Vino Masa's Wine Blog

Weekly notable wine update.
毎週、気になったワインをアップデートします。

アラン・ロベール

2015-04-29 | Tasting Note

かつてBRUTAS誌のシャンパーニュ特集で一番人気となった銘柄がアラン・ロベールが造るトラディションとピエール・カロが造るクロ・ジャカン。人気を集めていたサロンやジャック・セロスを抑えての高評価となったため、これらのシャンパーニュは、日本の店頭から瞬く間に消え去った。それでも現存するクロ・ジャカンは、毎年シャンパーニュを造り続けているので、定期的に愛好家向けのショップに並ぶこともあり直近リリースされたものの価格は控えめだが、生産を止めてしまったアラン・ロベールのシャンパーニュが店頭に並ぶことはまずなく、たとえオークションに出されても天文学的な価格が付いている。

このアラン・ロベール、BRUTAS誌で取り上げられた銘柄、トラディションの他に弟分のレゼルブという銘柄も造っていたが、こちらも同様に市場からは消え去っている。知る限り最後にリリースされたヴィンテージは、いずれの銘柄も1990年。トラディションを造るブドウは樹齢40年のシャルドネ、レゼルヴの樹齢は30年のシャルドネ、いずれもブランド・ブランが造られる。

1985年のトラディション(マグナム)が、都内の某レストランのワインリストに掲載されていたので、すかさずキープ。保有している1990年のレゼルブ(マグナム)とともに開けてみた。いずれも、綺麗に熟成したことを示すヘーゼルナッツやアーモンドの香りにほのかなはちみつの香りが合わさり、妖艶さにあふれた芳香を放ちつつも、豊か酸とミネラル感が対局となる硬派なバランスとなっている。酸化のニュアンスは少ない。熟成期間が長いためか、樹齢が長いためか複雑味と濃厚さは強く、偉大なワインであることに疑問の余地はない。似たニュアンスではあるものの1985の方が全てのキーがより強く奏でられた荘厳なトーンとの印象を受けた。

このアラン・ロベールが引退し、当家でワインは造られていない。その畑は現在どうなっているのかは気になるところである。ルイ・ロデレール社とKRUG社(こちらはクロ・ド・メニルの畑となった)との記事を読んだことはあるが確認できているわけではない。

後半はおまけワイン。セロスのエクスキュースは、数週間後の予行演習。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

植樹

2015-04-29 | Wine Making

お恥ずかしながら、ブドウ樹の植樹経験がなかった。岩手県釜石市のNPOが手掛けるワイン園の開設支援に参加することができたので、それをベースにレポート。

 

準備

畑はまず整地し、畝の配列を決めなくてはならない。その畝の位置に沿ってワイヤーを張る。このワイヤーの下に等間隔にブドウ樹を植えて行く。

整地をすることは言うに及ばず、樹列をどの方向に向けるかは最初に決めた方式を変えることは難しい。斜面であれば斜面を下るように配置するのか、等高線に沿って配置するのかは、水や土砂の流れに影響する。ブルゴーニュでは斜面を下るように配置されているところが殆どだが、等高線に沿った配置もラ・ロマネやクロ・ド・タールといった銘醸畑で採用されている。この場合、保水性が高まる一方、土砂の流出が防ぎやすくなる。ここは平らに整地したので、向きは意味があるか不明ながら、元々の斜面を下るように配置されている。

畝間、樹間の決定は、樹の樹勢に基づいて行われなくてはならない。樹勢が強い土地では間隔を広げて根の競合を防ぐ必要がある。UC Davisの授業では、ワインの質と畝間、樹間に関係はないと教えている。樹勢が強ければ大木に育て、根を十分に広げさせ、収量は樹に生るブドウの芽の数、房の数でコントロールすべきとしている。それでもなお、ブルゴーニュでは狭い畝間、樹間(1m×1m)にこだわっている。根が競合すればそれだけ地下深く伸びてテロワールを反映しやすくなると考えているようだ。畝間は、作業をする上でも重要な要素となる。これが1.9mを切ると、軽トラックが進入することは難しく、原則手作業を選んだことになる。ここの樹間は1m、畝間は2m。

苗木の選定では、土壌の疫病に対応するための台木、収穫を目指す品種の2種類を選ぶ必要がある。ブドウ樹の根に寄生するフィロキセラの耐性を有するアメリカブドウの台木を用いることで台木の研究は1800年代後半に発展したが、その後もさらに研究は進み、他の線虫(ネマトード)に対応する台木、石灰質土壌の成分に応じて親和性のある台木、樹勢に応じた台木などが生まれ、用途に応じて用いられている。ここでは、5BB、5TC、SO4といった台木が用いられている。ボランティアでコンサルティングをされている方のコメントでは、5BBは樹勢が強く棚栽培に用いられるため、垣根仕立てを採用するこのワイナリーでは、今後のコントロールが難しくなるとのこと。ただ、苗木屋のキャパシティーがあまりない実情では選択肢が限られるので、なかなか望みのものを用意してもらえないそうだ。

 

植樹法

植える場所に深さ30㎝、直径20㎝程度の穴を掘る。穴の底にお椀一杯分の土を盛り、そこに植樹する樹の根を置く。土を10㎝程度かぶせてから十分に水をやり、さらに穴を埋めてから水をやる。これで終わりだが、樹がワイヤーの真下に来ないと後々整枝するときにいびつになってしまうので注意が必要となる。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボンヌ・マール

2015-04-18 | ワイナリー訪問記

ボンヌ・マールを直訳すると「良き母」となるらしい。この「母」がある聖職者を指すのか、大地の恵みの根源を表すといった諸説あるそうだが、「母」の意味は使い勝手が良い。「母の日」に合わせても、お母様を亡くされた方を慰めるための贈り物としても。

パワーを感じるヴォーヌ・ロマネ村のワインに比べてシャンボール・ミュジニィ村のワインは繊細と言われている。その可憐さが人気を惹き、この村のワインはとてつもない値がつく。村の南に位置するミュジニやレ・ザムルーズはその筆頭で、ヴォギュエやルーミエのものは10万円を下らず、一般ワイン愛好家に手が届くものではない。ひと月の飲み代を投入して何とか買えるのがボンヌ・マール。ブルゴーニュに数時間足を踏み入れるチャンスを得たのでこの畑を探求してみた。

シャンボール村の北側とモレ・サン・ドニ村にまたがるグラン・クリュ、ボンヌ・マールは、2つのタイプの土壌で構成されている。拙訳書「ブルゴーニュのグラン・クリュ」によると、この畑には二つのテロワールが存在しうるとか。斜面下部の赤褐色土(テール・ルージュ)と斜面上部の白色土(テール・ブラン)の2つで、これを分かつのが斜面の途中を横切る農道の辺りだそうだ。これが可視的な土なのか、そうでないのか見るためにブルゴーニュのボンヌ・マールへと向かった。

斜面下部を眺めた写真を見ると、確かに土壌は赤褐色をしている。鉄分を多くふくむのであろうか。

斜面上部は確かに白っぽい。石灰質の含有量が高いのであろうか?

 

実際のところ、農道は斜面に水平ではないためであろうか、土の色が道の左右で完全に赤と白に分かれるわけではないが、それでも大まかには斜面上部と下部に顕著な違いがあるといえそうだ。

両方の区画を有するルーミエなどの生産者を訪れ、それぞれの区画のキュヴェを飲ませてもらう以外2つの区画の違いを知ることはできないため一般ワイン愛好家がこれを試すチャンスはない。それでも、両方の区画を持つルーミエとテール・ルージュのみを所有するヴォギュエのボンヌ・マールを比較試飲すればその違いを知るヒントが隠されているかもしれない。

レミントン・ノーマンは、テール・ブランの土壌はボンヌマールの南に続く一級畑レ・フュエやレ・クラとの類似性を指摘している。これらの一級畑とテール・ルージュのヴォギュエを比べてみるのもインスピエレーションを与えてくれるかもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする