うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

know 野崎まど  うなぎ

2015年11月27日 | 読書感想
脳に電子葉がつけられるようになった近未来。
あらゆる物質に情報タグがつけられ、それらのデータを検索できるようになった世界では、能力によって扱える情報量と権限が制限されるようになっていた。
御野・連レルはその世界でも上層にあたるクラス5の権限を持っていた。彼がそこまで登りつめたのは、失踪した師であり電子葉の発明者である天才、道終・常イチの行方を知るためだった。
やがて師の残した暗号を解読した連レルは師のもとにたどり着き、そこで一人の少女を託される。
少女、道終・知ルは四日間だけ守ってほしいという。その四日間は、世界が代わるまでの四日間であった……。


いやあ、面白い。
現代でも「ググれカス」に代表されるように、知識そのものは検索で簡単に共有されるようになってしまい、ただ知っていることには意味がなくなりつつある。その現代を敷衍して描かれた近未来が丁寧に描かれていて面白い。主人公のクズナンパからその説明が入るのも見事な導入で、シーンから世界観を説明するのが実にうまい。
ただその後、世界観と理屈の描写にページがとられ、話の進みがいまいち遅いのが難点といえば難点か。

が、それもヒロインである天才少女の知ルが出てからは一気に解消される。
天才や化け物を描くことに異様な才を発揮する作者の本領発揮で、知的スリルのある会話が面白く、またいかにもな三下と繰り広げる情報戦や、特殊部隊に囲まれての戦闘はSFアクションとして読み応えがあり、映像的な見栄えもよく、エンターテイメントとしてバッチリ。

神々の対話ともいえる世界を描いた終盤と、そこから先を描いた結末も見事というしかない。そうか、仏教とか日本書紀とか、なんでそういう話が混ざっているのかと思ったらそうつながるのか……と感心してしまった。

センスのある小気味よい会話とSF的な知識を平易に語るリーダビリティ、センス・オブ・ワンダーとしかいいようがない「知る」ということの捉え方。巧妙な構成と、その先にある壮大な結末。そして中心にいるのが美少女中学生というオタなエンタテイメント性。すべでが見事に結実した傑作。

ただひとつ欠点をいうなら、クズナンパをするいけすかない官僚である主人公(ジジコンの無自覚ホモ)が特に痛い目にあうことがないどころか女子中学生と生ハメまでしていてムカつくってことですかね。なんなのあいつ。お前の存在がギルティだよ。死んで詫びろよ。

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