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映画「怪談」

2月27日(日)

テルサ名画劇場も今回を除けばあと1回を残すまで、さすがに満員だ。少し遅れて入場し、最後列に座ると、背後でずっと何か人の気配がする。これぞ、初めて間近で見る映写技師の姿で、狭い場所の床の上で黙々と大きい身体を折り曲げるように作業する、この人がいなくては映画は成り立たないのだ。

小泉八雲の原作「怪談」を水木洋子の脚本、小林正樹監督のオムニバス。
「黒髪」は落度も無いのに男の身勝手のために捨てられた女の復讐と思えばわかる。髪が死後も伸びるもので、長い艶のある髪に異性が魅力を感じるのもわかる。「雨月物語」を思い出したが、新珠美千代に黒髪は良く似合う。

「雪女」は「雪国」にも主演した岸恵子。その行いは全く理不尽なものだ。山陰に住めば、雪は、人間がそこにいるというだけで、襲いかかる自然の猛威であると思えるから、男女の間もそうしたものだとすると、判らないでもないが。

「耳なし芳一」は一番人気が高く、これを見て退席する人も結構いた。(何しろ3時間余の長い映画なので)。優れた演奏とは、魔を引き寄せる力を持つということか。壇ノ浦の合戦が絵と実写で再現され、安徳天皇を抱いた二位の尼の入水シーンもあり、華やかな幟を立てた船団は、まるで当地で去年も行われたホーランエンヤを見るようで、客席の熱い視線が注がれていた感じ。主役は中村嘉津雄↑。志村喬の僧侶は品が良く慈愛に満ちている。ただ、少しうっかりもので、部下に書かせた般若新経、耳だけ書き残しているのを気づかないとは、脇が甘い。中電の原発と同じ点検漏れだ。高校時代、英語の授業で読んだことがあるが、先生がタイプで打ち、一部に手書きの文字が入っていたのを思い出す。英文でも「門を開け」のかわりに「kaimon」と呼ばわるのだが、これは八雲が雰囲気を出すために工夫した箇所らしい。

最後の「茶碗の中」は一番不思議。ある日白湯を飲もうとした武士の茶碗の中に、見知らぬ男の顔が浮ぶ。その男が笑いかける。そしてついには室内に現われる。ほかの人には見えない。刀で斬りつけると、代わりに3人の部下が文句を言いに。茶碗の中の武士、これが仲谷昇30代なかば、なかなかの美貌なのである。武士の方は平凡な容貌だ。ある日突然、全く一方的に好意を寄せられて、そしてある日突然、恨みを抱かれるということは何時誰に起きるかわからない。仲谷は名前は忘れたが他の作品でも、同性愛的な役があったなあ。3回結婚した彼の最初の妻、岸田今日子(「卍」)と同様に。
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コメント
 
 
 
Unknown (桃すけ)
2011-02-28 12:39:34
ビアンカさんの解説?を読むと、この映画を見たいなあと誘われます。情景が浮かんできます。松江で上映されたというのも良いですね。本は読みましたし、映画になったのも知っていますが、映画館には行かなかったと思うのに、説明されたような絵は何となく覚えているような。観にいったのかなあ。中村嘉津雄も志村喬も好きだし、岸恵子も雪女には似合うみたいだし・・。DVDは出ているでしょうか?
 
 
 
Unknown (Bianca)
2011-03-01 07:05:15
桃すけさま、
ワーイ、見たいなあと思って頂けるのが、映画の記事の最高の褒め言葉ですよ。志村喬は正にいぶし銀でした。当時の中村嘉津雄はまだ初々しいですね。DVDはどうでしょうか、レンタルでは無いようです。
 
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