雑談の達人

初対面の人と下らないことで適当に話を合わせるという軽薄な技術―これがコミュニケーション能力とよばれるものらしい―を求めて

モチベーションの欠如にどう対処するか?

2009年07月18日 | ビジネスの雑談
人間には、やりたくなくても、やらねばならない時がある。

と、書くと何やらカッコイイが、あまり気乗りのしない仕事というのは確かにある。費やさねばならない労力の割には、ほとんど具体的な成果がないとか、それに対する報酬が少な過ぎるといった場合に多い。

筆者の場合で言うと、「資料作りのための資料作り」がそれにあたる。何か目的があって資料を作るのではなくて、立派な資料を揃えることが目標のようになっているケースがある。そう言えば、パワーポイントの表現レベルが高いほど、プレゼンの内容レベルは低いという笑えない話もある。苦労して資料を書き上げても、読む人間は1.5人(書いた本人1人と、作成を命じた人間が斜め読みするので0.5人)だったりする。要は、内容はどうでもいいのである。こういった類の非生産的な仕事は意外と多く、気乗りがしないものだ。

以前の仕事では特にひどかった。1.5人どころか、書いた本人以外だれもまともに読んでいないような資料が大量に作成され、膨大にコピーされ、関係があるのかどうかわからない部署にまでバラまかれていた。そして、シュレッダーがオーバーヒートするほどのゴミと化していた。幸い、後に電子化されてパソコン上で見られるようになったが、相変わらずヴァーチャルではゴミを大量生産しているのだろう。

その他にも、心血を注いで取り組んできた案件が、結局水泡に帰すような結果になると、それ以外に取り組んでいる課題のモチベーションまで損なわれる。例えば、長い間懸命になって営業をかけて来たのに、何とか取引成立に至りそうになったところで、全く想定外の状況が発生し、提案してきた商品では役に立たなくなり、話が流れるなどということがある。こういう状況が続くと、徒労感に陥るとともに、別に進めている案件までモチベーションが損なわれる。

モチベーションが湧かない、あるいは損なわれてしまった時、つまり、やる気がないのに何かをせねばならない時、どうしたらいいのだろう。いろいろ対処法はあるが、それぞれ点検してみたい。

1.精神主義に走る
中高年は、コレが大好きだ。やる気がでないなら、気合いとド根性を奮い立たせろという訳だ。「失敗も、次の成功のための必要な経験だ。」「辛いことに耐えることで、成長できるのだ。」「結果ばかりじゃなく、努力の過程にも大事なことがある。」「キミも○○の一員なんだから、それぐらいできるはずだ。」とか、それはそれは有難いご宣託を垂れ流していただける。「頑張るためのモチベーションが湧きません」と言っているのに、「よし、それならモチベーションが湧くように頑張ろう」と返すようなものだ。

要は、成果や報酬を問わず、苦行それ自体が素晴らしいという考え方だ。どちらかというと、宗教に近い。(本当に存在するかわからない)来世の幸福に比べれば、現世の苦労など大したことはない、それがわからないのは信心が足らないのだという訳である。こういう輩にいろいろ文句はあるのだが、まともに反論するモチベーションも湧かないので、もう放っておくことにする。

2.ペナルティを作る
達成感や報酬の得にくい仕事に対しては、逆の報酬、すなわち、やらなかったら罰を与えることにしてやらせてしまうという、これまた良くあるケースである。世の中全体としては、これを対策にして回っていると思う。罰則を作ることによって、義務化してしまう。やりたくないが、やらないともっと嫌な目にあうので、仕方がないからやる、という風に強制するのだ。

実際に罰則がなくても、ある仕事をやらずに放置した場合のシュミレーションを頭でしてみる。結局は、更にいろいろと面倒な事態(実質的にペナルティのようなもの)が発生してくることが思い浮かぶ。仕方がない、やらざるを得ないか…という考えに至り、重い腰が上がる。

この方法の欠点だが、仕事をすること自体よりも、ペナルティを回避することが目的となるので、仕事をしぶしぶする以外にペナルティを回避できる方法があると、そっちに行ってしまう虞がある。罰を逃れる方法ばかり考え出し、新たな罰則とのいたちごっこ、などというのは、よくある話だ。

3.独自に報酬を作る
達成感や報酬が乏しく、モチベーションの湧かない仕事をするに当たって、一番有効なのがこの手段ではないか。つまり、ここまでやったら一服しようとか、コレを買おうとか、アレを食べに行こうとか、「自分にご褒美」というやつである。

外回りの営業マンらしき人が、昼間よくサボっている姿を目撃することがあると思う。陸橋の下や公園の木陰に営業車を停めて、シートを倒し居眠りしている人、スーツ姿でパチンコしている人、カフェや喫茶店で延々時間つぶししている人、マニアックな商品の売り場で見入っている人…これらの人は、決してサボっているばかりではないと思う。営業は、労力の割に成果が出にくい仕事である。労力と成果は正比例していないと、人間はモチベーションを奪われてしまうものだが、なかなか現実にはそうはいかない。一見サボっているだけのように見える彼らは、自分なりの「報酬」を自分で設定して、モチベーションを充填しているのでる。

自分も営業をしてみて、その気持ちはよくわかる。そうでもしないと、本当に自分が擦り減っていくばかりである。まじめ過ぎるのは、モチベーションを維持する上で必ずしも得策ではないのだ。モチベーションは、長く維持することが重要である。一時モチベーションの炎が燃え上がっても、すぐ燃え尽きてしまうようでは、結局成果はでないものである。

そんなわけで、筆者も前向きにサボってみようと思うのだが、生来の気まじめのため、なかなか上手にサボれない。サボっても、あれやこれやと仕事のことが思い浮かび、モチベーションではなくて、妙な罪悪感が湧いてくるばかりだったりする。どうやら前向きにサボるのにも、頭の切り替えとか、割切りとか、時間配分の見通しとか、いろいろと技術がいるのかもしれない。


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