Vino Masa's Wine Blog

Weekly notable wine update.
毎週、気になったワインをアップデートします。

PD resistant wine grapes

2014-12-21 | Viticulture

アメリカ南部のブドウ栽培者が恐れるピアス病(Pierce Disease、略してPD)は、シャープシューターと呼ばれるバッタの一種が媒介するバクテリアによって引き起こされるもので、罹患するとブドウが枯れ死する。シャープシューターは、アメリカ合衆国南部に広く生息し、近年カリフォルニア南部のテメキュラ・ヴァレーにも現れ、甚大な被害をもたらしている。カリフォルニア州政府は、この解決に全面的な援助を行っている。

その中で注目を集めているのが、UC Davis の教授、Dr. Andy Walkerが行っているPD耐性のあるブドウ樹のハイブリッドの育成。当初は、ムスカダイン属のrotndifliaとVitis Viniferaのハイブリッドに注目していたが、遺伝子の倍数対の構造が異なり難航したようだ。最近発表された研究結果では、より遺伝子特性の似ているPD耐性ブドウ、Vitis Arizonicaに対してVitis Viniferaを交配させたハイブリッドを使っている。(「交配」は同じ種どうしの場合、異種どうしの場合は「交雑」と言われるそうだが、馴染みが薄いのでここでは「交配」で表現を統一している)

世論の目が厳しい遺伝子組み換えは行わず、PD耐性が保持されていることを確認しながら交配を繰り返し、現存する品種に近いブドウ品種の選別を目指している。Vitis ArizonicaとVitis Viniferaを一回交配させると、Vitis Viniferaの構成比率は50%だが、生まれたハイブリッド種とVitis Viniferaをさらに交配させると、Vitis Viniferaの構成比率は75%となる。このVitis Viniferaとの交配を繰り返すことでVitis Viniferaの構成比率は87%、94%と上昇し、現在では97%のVitis Viniferaの構成比率のハイブリッド種が生まれ、いずれもPD耐性があることが確認されている。

ここで利用されているVitis Viniferaの品種は、カベルネ、シャルドネ、プティ・シラー、ジンファンデル。台木にもピアス耐性のあるものを接木している。Vitis Viniferaの構成比率が低いハイブリッド種は、飲むに堪えなかったようだが、94%、97%はパネル・テイスティングの結果も良好とのこと。実用化の日も近い。Silvarado及びCaymusの畑で数百本のハイブリッド・ブドウ樹の栽培が開始されている。

目下の関心事のひとつは、命名を含めたマーケティング方法。PDとの戦いの終焉も近い。その一方でDr. Andy Walkerが目指すものは、世界的なブドウ樹の疫病でもある、うどん粉病(Powderly Mildew、通称PM)対策。PM耐性のあるブドウ樹もあるので、ハイブリッドとして耐性を取り込もうとの考え。

 

 

2014年12月2日に開催された、UC Davis の講座「Crrent Issues in Vineyard Health」におけるUC Davis の教授、Dr. Andy Walkerの講座より。

同様の内容が「Wines and Vines」誌にも掲載されているのでリンクも掲載

http://www.winesandvines.com/template.cfm?section=news&content=140843

 

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10Rワイン

2014-12-19 | ワイナリー訪問記

北海道の岩見沢近郊に知る人ぞ知る「10Rワイン」(トアールと読む)がある。

このワイナリーを経営し、自らワインを造るBruce Gatlove氏は、UC Davisを卒業後、ワイン造りを指導するために栃木県のココファームに招聘された。短期間のつもりが滞在日数が延び、日本に居着いてしまった。ココファームの経営に携わる一方、自らのワインを造るべく北海道の岩見沢市の隣、栗沢町にワイナリーを立ち上げた。

訪問日(12月8日)の前日は吹雪に見舞われ、札幌から岩見沢まで余すところなく銀世界に包まれていた。幻想的な風景の中をタクシーで進むのだが、このワイナリーには看板もなければサイトに地図も掲載されていない。10Rワインに電話をかけて、ナビゲーションをしてもらいやっとたどり着ける。したがってワイナリーには、テイスティングルームなどの洒落た設備はなく、事務所と醸造設備があるだけである。「観光ワイン」とは一線を画すという強いメッセージを感ぜずにはいられない。一般visitorを受け入れないカリフォルニアのカルトワインやフランスのガレージワイナリーを彷彿させる。

Bruceのワインに対するこだわりは、場所の選定から始まっている。当初は、海外でのワイン造りも考えていたが、日本の長野・山形・北海道にポテンシャルを感じたそうだ。なぜ北海道か?ここであれば平地でワインを造れる、山形だと標高400㍍は必要で、長野であれば標高700㍍でなければ目指すワインができないとの意見を拝聴した。特に北海道では、積雪が多いことがヴィニフェラワインの生育に重要で、初冬にまとまった雪があれば枝先まで雪に埋めることで、風雪による気温の低下に伴うブドウ樹の壊死から守れるそうである。山を隔てた十勝地方は、雪が少ないためワイン樹が風雪にさらされ、ワイン樹が死んでしまうそうだ。確かに、大学では、マイナス20~25℃でブドウ樹は死ぬと習った。十勝では、耐寒性に限界があるヴィニフェラのブドウ樹を諦め、ヴィダルといった寒冷地用のブドウ樹を用いるとのこと。それにしても、マイナス40℃に達する旭川にそう遠くない。正確には名寄が最北のワイナリーであるそうだが、岩見沢はまさに日本のブドウ生育の北限との印象を受けた。

ブドウは斜めに仕立てるそうだ。これにより、積雪が少なくてもブドウ樹を雪に埋めやすいそうだ。北海道の余市周辺で最初に考案され、広く使われるようになった仕立て方らしい。個人的には、そんな不格好な仕立てで良いブドウが実るか疑問を感じる。VSP仕立てで上に樹を伸ばし、高さを抑える方が真っ当なブドウ樹に育つと思うのだが。Bruceの意見は、「そうかもしれない。やってみるといいよ。」試すしかないのかも。

剪定方法は、先進的な手法が採用されている。Double Pruningと呼ばれる、年2回の剪定を行っている。1回目は収穫後に行われ、長く伸びた枝を余裕をもって切り、2日目は春先に行われ、残す新芽のすぐ上を切り落とす。1回目は雪による枝折れ防止も兼ねている。日本の場合、除葉も必要で実践しているとのこと。

防かび剤、殺虫剤を利用していることについての意見は率直だった。日本の高い湿度で防カビ剤なしは厳しいとの意見。殺虫剤も使用を止める方向だが、収穫できなくなると元も子もないので、入念な観察と調整を続けているそうだ。私がジャックセロスを2012年に訪問した際、雹害とベト病に見舞われてブドウ樹が壊滅しそうになった時、農薬を用いたと説明してくれた。アンセルムが「自分の子供が死な時に親であれば、可能性のある投薬を認めるのと同じだ。」と説いていたことをBruceに伝えたところ、激しく同感してくれた。

自分のワイナリーのため、収穫に対するこだわりは強い。日本のワイナリーは、フランスのカレンダーを真似て早く収穫したがる。霜が降りる直前まで待って糖度を上げるべきだと言うことがBruceの意見。日本のブドウは糖度が低く青臭いのは、収穫が早すぎるということはその通りとも思う。幸いにして北海道を通過する台風が少ないのでそれができるとのコメントもごもっともで、そこが北海道にポテンシャルがある論拠の一つなのであろう。

寒い場所のため、Stuck Fermentationは大きな問題のようだ。いくつかの桶では、発酵が止まったままとのこと。それでも、温度を上げて発酵を促すこともせず、そのままにしている。来年のワインの醸造時に発酵中のワインを入れてスタートさせたいと考えているそうだ。

SO2の添加量についての話は興味深かった。UC Davisでは、pHの値に応じて必要となるSO2の量が変化することを教えられる。この理論に異論はないが、推奨SO2添加量については、安全性を優先しすぎた値とBruceは考えている。かつてUC Davisのフィールドトレーニングで同席したBryant Familyの醸造責任者でもあるToddも同意見で、推奨値よりもかなり低い添加量をBryant Familyでは添加しているとのこと。SO2添加量もpHに応じて一律に決まるものではなく、さまざまな戦略がありそうだ。

高い志とともに、栽培・醸造に関わる設備の調達方法などのpracticalなアドバイスと全てにわたり、多くを学び刺激を受けた。

 

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月山ワイン訪問 & 地元インタビュー

2014-12-07 | Essay

ワインツアー庄内versionは、アフォリズム形式です。少しは前に進めた気がします。

 

鶴岡市役所、農業委員会の方々から聞いたこと

黄桃の佐藤錦は、かつて朝日村(現在の鶴岡市朝日地区)で造られていた品種を山形県の内陸部に持って行って成功したもの。もともと庄内は、柿や黄桃などの果物も盛んであった。新潟と秋田に挟まれた土地のため、両地域で米作が盛んであったため米にウエイトを置きすぎて、果実をないがしろにしてしまった。

庄内は絹の産地でもあった。養蚕農家はカイコのエサとなる桑畑を所有しているが、良い桑の葉は水はけの良いヒルサイドの土地にできる。カイコを育てる桑畑には有機農法が必須で、近所で農薬を撒かれるとカイコは育たない。

東側に出羽山地がある庄内地方の斜面は、基本的に西向き。ただし、月山新道の道沿いにあたる渓谷には南向きや東向の斜面がある。

夏場の晴天日数が日本で最も多い地域は、新潟平野と庄内平野。

借地と買い取りでは、農業委員会の窓口が異なる。個人で営むか、会社で経営するかによっても手続きは異なってくる。買い取りの場合、責任者の居住は必要。

継ぎ手がいない農家は多く、耕作放棄地もある。所定の条件が揃えば農業を始めることはwelcomeのようだ。

 

月山ワインで聞いたこと

月山ワインの経営主体は、庄内たがわ農協。組合員である60数戸の農家で栽培されたブドウの醸造を行うとともに、栽培の指導を行う。

農協および組合員農家の収益が第一目的となる。

主力のやまぶどう、山ソーヴィニョンのほか、カベルネ、ソヴィニョンブラン、ゲヴェルツ、ピノグリ、セイベルのワインを造っている。

やまぶどうを含む全てのブドウ樹は接木されている。台木は55B、若しくは、3309。やまぶどうにフィロキセラ耐性があるかは不明。

欧州系品種は、収穫を迎えるまでレインカットを行っている。これは、サイドレスのビニールハウスのようなもの。赤湯などでも用いられている。

糖度は20~22度まで上がる。栽培・収穫の決定は各農家が行い、ワイナリーに持ち込む。農家を指導はするが、コントロールはできない。

欧州系品種の仕立て方は、Cordon Doubleが主流。樹勢が強いので、樹間はかなり広く取るよう指導している。山ソーヴィニョンの樹間は5㍍にもなる。

最大の病害はベト病。ボルドー液の散布は必要。

鳥害も大きい。良いブドウの実は鳥に食べられて困る。

冬の雪の対策は、樹を斜め向きに仕立て、ある程度の降雪時に雪に埋める。棒状のVSPでも耐えられるかとの質問に対する答えは不知。ここは豪雪地帯なので、棚仕立てでは冬を越せない。

 

米作農家の方から聞いたこと

最良の水は雪解け水。庄内平野は、この雪解け水が豊富で米作が発展した。庄内平野で美味い米が造られるのは、近くの山から流れ出す水(たとえば鶴岡市の場合、赤川)であって、最上川ではない。また、盆地の底は水が澱み、最高の米はできない。美味しんぼ推奨の余目は、最上川の水を使っている。

友人のブドウ農家の一番の関心事は水捌け。そのブドウ農家がぼやいていたのは、「ワイナリー訪問者の殆どは仕立て方だけに注目しているが、あれではブドウの良し悪しはわからない。」

かつて桑畑があった土地の周辺でブルーベリー栽培が最近成功を収めている。

酒田市の北、遊佐も果実栽培のポテンシャルがあるとのうわさがある。

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Vino Noceto & Renwood Winery

2014-12-07 | ワイナリー訪問記

Amadore Countyのワイン巡りレポート最終は、Vino NocetoとRenwood。

Vino Noechotoは、Turleyで紹介されたワイナリー。イタリア・品種に特化している。なぜか?6月頃から雨が全く降らない地中海性気候、特に熱さが続く中部イタリアに近いとの答え。山がちな土地であることも相似点があるとのこと。ローヌレンジャーは、すでに多くの人がチャレンジしているので、差別化をはかりたかったとの率直なコメントもしてくれた。広くイタリア品種を栽培し、北イタリアのPinot Grigio、Barbera、中部イタリアのSangiovese、南イタリアのZinfandel(≒Primitivo)がリリースされている。Sangioveseからは3種類のワインを造り、畑のロケーションによる微妙な違いが楽しめる。Reservaはイタリアのキャンティを、Hill Sideは、イタリアのブルネロをイメージして造るという。Zinfandelも印象的かつ華やかに造られている。赤系果実の芳香が鮮やかで、笑みがこぼれてしまう。その表情を見て、「みんなZinfandelがベストという顔をする。」と少しがっかりした様子。Frivoloという銘柄は、マスカット種で造るスパークリング。残糖もあり、アルコール度数は7%程度。先月飲んだクレレット・ディーに似ている。マリアージュにも力を入れ、イタリア品種ワインは、ドライトマトとマリアージュするとのこと。確かに、トマトの甘みとワインの果実感は共振すると言えそうだ。

ワインについて話してくれたのは、このファミリーの一人でワインメーカーを務める一人。出身もUC Davis、学校のことで話が弾む。彼女によると、カリフォルニアのワイナリーにおけるUC Davis卒業生は、卒業後も皆が大学に集まって刺激し合えるところに良さがある、とのこと。「今回のextension programに参加するか?」と聞いたところ、「最近は行っていない。話を聞いているとまた行きたくなった。」と良い刺激を受け合ったようだった。

 

Renwoodは、Zinfandelに力を入れるワイナリー。各施設もそこそこの規模があり、Wine Advocateでもそこそこの評価を得ている。Zinfandelは、エントリーレベルから、スーパープレミアムまで行く種類ものワインが造られている。プレミアムレベルは、畑ごとに銘柄が分かれていて、味わいにも違いが出ている。Grand Wrenは、最上位銘柄。重厚な口当たりだが閉じ気味。Fiddletownは重くなく、香りも繊細かつ鮮やか。Petit Syrah種で造られるワインは、パワフルながら果実感が豊か。Proclamationは、Sauvignon Blancで造られたスパークリングワイン。ハーバルな香りがユニーク。ポート(portと表記しているが、いいのかな?ヨーロッパには輸出しないのかな?)にも力を入れている。Colheitaは、ドライフルーツとチョコレートのニュアンスがマッチした上品な造り。ワイナリーの周りは綺麗に整備されてる。巨大な発酵タンクの周りは中途半端な覆いだけ。雨が少ないからか、外気の気温が適度と思ってのことか。 

 

Noceto テイスティングしたワイン

 

Renwood テイスティングしたワインとワイナリーの畑・施設のスナップショット

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UC Davis "Institute for Wine and Food Science" と仕立て(trellis)

2014-12-04 | Viticulture

Davisのキャンパスに南側からアプローチすると、最初に目にする建物には「Robert Mondavi Institute for Wine and Food Science」と書かれている。Robert Mondaviがワイン研究に果たした役割の大きさを感じる。

A) 全体のマップ 左側のSustainable Winery Buildingはすでに存在している。RMI Northがワイン関係の研究室や研究施設のようだ。

B) RMI Northの中 ワインの栽培・醸造の研究施設入口 ここまでは通りがかりの教授?に入れてもらえた。

C) ここは左側がビールの実験施設、右側がワインの講義棟のようだ

D) 出来上がっているSustainable Winery Building

E) アロマパレットや他の植物の解説がある。写真はワインについて。

 

F) Teaching Vineyard (ブドウ畑)

この研究施設の前にはTeaching Vineyardと呼ばれる畑が広がっている。遮るものがないので中を歩いてみると、一般のブドウ畑とは異なり、樹列ごとに異なる仕立て方の畝が並ぶ。一応解説を加えてみた。枠組みから判定できるLyreはそうであろうが、他は枠組みだけでは判別がつかないので個人的な意見。仕立て、Tの字に似た枠組みを用いたT-Top仕立て、真っ直ぐ上向きに生やすVertical Shooting Position(VSP)、垂直に伸びた幹が途中で水平方向の2方向に分かれるコルドン仕立て、枝葉を下に垂らすWye、枝葉を上下に伸ばすカーテン(Scott HenriやSmart Dyson)などが一列ごと交互に設けられている。UC Davis Extension Courseの教科書の仕立て方の写真の一部はここの樹列を撮影したものであった。脇には、恐らくZinfandelのための株仕立てで造られた樹のエリアもある。

  

1) コルドン

2)T-top

3) 恐らくWye

4) Lyre

 

5) 左はLyre、右は恐らくVSP

6)T-top?

7) VSP?

UC

8) 左:コルドン、右:T-Top

9) 左遠景はLyre、左手前と右は下にのみ垂れているのでWye?、右は上にもカーテンができているのでScott HenriかSmart Dyson ?

 

 

10) 株仕立て 恐らくジンファンデル

 

11) 赤い葉なのでアリカンテ?葉の着色が均一なのでウィルスではない。

 

G) これらの施設とはすこし離れた広場の中央にRobert & Margaret Mondavi Centerがある。この大学にとってMondavi夫妻がいかに重要だったかがわかる。

偶然ではあるが、地元のメディアにもMondaviの寄付を含めた、大学のWine Makingについての研究史が取り上げられていたのでリンクを貼付しておく。

http://www.davisenterprise.com/local-news/sunday-best/uc-davis-and-wine-the-kevin-bacon-of-the-vineyards/

 

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FPS (Foundation of Plant Service)

2014-12-02 | Essay

UC Davis Foundation of Plant Service(=FPS)という大学の付属機関がある。植物のDNA鑑定から、植物材料(=plant material)の保存・管理を行っている。クローンごとに区分管理を行い、注文に応じて販売もしてくれる。FPSは、ピノ・ノワールやシャルドネといったメジャー品種の多くのクローンを管理しており、サイトのリンクには一覧が掲載されている。ブドウを植えるにあたり、何種類ものクローンを植えて多様性のある畑にしたいと考えているが、ゼロからはじめるとなると出所の明らかなものを規則性を持って植えたいものである。多くの植物材料を保有・販売をしてくれるのはアメリカのFPSと、フランスの機関のようで、近い将来お世話になろうとおもっている。ただ、FPSのリストには、秀逸と言われるピノ・ノワール667のクローンはあるが、777のクローンはない。FPSはニューズレターを定期的に刊行し、研究の成果を公表している。直近の内容はクロアチアのブドウ品種の分類、マルベックのクローンの分類などである。

話しを聞くと、海外向けの販売においては、一種類あたり$2000のコストを要するとのこと。ピノとシャルドネを各5種類購入すると、今の為替で240万円!これを高いと考えるかどうか。かつて日本にも輸出したことがあるとのこと。UC Davis出身の某氏と思われるが、考える人は考えている。因みに、日本に簡単に持って来れるわけではない。日本の検疫には、温水でのnematodeの検査(これは数日間)と、圃場栽培でのウィルスの検査(春から一年間)を要する。全量検査が義務付けられ、検疫所の圃場の制約から一回の輸入で50~100個体の輸入が限度とのこと。1年少々を経て得た枝をさらに繁殖させて相当量の苗木を造るとなると2年がかりということになる。

FPSのリンク:http://fpms.ucdavis.edu/index.html

カバー写真の看板の名称が異なるのは、別の研究機関のものを撮影したため?次の写真は、FPSが在る建物。下のブドウ畑の写真は、FPSの圃場と思われる。

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Terre Rouge & Wilderotter Vineyard

2014-12-02 | ワイナリー訪問記

アマドアで、秀逸なシラーを造る生産者がいる。そのTerre Rougeに前日メールをしたところ、ワインメーカーは休暇で不在だがテイスティングは開いているとのこと。ナパに比べると知名度も名声も低いためか、どの生産者もテイスティングを積極的に行っている。ここは、シラーがうまい。ある程度熟成させてからテイスティング・販売を行っているためかスパイシーな果実味と熟成のニュアンスが入りまじって複雑な印象が強く、パーカーの評価以上の味わい。良いワインは熟成させるべきである。いくつかの標高の異なる畑には主にシラーを植え、味わいに違いが生じている。一番右のシラーはその名も「High Slope」、繊細で酸が豊かなワインである。なぜシラーを選んだかについては答えがなく、錦織の話に終始してしまった。Zinfandelも7樹齢70年を超すものから造ったワインをリリースしているとのこと。 

訪問先をひとつ飛ばしてWilderotterは、スパークリングで人気を博しているとのこと。綺麗にできていた。そのほか、テンプラニーリョなどを含めイタリアとスペイン品種に特化している。その前に回った3軒の印象が強く、たくさん試飲させてもらった赤はあまり記憶にない。

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Turley

2014-12-01 | ワイナリー訪問記

UC Davisの単発講座受講を決めたのが出発の5日前。しかも滞在3日間のうち、ワイナリー訪問は1日。航空券の手配にてこずったり、会社の宿泊付会議に参加するなど準備ゼロで渡米することになったのでナパやソノマ、モントレーなど有名ワイナリー訪問はあきらめ、セントラルコースト北部のアマドアカウンティに照準を合わせた。昨夜、eRobertParkerのサイトで、「Lodi」「Sierra Foothills」を検索キーとして高評価ワイナリーを拾い、まずはZinfandelで有名なTurleyへ。

Turleyのテイスティングルームは、パソ・ロブレスとアマドアの2か所にある。馴染みのあるワインレッドの横帯状ラベルは上位クラスのTurleyに貼付されるようで、多くはパソ・ロブレスの畑のもの。アマドアの畑のプレミアムワインも販売されてはいるが、プレミアムワインテイスティングは、パソ・ロブレスにあるUeberroth vineyardのジンファンデル2002・2003・2004の水平。パーカ94点、93点の2002年、2004年は赤系の果実香が広がる華やかなワイン。2003年は控えめではあるがこれも上品なワイン。いずれも10年の熟成を経て熟成感が出て複雑さが表れているが、依然として果実のアロマが強いので、アルコール度数の高さ(16%)を気にせずに飲める。Turleyはナパにもカベルネの畑を持っている。こちらは、重厚感のあるワイン。アマドアに来た甲斐がないことは、Porkervilleラベルのワインで解消された。このシリーズは、アマドアで造られたレギュラークラスのワイン。いずれも軽快に造られて飲みやすい。特に北イタリアのバルベラ種を持ちたワインは、酸が豊かで心地よい。

そういえば、アマドアはジンファンデルとともにイタリアの品種に力を入れているワイナリーが多いことを見聞きしたことがある。ジンファンデルも南イタリアで栽培されているプレミティーヴォとほぼ同じ品種であることを考えると、アマドア全体でイタリア品種を推しているのであろうか。ブショネを指摘したこと、UC Davisの通信講座を受講したことなどから話が盛り上がったついでに、イタリア品種に傾倒している理由を聞いてみたが大した答えはなかった。しかし、イタリア品種で成功しているワイナリーの紹介を受けたのでそこで再チャレンジ。

おもしろいワイン抽出機?を使用していた。コルクを抜栓せずにコルク内に管を通し、注いだワインと同体積のアルゴンガスを瓶内に戻す機器がある。管は細く抜き取ることも可能で、抜いた後の穴はコルクの弾力によって塞がり、逆さにしてもワインが漏れることはない。300ドルと高価だが、ワインと合わせて購入してしまった。

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