。

料理はひと皿、ひと皿が格別でしたが、ワインペアリングは、良いのもあればまあまあのの組み合わせもあったとの印象です。反省点は次の通り。

1)しいたけとトリュフに思い切ってメルロ―を合わせたかった。

2)個人的な最近の流行り、バルベラはカリフォルニアであっても酸味が豊か。バルサミコ酢などに合わせて多用してもよかった。

3)魚介類中心ながら、赤を出しても料理とマッチする局面があった。

4)料理を引き立たせるために、ニュートラルなワインにするだけでは不十分。今回のマシャレリのトレッビアーノのように、料理と調和するワインの特徴にも気を使わなくてはならない。

 

 

以下、料理とそれに合わせたワイン

1.金柑と聖護院かぶのイタリア風千枚漬け 日本のかぶで金柑を包み、イタリアの味付けにした料理。

合わせたワイン→ Fidel Champagne Extra Brut 2008 Vouette & Sorbée (dégorgé le 08-12-10)

フランチャコルタがないのでシャンパンと。個人的には、柑橘系のほのかな香りが金柑とマッチしていた。

 

 

2.ジュニパーベリーのアクセントを効かせたサーモン、石臼挽きトウモロコシのグリッシーニ、パン(桜の花や葉を練りこんだものなど多彩で香ばしい)

           

合わせたワイン→ La Closerie Fac-simile Champage Extra Brut Rose 2008 Jérôme Prévost

サーブの関係上、1本目のシャンパンから2本目への移行がスムーズに行かなかったが、こちらのロゼが前菜2品とマッチしていたとの声もある。ジュニパーベリーとロゼにある若干の苦味がサーモンには合った。

 

3.アブルッツォのチンタセネーゼのコッパ 肉とチーズにうま味がある

合わせたワイン→ Marina Cvetic DOC Trebbiano d’Abruzo 2011 Masciarelli, Teramo, Abruzzo

水っぽいと言われたトレッビアーノからその素晴らしさを引き出したマシャレッリ。故マシャレッリは、奥様名前「マリーナ」を冠したワインを造る。ばリックを使用して熟成させているため、後味にバター香が長い余韻とともに残る。

 

4.トピナンブール(菊芋)のクレマ(泡)と水牛のモッツァレッラ カンパーニャ州

根菜の香りをほのかに伴う菊芋スープとともに味わうモッツァレラ。繊細な一皿。

合わせたワイン→ Plenio DOCG Castelli Di Jesi Verdichio Riserva 2009 Umani Ronchi, Marche

シャルドネに似てニュートラルな味わいのマルケ州のヴェルディキオ種。果実味を生かす優良生産者。

 

5.肉厚椎茸のフリット トリュフとともに

ダブル・キノコ!複雑な香りがまじり合うエレガントな料理。

 

合わせたワイン→ Capitel Croce IGT Veneto Bianco 2013 Anselmi, Verona, Venetoベネット州の白(ソアベに在りながらソアベを名乗らない)ガルガネーガ種

料理は素晴らしく、ワインも秀逸ながら今一歩。当日置き換わった食材のため間に合わなかったが、メルロ―(たとえばスーパータスカン)を合わせるべきだった。

 

6.堀川牛蒡のフリット コテキーノ(肉の脂などを擦り合わせたもの)の鋳込みとレンズ豆 エミリアロマーニャ州

合わせたワイン→ Cortaccio 1997 Villa Cafaggio 隣のトスカーナで造られた赤(カベルネ)。スーパータスカンと呼ばれる国際品種が用いられた初期のワイン。RP高得点。1997はイタリア優良年。ワインが若干強いかもしれないが、根菜、コテキーノと合う。

 

7.グリルに自家製アンチョビのバーニャカウダ ピエモンテ州

にんにくの一般的な使い方に反し、黒くなるまでボイル?して下味にしたアンチョビソース。濃厚だが酸味が効いている。

 

合わせたワイン→ Barbera Monarch Mine Vineyard 2008 Easton, Sierra Foothills, California

酸味強めのバルベラ種(ピエモンテ品種)で造られたカリフォルニアワイン。高地で栽培することで、高い酸度をキープしている。カリフォルニアのワイナリーで直接購入。

           

 

8.パスタ(魚介系) コルツェッティ(メダル型のパスタ)

馴染みのない、餃子の皮のような円形のパスタ。蟹などの旨みをパスタが包み込み、味が凝縮して美味。

 

合わせたワイン→ Meursault 2009 Philiipe Pacalet, Bourgogne ニュートラルで魚介に合うシャルドネ。ビオ好きなシェフに合わせて、ブルゴーニュ自然派の代表的造り手。バイオダイナミックス農法、自然酵母。野生的なニュアンスがある。

 

9.鯖・鱈・烏賊のボレート イタリア北部フリウリの海沿い魚料理 魚を強火で焼き付けた後に酢で煮る。オリーブオイルと酢で入荷した煮汁に焼き白ポレンタを浸しながら食べる フリウリベネチアジウーリア州

日本風に米酢をたっぷりと入れて造る。ソースが濃厚なため、酸味が心地よく感じられる。

合わせたワイン→ Ribolla Gialla IGT Venezia Giulia 2004 Radikon, Gorizia, Friuli-Venezia Giulia

フリウリの白 自然派 地元のリボッラジャッラ種 果皮を取らずに漬け込む古来の醸造方法による。亜硫酸無添加。

好みは分かれていたように思う。オレンジ色になったリボッラジャッラも健全で悪くはないが、酸味がマッチしたカリフォルニアのバルベラの方が個人的な好み。           

 

10.デザート チーズケーキ ととろみが斬新な食感となっていた。

ワインは合わせていない。

 

別に飲んだデザートワイン

Muskat Ottonel TBA #2 2000 Kracher, Burgenland, Austria

オーストリアの貴腐(Trocken Beeren Auslese=TBA)、ブドウはアロマティック品種マスカット・オットネル。甘さが新鮮で美味しい。

 

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