こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『日本の伝統美を訪ねて』(白洲正子)

2014-08-20 | 対談
それにしても、わたくしたち日本人は「勉強」という言葉が好きですね。
もしかすると、遊ぶことの中に本当のものがあるかもしれないのに。


 時代を縦断した対談集なのだけど、その相手が草柳大蔵、山折哲雄、河合隼雄…と、今は亡き人も含み
その道の大家ばかり、実にバラエティに飛んでいて興味深い面々。なかには阿川佐和子の名もあり、へー
と思ったら、まさに白洲さんがお亡くなりになった年のものだったが、キレ味のある会話が成立している。
 一時期、凄くブームを呼んだ人で、私も白洲正子展に行ったり自伝を読んだりした。しかし実はその頃
はそれほど心に響いたわけでもなかった。しかし、この対談集を読んでいると、その深い造詣と行動力、
いつまでもみずみずしい好奇心にあらためて感嘆する。私自身の和文化への畏敬の念が以前より高まって
いるということもあるだろう。自分の来し方行く末を客観的に判断しても、到底足元にたどりつけさえし
ない境地であるが、結局はわかろうがわからなかろうが、まず自分が好きなものを楽しめばいいのだとい
う言葉に、少し安堵。…次元がまったく違うのは置いておいて。
 和文化に新たな興味のわいた本であったが、特に私にとっては誘眠剤でしかなかったお能も、きちんと
見てみたくなった。盲目の能楽師・友枝喜久夫氏との対談は心にしみて、友枝氏の舞う姿を見たいと熱烈
に思った(DVDがあるのを発見したが、生で見るものとはまったく違うんだろうな)。湖北に十一面観音
を訪ねていくのもいいな。それと敬愛してやまない河合隼雄先生がここでもとても愛されていたことにほっ
こり。できることなら手元に置いて繰り返し読みたい対談集だった。(でも図書館に返却しなければ~)