こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『文人悪食』(嵐山光三郎)

2014-03-15 | ルポ・エッセイ
子規の狂気にも似た食欲が、私を震えさせるのである。
私は、「食べる力」もまた精神力であることを知るに至った。


 嵐山センセ文人シリーズ2冊め。今度は食から文人を斬った一冊で、さらに生々しさが増す。後世に名を
残す文学者たちの異常性が次々と白日のもとにさらされる。媚びもためらいもなく、ある時はこれでもか
というほどねちっこく、あるときはズバリと骨まで断つような文体が清々しい。
 食は、生きざまである。素晴らしい作品を生んだあの人もこの人も、その実体は凄まじい。昔の文学者
を見る目が変わる。業の深さが尋常じゃない。やはりまともな神経ではやっておれんのだね、常軌を超え
るタフさか異常性が必要なんだね。それほど骨身を削って書かれたものだから世紀を隔てて人の心を動か
すんだね。…いろいろと納得。一人ひとり、作品を読みながらもう一度通読したい気がする。
 個人的に昔から興味深かった子規も、まずそのエネルギッシュな食欲に驚いたことを久しぶりに思い出
した。なんと嵐山氏、『仰臥漫録』を読んで8キロやせたそうだ。あやかりたい。…ではなく。それほど
真摯に対峙するべきものなのだろう。
 ただ、深い親交のあった先生方に対しては毒も陰を潜め敬意が先に立つ。檀一雄然り、深沢七郎然り。
しかしまあ、それも体験に基づく説得力があり、本当に魅力ある人だったんだなと納得してしまうのは嵐
山氏の筆力ゆえか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿