gift (集英社文庫)古川 日出男集英社 |
短編集……というか掌編集か。
同作者の『アラビアの夜の種族』がすごい評判良くて、とても気になるので読もうと思ったが、長いし出だしがいきなりややこしいし、本当にこの作者を信じていいのかどうかわからなかったので、とりあえず短い話を読んで確かめてみることにした。
この本に載っているのは、なんか変なのばっか。
短編というよりは、長編の切れ端、アイデアノートみたいな感じ。
ただし、そこに描かれているのものは変幻自在で、非常にセンスにあふれていた。
彼女に振られたショックで妖精の足跡を撮ろうとする『ラブ1からラブ3』
天才すぎて四歳で自殺する『オトヤ君』
中学生同士の伝統ある秘密の深夜戦争に現れた怪人『鳥男の恐怖』
ベトナム料理を食べると見る不思議な夢『生春巻き占い』
などなど、ほかではあまり見ないような独特の着眼点の作品を、ナチュラルでいてちょっと変な文体を駆使してさらっと語っている。さらっとしているけどそこには愛とか絶望とか現代とかいろいろなモノが語られている。
一つ一つのストーリーに関しては、短すぎて特筆するようなものはなかったが、これだけ多くの話を、これだけさりげなく提示することが出来るのだから、作者の実力とセンスがたしかなのはしっかりと伝わった。
そんなわけで、次は『アラビアの夜の種族』を読もっと。
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