うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

「炎の群像」上映会レポート1

2006年06月11日 | 栗本薫
昨日はああ云ったものの、やはりのちのちのことを考えると、
ちゃんと文章として残しておかなくてはならんのだろうな、と思い、
できるかぎり記してみることにする。

・イベントの主旨
さて、もう一度このイベントの趣旨を説明すると、
栗本薫(中島梓)がグインサーガ50巻達成記念という名目で95年末に行った、
「ミュージカル グインサーガ 炎の群像」のVTRを、有料で上映しようというイベントだ。
料金は2500円(ファン倶楽部の人は1500円)
上映後には中島梓を交えたお茶会が開かれる。ある意味こちらの方がメインとも云える。
会場は「天狼プロダクション」、要するに、中島梓の事務所だ。

事務所で上映会! なんとも不思議な響きだ。
事務所って、そんなに広いものか? 小説家の事務所だろう?
いくらある程度手広くやっているからといって、そんなに広いとも思えないんだが。
このイベントは、何人くらいの集客を見込んでいるのだろう。
あまり大々的にこのイベントを宣伝しているわけではないとはいえ、
一応は出すたびにおよそ10万部売れる小説のミュージカルだぞ?
いくらVTRとはいえ、そんなにだれも見にこない予定なのか?

……でもまあ、見にこないか。となんとなく納得する。
そこで自分なりに今回のイベント参加者数を予想してみた。
漠然と会場の広さは10畳から12畳と予想する。
となると、多くて50人。少なくて20人。間をとって30~35人というところか。

その人数ってプロの作家としてどうなんだろうなあ。
でもまあ、予想だからな、実際はどうなのか、行ってみないとわかるまいて。


・会場まで
上映会の開始は13時。会場は三十分前とのこと。
こういうものの常として、あまり早く行き過ぎると時間をもてあまし、
ギリギリだとなぜか悪い気がするので、だいたい15分前に着くようにする。
さらに初めていく場所なので迷う時間も考慮して、25分前に着くようにすればよいか。
もし迷わずに早く着きすぎたら、コンビニとかで時間を潰せばいい。
でもまあ、おれのことだ。ちゃんと迷うことだろう。
おれは方向音痴なうえに地図を読むのが下手だ。

そんなわけで、現地には25分前に着くようにする。
場所は田町なので、我が家からは電車で1時間ちょっとだ。
11時半発の電車に乗り、予定通りに12時半過ぎに現地入り。
さらに予定通りに道に迷う。
地図というものはどうにも縮尺がわからないで困る。
思ったより近かったり遠かったり、いつになっても俺を惑わせてくれる。
困ったエンジェルさ。

事務所にでかい看板が出ているわけもなし、どういうビルなのかわからないので、
この辺かなと思ったビルのテナントを片っ端から確認していく。
勝手なきめつけで、普通のマンションとかなんじゃねえの?
とか思って、ライオンズマンションとかまでチェックする。
さすがに見栄坊の栗本先生、そんなことはなかった。
探しまわったあげく、素通りしていたそこそこ立派なビルの地下に、
さりげなくひっそりと天狼プロダクションは存在していた。
到着したのは57分。開場三分前だった。
さすがおれだ。まったくもって予想通りの時間に到着だ。


・会場入り、そして上映まで
インターフォンに到着を告げ、エレベーターを降りると、そこは狭い廊下。
いや、狭いといっては失礼か。いたって普通の廊下。人一人が普通に通れる。
一般家庭としてはいたって普通だ。一般家庭としては。
どうでもいいが、インターフォンに告げる自分の声で、
どうやら今日の自分は「喋れない方の自分」であるらしいことに気づく。
これは困った。が、まあそういう日なんだから仕方あるまい。
今日は無理せず無難に過ごそう、と思う。

入ってすぐに、受け付け(つうか会議机に事務の人が座ってただけだが)があって、
ファンクラブの人かどうか聞かれる。
「ちがいます」と答え、一般料金の2500円を支払う。
事務の人の手元に名簿みたいなのがあったので、
ファンクラブだと云ったらそれと照会するつもりだったのかな?
しかし、普通のペラ一枚だったが、ファンクラブの会員って何人ぐらいなんじゃらほい?
疑問に思っていると
「お茶会には参加されますか」
「あ、えーと、じゃあ参加します」
ハナからそのつもりのくせに、そらぞらしく考えたふりしながら答えてみる。
なんか手元の紙にメモってる。参加人数の確認かな?
お茶とお菓子の数を合わせるために、ちゃんと人数かぞえているんだろう。
まあ、食器も足りなくなったら困るだろうしね。
(実際は足りなくて困るような食器は使われていませんでしたが)

さて、廊下を二・三歩いくと、とりあえず着物姿の初老の女性と遭遇する。
つうか中島梓じゃねえかよ。いきなり第一種接近遭遇かよ。
「こんにちわ」みたいなことを云われ「どうも」とか適当に返す。
しかし、土禁だというが、靴をどうすればいいのかわからない。説明もない。
一応ビニール袋もってたからそれに入れたが、なんともアナウンスのないイベントだな。

そんなわけで上映会場にはいる。
せまっ。
八畳くらいか? 十畳は……あるかなあ。微妙。
すでにたいていの人は会場入りしているようだ。人数はちょうど会場が埋まるくらい。
だいたい三十人弱か。悲しいけど、これって予定通りなのよね。

意外なことに、男性も自分以外に五人くらいいた。しかも一人は若い。
若いというより、子供だ。小学生じゃねえかよ!
どうやら親子連れのようだ。子供連れてくるなよー、と思うが、まあ自由だ。
しかし、こんな小さい子が見て、なんか楽しいのかねえ、と思うが、
この子、あとでわかったのだがどうやら14歳であったらしい。
おさ、おさなっ!14歳にしてはおさなっ。
中高時代によく遊んでいた友人の弟(当時たしか10歳くらい)にそっくりだったから、
11くらいに見えたよ。大丈夫か?きみ。こんなもん読んでないで、飯食えよ?

と心の中で他人の家庭にどうでもいい心配をしながら、席に着く。いや、着けない。
席がない。
どうやら30人に満たないこの人数で、すでに予定人数をオーバーしていたらしい。
パイプ椅子が足りずに、その辺の部屋から適当な椅子をもってくる梓たち。
結局、おれは部屋のうしろにあったピアノの椅子に座らされる。
やたら背が高いのがどうかと思うが、まあおれは背が高いほうなので問題はない。
なんにしろ、一番うしろの席に座れたのは幸いだった。
映像作品を見ている間、落ち着きがなく身体を動かす自分としては、
自由に背伸びできる後ろは望ましい。

すぐ左には、一昔前の高級機種といったおもむきのビデオデッキが、
プロジェクターにつながれ鎮座ましている。普通にビデオテープなんだな。
いまどき、テープをDVDに落とすのなんて家庭でも簡単なんだから、
上映会なんてするならだれかDVDにすりゃいいのに、と思う。
まさか事務所にDVDレコーダーがないとか? ないのかもしれんなあ。

ぼんやりと客を見回す。
やっぱりある程度歳のいった方が多いか。
40歳前後の方が多いようだ。当然、圧倒的に女性が多い。
ほんのりと腐女子のにおいが漂ってはいるが、いずれもハードコアな感じはしない。
要するに、普通のその辺にいる、本読んでそうなおばさんだ。
自分が幼いころの母を思い出させる。
ちょっとメンヘルというかメルヘンというか、ぶりっ子はいっているというか、
過剰に楚々とした格好の人がちらほらいるのが気にかかるが、
(童謡とか童話作家みたいな感じ? 具体的に云うと谷山浩子とか)
まあ、ボク自体はそういう人や格好は嫌いではない、むしろ好ましい方向なので、
係わり合いにならない範囲では、まったく問題はない。

そうこうしていると栗本先生が部屋を出て、また入ってくる。
そのうしろから、アルフィーの高見沢さんのモノマネしたら失敗した、みたいな
やたらめったらガリガリで髪の長いおじさんが歩いてくる。
なんだ、このいかにも関係者ですオーラを漂わせている人は、と思っていたら、
梓が「今岡さん」と呼ぶ。
なるほど、これが今岡・ダンナ・清か。
長年、お堅い編集長をゃっていたとは思えぬほどにフリーダムだな。
しかしまあ、本当にやせている。栗本薫に肉を吸い取られているとしか思えぬほどに。

その栗本薫だが、実物を見て最初に思ったことは、意外にも
「なるほど、思ったよりは太ってないな」であった。
栗本先生が「私は太っていない。テレビ映り、写真映りが悪いだけ」というのは、
デビューして間もなくから現在にいたるまで、年柄年中のたまっていたことだが、
どうやら実際にそうであったらしい。とても意外だ。
が、思ったより太っていないだけで、デブではないと云ってしまったら、
閻魔様に舌を抜かれてしまうであろう。
田舎の売れない旅館の女将とか、ベテラン女中とか、
あるいは常連しか来ない廃れたバーのママさんとか、そんな風情、
といえばわかってもらえるだろうか。べつにわかってもらう必要もないが。

でもまあ、いいのではないか? そもそも50をいくつも越えれば、
ほとんどのおばさんは太るものだ。
年齢を考えれば、ある程度は納得のいく太り方だろう。
私人ならば口出しするほどじゃない。
ただ、これで太っていないと主張するのは、やっぱ無理はあるよな、うん。

「栗本薫こと中島梓です。今日はお集まり云々あと五分ほどで上映云々」
普通の挨拶がはじまる。
「新しい来客があるとこのランプが光ってブザーが鳴るので、
 手入れみたいな感じになりますけど大丈夫ですよ(笑)」
なぜかみんな爆笑する。取り残されるおれ。
しまった、ここ爆笑ポイントだったか。乗り遅れた。
そういえば、おれは昔からクラスの爆笑ポイントがわからない男だった。
ひねくれているとかそういうのではなく、素でわからないのだ。

「スクリーンが真ん中ではなく端にあるので席によっては見にくいかも」
いや、ホント端だとみにくそうだな。おれは真ん中だからいいけど。
しかし、なんであんな場所にスクリーンが?
「大工さんに伝え間違ってあんな場所になったそうで」
ダサッ!
「設置しなおすとお金かかるのであのままですが」
セコッ!

そんなことを思っていると、清が隣のデッキとアンプをちゃっちゃっといじり、
照明を消して上映がはじまった。
ちなみにダンナ清は、その後どこへ行ったのか、
以降、姿を見せることはなかった。


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