もちろん家計は火の車

読書と映画、クルマにゲーム……いろんなものを愛しつつ、怠惰な日常を送るオッサンのつぶやき。

最高の“後味の悪さ”=J・ケッチャム『オフシーズン』

2005年08月03日 | 
  夏向きの作品ということで、ケッチャムの小説などを読んでみた。ケッチャムといえば、いまごろ書店には新刊の『黒い夏』が並んでいるが、今回読んだのは『オフシーズン』(扶桑社ミステリー)。添付の写真の通り、本のカバーは「少年とカラス」を配しただけの、きわめてシンプルなものだが、この、静かでどこかポエティックなビジュアルと本の内容に、ほとんど(というか、まったく)関係が無いというのがスゴイ(笑)。本書のブックデザイナーは、ある種の天才である。
  この『オフシーズン』という作品、いったいどういう内容なのか? 本来なら“ネタバレ”とか、そういうのを控えて説明したいのだが、とにかく「ストレート一球勝負」の作品なので、ストーリーについて一言触れただけで、ほとんど「内容のすべてを言い尽くしたことになってしまう」という……(笑)。
  そこをあえて、端的に表現してしまおう。ネタバレとかがキライな人は、この先は読まないでいいです(笑)。いいですか? じゃ、書きます。本書『オフシーズン』は、「ひなびたリゾート地を訪れた避暑客6人と、地元に隠れ潜む食人鬼一族がガチンコバトルを繰り広げる物語」であ~る! ……もうね、最初から最後まで、ただひたすら“それだけ”。「ひなびた地方に隠れ潜む食人一族」といえば、これはもうソニー・ビーン一族の伝承がモデルになってるのは明らかなワケだが、現代のアメリカのメイン州の片隅に、実際にそういう一族がいたと。でもって、そいつらと遭遇した避暑客、そして地元の警察当局がまる一晩、血みどろの死闘を展開する……と、そういうお話。本にある種の“文学性”を求める向きには絶対勧められないが、痛快な娯楽として楽しむ分には、なかなかのスグレモノと言えよう。広大な国土をもつアメリカにして、やっとこ成立するファンタジーのような物語。でも、ジェットコースター並みの疾走感で、最後まで一気に読者を引っ張っていくパワーには脱帽である。
  本書の見どころといえば、なんといっても情け容赦のないバイオレンス描写に尽きるが、一番おもしろいのが、ケッチャム自身の手による“あとがき”。“あとがき”部分で、ケッチャムは、新刊当時に『オフシーズン』がいかにボロカスに叩かれたか、そして本を世に出すまでに、出版サイドとの交渉によって、いかにして「作品が骨抜きにされていったか」を、ストレートに書きつづっている。この“恨み節”が、なかなかに読ませる(笑)。ちなみに、日本で翻訳出版されているバージョンは、ケッチャムが本来出したかったバージョンに準拠しているので、好事家のみなさんも安心である(笑)。
  ところで……。私は以前、仕事関係でつるんだある人(女性)から「○○さん(←私の名前)って、ケッチャムとかが好きそうですよね?」と言われたことがあるのだが……あれはいったい、どういう意味だったのか? ま、あまり深く考えないようにしておくか……。
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