『身毒丸 』 折口信夫 1 信吉法師が彼(身徳)の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。
「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
1954(昭和29)年11月
「折口信夫全集 27」中央公論社
1997(平成9)年5月
身毒丸の父親は、住吉から出た田楽師であつた。
けれども、今は居ない。
身毒は をり/\ その父親に訣れた時のようすを思ひ浮べて見る。
身毒はその時九つであつた。
住吉の 御田植神事の外は 旅まはりで、一年中の生計を立てゝ行く
田楽法師の子どもは、よた/\と 一人あるきの出来出す頃から、もう二里三里の遠出をさせられて、 九つの年には、父親らの一行と 大和を越えて、伊賀伊勢かけて、田植能の興行に伴はれた。
信吉法師というた彼の父は、配下に十五六人の田楽法師を使うてゐた。
朝間、馬などに乗らない時は、疲れると屡 若い能芸人の背に寝入つた。
さうして交る番に皆の背から背へ移つて行つた。
時をり、うす目をあけて 処々の山や川の景色を眺めてゐた。
ある処では青草山を点綴して、躑躅の花が燃えてゐた。
ある処は、広い河原に幾筋となく水が分れて、名も知らぬ鳥が無数に飛んでゐたりした。
さういふ景色と一つに、模糊とした 羅衣をかづいた記憶のうちに、父の姿の見えなくなつた、 夜の有様も交つてゐた。
その晩は、更けて月が上つた。
身徳は夜中にふと目を覚ました。
見ると、信吉法師が彼の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。
最後になりましたが、 折口信夫の『身毒丸 』を教えて下さいましたお方に心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。
近日中に、
「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
1954(昭和29)年11月
「折口信夫全集 27」中央公論社
1997(平成9)年5月
などがあれば、図書館で借り、楽しませていただきたいと思います。
『身毒丸 』 折口信夫 1 信吉法師が彼(身徳)の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。
「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
1954(昭和29)年11月
「折口信夫全集 27」中央公論社
1997(平成9)年5月
身毒丸の父親は、住吉から出た田楽師であつた。
けれども、今は居ない。
身毒は をり/\ その父親に訣れた時のようすを思ひ浮べて見る。
身毒はその時九つであつた。
住吉の 御田植神事の外は 旅まはりで、一年中の生計を立てゝ行く
田楽法師の子どもは、よた/\と 一人あるきの出来出す頃から、もう二里三里の遠出をさせられて、 九つの年には、父親らの一行と 大和を越えて、伊賀伊勢かけて、田植能の興行に伴はれた。
信吉法師というた彼の父は、配下に十五六人の田楽法師を使うてゐた。
朝間、馬などに乗らない時は、疲れると屡 若い能芸人の背に寝入つた。
さうして交る番に皆の背から背へ移つて行つた。
時をり、うす目をあけて 処々の山や川の景色を眺めてゐた。
ある処では青草山を点綴して、躑躅の花が燃えてゐた。
ある処は、広い河原に幾筋となく水が分れて、名も知らぬ鳥が無数に飛んでゐたりした。
さういふ景色と一つに、模糊とした 羅衣をかづいた記憶のうちに、父の姿の見えなくなつた、 夜の有様も交つてゐた。
その晩は、更けて月が上つた。
身徳は夜中にふと目を覚ました。
見ると、信吉法師が彼の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。
最後になりましたが、 折口信夫の『身毒丸 』を教えて下さいましたお方に心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。
近日中に、
「折口信夫全集 第十七巻」中央公論社
1954(昭和29)年11月
「折口信夫全集 27」中央公論社
1997(平成9)年5月
などがあれば、図書館で借り、楽しませていただきたいと思います。
『身毒丸 』 折口信夫 1 信吉法師が彼(身徳)の肩を持つて、揺ぶつてゐたのである。
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