もちろん家計は火の車

読書と映画、クルマにゲーム……いろんなものを愛しつつ、怠惰な日常を送るオッサンのつぶやき。

中世の闇&財宝伝説……期待の一冊『消えた錬金術師』でしたが……。

2010年07月05日 | 

昨日に続いて、“最近読んだ本”シリーズの第2弾である。
今回のお題は『消えた錬金術師 -レンヌ・ル・シャトーの秘密-』
イギリスでベストセラーになったという本書は、
中世から伝わる歴史ミステリーに“冒険アクション”風味をトッピングした作品。
その意味では、かの『ダ・ヴィンチ・コード』を彷彿とさせる作風なのだが、
ま、そこまで言うと「ちょっと誉めすぎ」って感が、無きにしもあらず。
(っていうか「かなり誉めすぎ」ってことになりそうだなぁ……。
残念ながら本書は、あまりオススメとはいえない出来なのであった・笑)。


<『消えた錬金術師』あらすじ>
本作の主人公=ベン・ホープは、もと「SAS(英陸軍特殊空挺部隊)兵士」という
経歴を持つプロフェッショナル。現在は、大金持ちの依頼を受け
各種トラブルを解決するエージェントとして生計を立てつつ、
海と孤独、そして酒だけを友とする日々を送っている。

そんな彼のもとに、年老いた大富豪からある依頼が届く。
中世に活躍した伝説の錬金術師・フルカネリが書いた手稿を「探し出してほしい」……。
しかし、不老不死の霊薬“エリクサー”の製法が記された古文書を探しているのは、
彼だけではなかった。キリスト教会の闇で暗躍してきたある“組織”が、
フルカネリの手稿を手に入れるべく、ホープの前に立ち塞がったのだ。
伝説の錬金術師が残した暗号、歴史の闇に隠された財宝伝説、
そして、飛び交う銃弾……。手に汗握る冒険が、いま始まる!!


とまぁ、だいたい上記のようなストーリーで、ツカミはなかなかのものである。
特に、中世の南フランスに存在したキリスト教の異端“カタリ派”の謎をめぐる下りは、
誰もが「なんとな~く」判ったような気になっている、中世暗黒時代のダークサイド
(なんたって、あのナチ・ドイツも真っ青の大虐殺に、かつて“ヴァチカン”が
手を染めていたというんだから……宗教コワス!)を見せつけられる感じで、
好事家ならずとも(ちょっぴり暗い)興味をかき立てられる。
(「残虐な話」とか「悲惨な史実」とかに“興味津々”……これは、人間の一面の真実であ~る!)。

このように、ウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を思わせるゴシック風の重厚な魅力に加え、
一般に「トンデモ視」されている“錬金術”と現代の最先端科学の「意外な関係」を
ストーリーに取り入れるなど、物語的な“くすぐり”もバッチリOK! な感じだ。

そう、OKな感じなんだけど……。
本書の場合、大がかりな前振りで期待を煽るだけ煽っておいて、
その後の展開が、実は「かなりお粗末な感じ」だったりするのであった……(!)。
そもそも、主人公の前に立ち塞がるキリスト教原理主義の
過激派組織“神の剣(グラディウス・ドミニ)”自体が、
いかにも「おそるべき力を持っていそう」……に見えて、
なんと、主人公一人にあっさり壊滅させられちゃう始末w。
いくらなんでも、ヨーロッパ全域を牛耳る闇の組織が、
「たった一人の男に」潰されちゃうって……こりゃ、ユーロも暴落するわけですよ(笑)。

また、“神の剣”の切り札的存在として、
おそるべき処刑人、“異端審問官ボッツァ”なる人物が登場する。
要するに「病的なサディストの殺し屋」というヘンタイさんなんだけど、
こいつの場合なんか、わざわざ
その生い立ちからページを費やして説き起こすもんだから、
「お、こいつはなかなか、やるのか……?」な~んて、期待してたわけですよ。
そしたら「案の定」というべきか、わりと“サクッと”主人公に倒される体たらくw

なんつ~か、本書の場合、主人公の行く手に立ち塞がる
“難関”については「異様な執念を燃やし」、手間ヒマかけて描写するんです。
にもかかわらず……。
いざ「対決!」となると、主人公が、かの“ステーブン・セガール”ばりの
最強王者ぶりを発揮して、ピンチをアッサリ切り抜ける……という、ね(笑)。
おいおい、それじゃぁ「すべてブチ壊しじゃないんですかい?」と、小一時間……。
とにかく、これだけ“お膳立て”に凝っておいて、
その後のストーリーテリングがおざなり、って小説も珍しいかもしれない。

ま、そんな感じで、全体の印象としては
けっこう「残念な感じ」もありつつの一冊が、
今回の『消えた錬金術師 -レンヌ・ル・シャトーの秘密-』でありました。
(とはいえ、歴史ミステリーを絡めた
“財宝探し”冒険譚として、最低水準の面白さは確保されているので、
ま、そういうのがお好きな方には、いいかもです……)。


PS.
それにしても、文庫と違い、価格2000円近くになるハードカバー本で
“ハズレ”となると、ちょっとばっかりダメージがでかいよなぁ(笑)。
聞くところによると、この秋には
“ベン・ホープ”シリーズの第2弾『モーツァルトの陰謀』も刊行予定! って
ことだけど、そっちはちょっと、買わないかもなぁ……。


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