こんな本を読みました

気ままで偏りのある読書忘備録。冒頭の文章は、読んだ本からの引用です。

『おしゃべり怪談』(藤野千夜)

2014-08-16 | 現代小説
神様のかわりなんて任されるのは御免だった。なにがあっても、とりあえず
誰かを殺したくなんかはない。


 藤野千夜さんといえば、芥川賞のインタビューの印象が強烈で、一度読んでみたいと思いつつ手にと
る機会なく…いま調べたら芥川賞は1999年だから15年前…?ひえ~。で、特に気になっていたのがこ
の作品タイトル、言わずもがな、くらもちふさこさんの名作漫画唐の引用ですな。結局、
これは4つの短編を集めた本だったが、表題作の内容はくらもちどころか、麻雀店立てこもり犯と監禁
された女性たちとの濃密な時間という物騒なストーリー…といっても、立てこもり犯がほぼ一方的にお
しゃべりしてるだけで、コミカルっちゃ―コミカル。展開が読めずハラハラしつつも、緊迫感より閉塞
感が勝る不思議な味わいの話だった。
 文体は吉本ばなな世代以降の現代女流作家によくある平易で淡々とした文体。これはやはり男性には
書けまいという細やかさもあり、あらためてこの人のメンタルは女性なのだなと確信する。でも主人公
はそれぞれにどこか他人と同化できない繊細な心を抱えていて、このへんにマイノリティの表現者らし
い根っこがあるのかな…と思ったのは、少しうがちすぎなんだろうか。考えれば、小説家は他人と一緒
じゃおもしろいもの書けないしね。
 ともあれ、おもろうて、やがて静かに心に残る話が多かった。表題作はさすがに衝撃だったけど。

『三匹のおっさん』(有川浩)

2014-08-16 | 現代小説
「俺も一応赤いちゃんちゃんこは着たけどよ。だからって
まだジジイの箱に蹴っぽり込まれたくはねえなぁと思ってよ」



 はい、出ました。気軽~に読めるエンターテイメント。しばらくこういうの続きますよ。暑いからねえ。
(初頭の苦行…小林秀雄とか…は何だったんだ)
 これまた、実にドラマ向き。キャラの立った3匹の還暦過ぎのおっさんが、地域の秩序を守るために暗
躍しまくるお話。確かにこの時代、還暦過ぎたからといって老人とはとても呼べないし、そんな人達が現
役感いっぱいで活躍するのは実に痛快。それに孫の甘酸っぱい恋物語なんかもいい具合にからんで、飽き
させない。本当に軽―くすいすい読める、しかも勧善懲悪だからカタルシスもある。現代の病巣もうまく
からめられていて、こういうキャッチーな話って、やっぱり元コピーライターの作家は上手!と思うのは
こじつけだろうか。
 しかしこの本で何よりぐっと来たのは、あの読書家でもあった俳優の児玉清さんが惚れ込んでラジオで
紹介したお話で、その書き起こしがあとがきに添えられていたこと。大好きでした、児玉清さん…児玉さ
んがここまで褒めるんだから、やっぱりいい話だったんだ~…て、どんだけ他人に影響されてるねん。