雑談の達人

初対面の人と下らないことで適当に話を合わせるという軽薄な技術―これがコミュニケーション能力とよばれるものらしい―を求めて

経営不振に悩むヘボ企業は「おじいさんのランプ」を読め!

2012年12月30日 | ビジネスの雑談
世間では、愚にもつかぬビジネス書が溢れかえっている。全く嘆かわしい。明日にも用済みとなるだろう下らぬ商売であぶく銭を稼ぎ出した連中が、得意げに「イノベーション」について語っている。まったく世も末である。

イノベーションとは何か? それを本当に知りたいなら、リンゴ印の某企業のサルまねをするより、この不朽の名作を読むべきである。

おじいさんのランプ (フォア文庫 B)
新美南吉
岩崎書店


時は文明開化。暗い夜を明るく照らす「ランプ」なる文明の利器にいち早く目をつけた「おじいさん」は、村人相手のランプ・ビジネスで起業し、大いに利益を上げる。

ところが、おじいさんのビジネス・モデルを完膚なきまでに葬り去る恐るべきイノベーションが起こる。他でもなく、それは電気である。まばゆい電気の光を前に、おじいさんは「脳天に一撃を食らったような」衝撃を受ける。しかし、過去の成功体験にしがみつき、既得権を死守せんとするおじいさんは電気に対する非合理なネガティブ・キャンペーンを展開する。

「電気というものは、長い線で山の奥からひっぱって来るもんだでのイ、その線をば夜中に狐や狸がつたって来て、この近辺の田畠を荒らすことはうけあいだね」

商売を失いかけ「頭の調子が狂ってしまった」おじいさんは、電気推進派の区長宅の放火を決行する。ところが、出がけにマッチが見付からず、しかたなく火打石を持ってきてしまったため、そのどうしようもない不便さに悪戦苦闘する。

「古くせえもなア、いざというとき間に合わねえ・・・」

この言葉とともに、ついにおじいさんは正気にめざめるのである。

「…日本のお国の人間なら、日本がこれだけ進んだことを喜んでいいはずなのだ。古い自分のしょうばいが失われるからとて、世の中の進むのにじゃましようとしたり、何の怨みもない人を怨んで火をつけようとしたのは、男として何という見苦しいざまであったことか…」

自宅に戻ったおじいさんは、在庫のランプを、涙ながらにことごとく叩き壊してしまうのである。

松下幸之助を神とあがめるそこのバカ役員ども、井深大、盛田昭夫を心の師と仰ぐクソ経営者ども、何でアンタラの会社でさっぱり利益がでないのか知りたいか? 
いや、既得権にしがみつき、痛みを伴う一切の改革の芽を踏み潰し続ける、日本のあらゆる業界のクソ社畜ども、何がお前らに欠けているか教えてやろうか? このおじいさんの珠玉の金言を心して味わうがいい。

「わしのやり方は少し馬鹿だったが、わしのしょうばいのやめ方は、自分でいうのもなんだが、なかなかりっぱだったと思うよ。(中略)いつまでもきたなく古いしょうばいにかじりついていたり、自分のしょうばいがはやっていた昔の方がよかったといったり、世の中のすすんだことをうらんだり、そんな意気地のねえことは決してしないということだ」

ちなみにこの「おじいさん」、ランプ商売を廃業後は本屋になった。もしこの名作に続編があったなら、孫とともにタブレット端末を駆使した電子書籍ビジネスでも展開していることだろう。

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