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被害者参加制度 と 裁判員裁判

2009-10-17 | 裁判員制度
姉と被告、緊迫の20分 被害者参加制度で遺族質問 「どう償う」涙声に 熊本地裁・裁判員裁判が結審(西日本新聞) - goo ニュース

※引用

姉と被告、緊迫の20分 被害者参加制度で遺族質問 「どう償う」涙声に 熊本地裁・裁判員裁判が結審
2009年10月16日(金)10:30
 熊本地裁での裁判員裁判は2日目の15日、被告人質問や論告求刑があった。被害者参加制度により、被害者の姉が被告に質問し、母親は心情を証言した。一方、6人の裁判員が被告に直接、質問する場面はなかった。検察は懲役7年を求刑、弁護人は「懲役3年、執行猶予5年が相当」と意見を述べ、裁判は結審。裁判員と裁判官3人は判決内容を決める「評議」に入った。判決は16日午後3時から言い渡される予定。

■被告証言台へ

 2日目の裁判員裁判は午前10時開廷。小糸静波被告(21)は前日に続き、黒い背広姿で出廷した。裁判員は、4番の男性が前日のジャンパーから背広姿に、5番と6番の女性はベージュやグレーの上着から、白っぽいシャツに変わった。

 被告の情状証人として、被告が働いていた会社の社長と父親が証言台に立った。まずは社長。

 「更生の姿を、私と会社のスタッフとお客が許すのであれば、(再び)採用します」

 小糸被告は逮捕後、自主的にこの会社を辞めている。弁護人の質問に対する社長の言葉に、被告は時に天井を見上げ、深く息を吸って袖口で涙をぬぐった。

 しかし、被害者側の園田昭人弁護士が「自分の子ども(が被害者)だったらどうしますか」と問うと、社長は言い切った。「もちろん、裁判で死刑にしてくださいと訴えると思います」

 続いて証言台に立った父親に弁護側、検察側の質問が終わると、野島秀夫裁判長は左右に座る裁判員に目を向けた。

 すると、補充裁判員の女性が一枚の紙を差し出した。裁判長は「補充(裁判)員は直接質問ができないので」と断り、「親子関係は小さいころからうまくいっていましたか。エピソードはありますか」と読み上げた。

 父親は「話はよくしていた。日曜日には釣りとかレクリエーションとか、とにかくよく接するようにしていました」。

 情状証人に続き、裁判は被告人質問へと移った。真ん中の証人席に座った小糸被告に、裁判員の視線が一斉に注がれた。

 弁護側の質問では、暴力をふるった動機について、「(被害者が)友達の彼女に手を出そうしたのはおかしいとの思いだった」と説明。「今後、事件にどう向き合うのか」という質問には「一生懸命働き、一生償って、お墓の前で謝りたい」と話した。

 昼休みをはさんで、午後からは検察側の質問に入った。

 検察官は、事件状況を映す写真を示しながら、最初につかみかかった相手が被害者ではなく、その同僚だった点を指摘。「友達のためでなく、自分が笑われたと思って腹を立てたのではないか」と詰め寄ると、被告は「おっしゃる通りです」と答え、下を向いた。

■怒り押し殺し

 午後1時39分、被害者遺族席から黒のスーツに身を包んだ姉(27)が立ち上がった。被害者参加制度による被告人質問。

 姉は「弟の容体が急変せず、単なるけがなら謝罪せずに済むと思ったのですか」と切り出した。被告をまっすぐ見つめ、心境や行動を問いただしていく。小糸被告は、上体を姉の方に左斜めに向けて受け答えした。

 姉 友人のためなら暴力をふるってでも助けようとするのですか

 被告 すみません。それは…

 姉 どうすればよかったですか

 被告 向き合って話していればよかったです

 裁判員全員が、質問する姉と答える被告の表情を見詰める。きっぱりした口調の姉と、たびたび言葉に詰まる被告。

 姉 弟が回復することを神社にお祈りに行ったりしましたか。罪を償うというのは具体的にはどういうことですか

 被告 自分の犯した一生消えない罪を、そういう行動や損害賠償を含めて果たしていくしかないと思います

 姉 そういう行動とは何ですか

 被告 お墓の前で土下座したいです

 法廷内の空気は張り詰め、補充裁判員の女性は熱心にメモを取る。

 姉 あなたは昨日から、法廷で私とちょうど目が合う位置に居ましたが、これまで何回か目が合ったことに気付いていますか

 被告 気付いていません

 姉 今回の事件で、誰に一番謝罪すべきですか

 被告 (被害者)本人とご家族です

 姉 弟が亡くなってから、弟のために何かしましたか

 被告 目の前にあることで償っていくことしかないです

 姉 ということは何もしていないんですか

 被告 具体的には何もしていません

 1番の裁判員が天を仰いだ。姉は怒りを押し殺すように質問を続けた。

 姉 弟の命日を覚えていますか

 被告 事件当日の…(数秒沈黙)。すいません、覚えていません

 姉 何月何日ですか

 被告 事件から20日後…

 姉 日付は覚えていないのですね

 被告 はい

 その瞬間、被害者の父親から「はーっ」というため息が漏れ、姉は落胆したようにうなだれた。

 裁判長が「だいぶん時間がすぎましたが」と姉に呼び掛けると、姉は「最後にもう一つ」と言い、「誠意がみえないうちは、私たち家族は受け入れられる心境にありません。今後どのように私たち家族や弟と向き合おうと考えていますか」。気丈に振る舞っていた姉が、途中から涙声に変わった。20分の息詰まるやり取りが終わった。

 続いて証言に立った母親(55)の意見陳述では、母親と同世代とみられる3番の裁判員はうつむき、補充裁判員の女性2人も涙を流した。傍聴席からもすすり泣く声が漏れた。

 論告などを経て、午後3時33分、裁判長が「審理は終わりました。被告は最後に何か言いたいことはありますか」と尋ねた。

 「先の覚悟ばかり考えていて、ほかにやることがあると、お姉さんに見透かされた。命日も覚えていないで、本当に情けないです」。被告はこう話すと、遺族席を向いて「(命を)奪ってしまい、本当にすみませんでした」と頭を下げた。

■補充裁判員1人解任

 熊本地裁は15日、同地裁で開かれている裁判員裁判で、同日の結審後に補充裁判員3人のうち1人を解任したと発表した。「裁判所が引き続き職務を行わせる必要がないと認めるときは、補充裁判員の解任を決定できる」とした裁判員法45条に基づく対応だが、性別や理由は明らかにしていない。結審後の評議には、裁判員6人と補充裁判員2人が参加した。


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