在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

イタリア映画の紹介 The Place di Paolo Veronese 「いつもの場所」

2018-01-18 20:17:25 | 何故か突然イタリア映画
The Place 「いつもの場所」
監督 パオロ・ジェノヴェーゼ



前作、Perfetti Sconosciuti が大評判になったパオロ・ジェノヴェーぜ監督の作品。
直訳では「完璧な他人」となるのだが、日本では「おとなの事情」のタイトルで上映された。(うーーん、タイトルとしてはまあまあのような気がする。。)
各方面で賞を取った上に、リメイク版の制作企画もあり、劇場でも上映できる内容で、これからも話題に乗り続けるだろう。
(ちょっと面白いので、まだ見てない人はぜひどうぞ)

前作は登場人物7人、こちらは、1人+9人+1人の合計11人で、何人かの女優俳優は被っている。

そう、監督の第一声が、「「おとなの事情」とは全く違う作品を作りたかった。」


今回は女優の一人もいらした


「おとなの事情」が相当話題になっただけに、作る側も見る側も比較しないではいられない。
あまり意識はしなかった、ということのようだが、実は、「無意識的には」かなり意識していたのではないかと想像した。

「おとなの事情」のカギが携帯だとすると、こちらは「手帳」。

日本で手帳というと、薄っぺらで小さなものをイメージするが、こちらの手帳は大きく厚い。
学校での連絡帳を兼ねていて、小学校からみんな大きな手帳を持っている。
日記ではないが、細かいことまで書き込み、今でこそ携帯が取って代わりつつあるとはいえ、少し前まで、ビジネスマンの誰もがこんな感じの大きな手帳を持っていた。

これを「男」が常に持っている。
いつもの「場所」(the Place)、いつもの席、手帳が常に手元にある。(なお、携帯は持っていない)

さて、ミステリアスな男の元を訪れる彼のクライアントは8人(途中で増えて+1人)。
彼らの願い(というより欲望)を叶えるには男のいう事を実行しないといけない。
絶対に実行できないことではないが、修道女に妊娠しなさい、強盗をしなさい、爆弾をバールに仕掛けなさい、など、さまざま。

思ったよりテンポが早く、彼らの欲望、思惑、行動が交錯する。(こういうところはコメディ)

男はメモを手帳に挟む。
話を手帳に書き込む。
常に手帳をパラパラ。

ところで、一つ話が終わるごとに、男はメモを燃やす。
これがかなり効果的なのだが、これは偶然だそう。
ある時、主役のマスタンドレアが、撮影の合間にアメの紙を燃やし、効果が非常に面白かったので採用したとのこと。
ところで、今は、イタリアでは、室内では完全に禁煙になっているので、テーブルに灰皿が置かれているのはちょっとご愛嬌。

映画としては、この場所だけ。
どの女優俳優も、映るのはほとんど上半身のみ。
演技としてかなり難しいと思う。
一人1日+αの短期間で撮影されたそうだが、本当にそれだけ。
フラッシュバックの撮影も何もなく、クライエントが語るストーリーのみ。
でも、そのストーリーにのめり込んでいく。

なお、原作は、アメリカでテレビシリーズとして放送された「The Booth at the End」だそうで、そいういう意味では、アメリカ人にとってはリメイク版となるかも。

男を演じるマスタンドレアが素晴らしい演技、役柄ピッタリなのだが、もう一人、とても良い役柄なのが、このバールで働くアンジェラ。
彼女だけがこの映画の中で異質な存在。

最後は。。。見てのお楽しみ。
絶対に日本でも上映されるだろう。

なお、ちょっと気になるこのカフェ・レストランの場所は、サン・ジョヴァンニ近く、ガリア通りのカフェ。
あれ〜、かなり近くに住んでいたことがある。
が、 入ったことはない。

ローマ中、結構回って、最適の場所を探すのには結構苦労した、とのこと。
もちろん、カフェの名前は全然違ったのだが、今はThe Placeと改名したそう。
そうだよねー(笑)

一度、一番奥のあの席に行かなきゃ。
手帳を持って。

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