うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

スクリーム  75点

2009年08月21日 | 映画感想
スクリーム [DVD]

角川エンタテインメント

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ネットのニュース見てたら、アメリカのなんたら誌とかが、ここ20年のホラー映画ベスト20を発表してたんです。(これ)
そしたら1位がなぜか三池祟史監督の『オーディション』とかいう無名映画で「なんだよこのランキングいい加減にしろよ気になるだろオーディション」と思って近所のビデオ屋で探したのですがやはり置いていないようで、仕方ないのでランキングに載っている別の作品を借りようと、ピーター・ジャクソンの『ブレインデッド』を探したのですがやはり置いておらず、クソッ、B級ホラー時代のピーターが気になってしょうがないぜという気持ちを抑えながら、仕方なくランキングに載っている作品をなんか借りてみようと思った次第なのでありました。

まあ、このランキング、2位の『羊たちの沈黙』の時点で「おいおい、それホラーとちゃうやろ」という気分になり、『プラネットテラー』が入っているのに気づいて「だめだこいつ……ホラーとコメディの区別がついてねえ……」という気分になったので、信憑性はまるでないのですが、ホラーな気分の時にはいいかも……
と、4位に入っていた『スクリーム』を借りてきたのでした。以前、知り合いに薦められたこともあったし。

ストーリーは「お面をつけた殺人鬼が大学生を殺しまくる」という、単純明快なホラー映画テンプレとも云えるもの。
この映画、あの有名なお面やパロディ映画『最凶絶叫計画』などのせいで「あんなお面が怖いわけないだろ。つうか明らかにコメディだろ」という気分ではんなりと馬鹿にしていたのだが、いやいやさにあらず、あのお面は怖くなくてよかったのだ。むしろあれは怖くないのがポイントなのだ。と観てはじめてわかった。やはり実際に観てみないとわからないことは多いものだ。

で、じゃあなぜ怖くなくて良いのかというと、ここから先はわりとネタバレになるが、要するに、今作の殺人鬼は化け物ではなくて人間なのだ。そしてあのお面は怖がらせと正体隠しを目的とした(……だけではないんだが)チープな小道具という設定のアイテムなのだ。チープな小道具として描写されているものなのだから、怖くなくても当然なのだ。

そしてここが重要なのだが、そんなチープな小道具を用意するところからもわかる通り、この殺人鬼、ジェイソンやハンニバルのような超人ではなく、凡人の頭脳と身体能力をしか持っていない。なので、とても必死に殺人鬼しているのだ。もう逃げられそうになるわ殴られるわこけるわと、かなり無様でかなり必死。
なんとかカッコよく予定通りに殺そうとするのだが、なかなか思うとおりにはいかず、苦労しながら殺しまくっていく、なんとも苦労人な殺人鬼。正体隠しのマスクや衣装や無言が、怖さではなくNHK教育テレビの着ぐるみたちのように愛嬌をふりまいている。
気がつけば、ドリフコントの志村けんを応援するように、殺人鬼を応援している自分を発見するだろう。

じゃあ結局コメディじゃん、とか思うかもしれないが、いやいや、その等身大の感じがリアルで怖いという面もある。
それに、そういうのを抜きにしても、脚本自体は十分にホラーとして一級品。特に冒頭のツカミの強烈さは類を見ない。
夜に鳴る電話を取ると、どうやら間違い電話。しかし切るとまたかかってて、どうやらイタズラ電話。かと思ったら個人情報を知っているらしく、ストーカー?急転直下の豹変で殺人鬼。
ありがちな間違い電話のから殺人鬼登場への発展のさせかた、会話の自然さが群を抜いていて引き込まれる。

また会話の各所に有名ホラー映画のタイトルや薀蓄、ホラーの法則など(処女が生き残る、飲酒はダメ、など)を取り混ぜているところに、自虐的な笑いと製作者のホラー映画への愛が感じられる。自ら法則を明かすことによって視聴者に予測させ、それをどう裏切り、または期待通りに答えるか、実にうまく法則を利用して楽しませてくれる。だけでなく、その会話がストーリー的な必然にもなっているのがなんともうまい。

しかし、なんといっても見所はラストの15分、犯人の正体がわかってからだろう。
以下、激しいネタバレ。


結局、犯人は二人組みの大学生で、面白半分にサイコ気取りで殺人鬼してたのだが、この二人組みが最高に馬鹿でたまらない。
別のやつにすべての罪をなすりつけるつもりで、自分たちも襲われて怪我をしたけど一命を取り留めた、ということにしようとするのだが、それでお互いを刺しちゃう。
「ちょっ、おま、深くさしすぎ!」
「おま、おまえもやりすぎだろ!」
「うあ、また刺しやがった、おま、血が出てるじゃん、これ以上やばいよ痛いよ」
完全に小学生のケンカ。これをまだ止めさしてないヒロインの目の前でやってんの。で、逃げられるの。アホかw いやアホだw
追いかけようとしても怪我がひどくてふらふらしてたり、殺したと思ったやつが生きててやられたり、最後は「ずっと前から君が好きだった」「きもっ」でテレビに押しつぶされたり、とにかくこの二人組みのまぬけさきもさ子供くささが、妙にリアルで最高に面白い。
一人がそれまではイケメンで優しくて、という完璧超人だから、殺人鬼モードの頭の悪さが最高におかしい。やはりイケメンは変態の馬鹿に限るのう。


サイコホラーの心理劇、スプラッタのグロ、ミステリのどんでん返しに、B級ホラーのバカバカしさ。
ホラーを知悉したものによる、ホラーの魅力のすべてをつぎ込んだホラー映画だ。大ヒットもむべなるかな、というところだ。続編でシリーズ全体の格を落とすところまで、実にホラー映画というものをわかっている作り。
安心して観れるホラーだ。ホラーで安心てのも変な話だけど。




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2 コメント

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Unknown (うなぎ)
2009-08-25 22:38:01
外人は痛いのが好きだからなあ。SAWとか。痛いのと怖いの勘違いしてないかっていう……
しかし普段はシカトされる映画感想なのに、スクリームだけわりと拍手コメントがあって、この愛され具合はなんなんだろうと思ってしまった。
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Unknown (usa)
2009-08-25 06:18:32
ちわ。
『オーディション』って確か村上龍が原作だったような。ストーカーって言葉がまだ若干目新しかった頃の。
映画も観た記憶があるけど、そんなに怖かったかなあ。わりとシンプルなサイコだった気がすします。ただ、痛そうだった…。
『スクリーム』はいろんな映画やドラマでもパロられてて、見るたびに、愛されてるんだなー、て感じます(笑)
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