弁護士法人かごしま 上山法律事務所 TOPICS

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弁護士会の災害対策活動について

2019-04-01 | 弁護士会・弁護士

岡山県弁護士会の大山先生の取材記事です。

災害対策の貴重な資料とその分析です。


山陽新聞の記事からです。

※引用

被災者の法律相談から見えたこと 日弁連データ分析と私の経験から


 先日、日本弁護士連合会から「平成30年7月豪雨無料法律相談データ分析結果(第2次分析)」が発表されました。西日本豪雨に関して、岡山弁護士会、広島弁護士会および愛媛弁護士会が受けた法律相談を分析したもので、被災者がどのような悩みや問題を抱えているか、時間の経過によって被災者の抱える悩み等がどのように変化していくかを知ることができます。

 今後の被災者に対する支援や次の災害に備えるヒントが多く含まれるので、今回のコラムでは、岡山県内の相談についての分析結果と、本分析結果と私が岡山弁護士会環境保全・災害対策委員会委員長として被災者の相談を受けた経験をとおして見えてくる課題などを取り上げます。

 岡山県では「住宅・車等のローン」に関する相談が33.4%と最多で、「工作物責任・相隣関係」の14.5%が続きます。広島県は「工作物責任・相隣関係」に関する相談が39.8%と最も多く、「住宅・車等のローン」は3.8%しかありません。土砂災害による被害が多い広島県と、浸水被害が多い岡山県の違いが相談件数からも分かります。

 土砂災害が多い広島県は土砂等の撤去が最初の悩みごととなるのに対し、浸水被害が多い岡山県は、水が無くなるとすぐに自宅のリフォームや再建のための住宅ローンの返済に直面するという被災者の置かれた状況の違いもうかがえます。また、岡山県内で特に被害の多かった倉敷市真備町は新しい住宅が多い地域だったことも、ローンに関する相談が多くなった原因であると考えます。

 発災直後の7月中は「公的支援・行政認定等」の相談割合が16.2%でしたが、8月には10.8%まで減少しています。これは、発災直後、被災者は公的支援に関する情報を求めており、弁護士の法律相談に対しても公的支援に関する情報提供機能が求められていることが分かります。私の経験でも最初の10日間くらいは「市役所に電話してもつながらない」や「担当者がいないので教えてもらえなかった」などと公的支援に関する相談が多く寄せられました。自治体や支援団体は、発災直後に被災者が支援制度を知ることができるよう、支援制度を説明できる職員・スタッフを育成したり、災害前から支援制度をまとめた資料(日弁連作成「被災者生活再建ノート」など)を全戸配布したりするといった対応をとる必要があることが分かります。

 「公的支援・行政認定等」の中で、「仮設住宅」に関する相談が広島県では1.8%でしたが、岡山県では8.3%。岡山県内では住宅に関する悩みを抱えている被災者が多いことが分かりますので、自治体は仮設住宅の供与期限延長や、災害公営住宅の早期建設、入居条件の緩和などに取り組む必要があります。

 不動産の所有権に関する質問も時間が経過するほど割合が増えてきています。その中で、「自宅の公費解体を申し込もうと登記をとってみたら、遺産分割未了の不動産であったことが分かった。どのように手続きをしたらよいのか」という相談も多くありました。このことからも、相続の際にはきちんと遺産分割協議を行い、相続財産である不動産を相続人のうちの1人が単独相続して登記まで完了していることが災害時にも役立つことが分かりました。

 法律相談を知った経緯を見てみると、20代から40代の相談者が47.4%を占める岡山県では、SNSで知った人が5.9%いたのに対し、20代から40代の相談者が32.5%の広島県では、SNSで知った被災者は1.0%しかいません。テレビで知った相談者は、広島県19.0%で岡山県10.1%。行政や支援団体は、被災者の年齢層に合った情報発信のやり方を考えなければならないことが分かります。

 相談内容の違いは、支援制度の利用にも表れており、ローン問題を解決する自然災害債務整理ガイドライン(災害前のローンを減額または免除をして新たにローンを借りやすくするための制度)の利用数が岡山県では180件あるのに、広島県では20件であり、これに対し、相隣関係のトラブル解消に役立つ災害ADR(ADR=仲裁=とは仲裁人が中立公正な立場でトラブルの当事者双方の話し合いに関与して柔軟な解決を迅速に図る制度)は土砂災害の多かった広島県は25件ありますが、岡山県では7件しかありません(2018年12月31日時点)。

 浸水被害においても、自然災害債務整理ガイドラインの需要が高まることが分かりましたので、金融機関の同意や協力が前提となるガイドラインではなく、金融機関の同意等が無くても一定の要件を満たせば被災者が利用できるようガイドラインを法制化することが必要です。

 岡山弁護士会の災害無料電話相談(0120-888-769、祝日を除く月水金土曜の正午~午後4時)は、今年6月29日まで延長することになりましたので、被災された皆さまはお気軽にお電話ください。

 ◇

 大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」代表理事も務める。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

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