ドッグヴィル

電車から投稿。→したものを1つにまとめた。

久しぶりにすごい映画を見たって気分。あの平面に白線がかかれただけの舞台が話題だけど、それが珍しいだけの実験映画ではない。
ニコール・キッドマンって良い映画を選んでるよなぁ。トム・クルーズも。この元夫婦はすごいと思う。離婚しちゃったけど、俳優・映画制作者としては今でも良きパートナーだったりして。とにかく2人とも面白い作品を上手に選択していると思う。最近、この2人の出ている作品はハズレ率がとても低い。ま、いいや。この作品について。

考えがまとまっていないけどブログなので思い付くままに。

まず、人は人を裁いてよいのか、ということ。例えばよく死刑廃止論で、「殺人を犯した人間に対して、殺人は罪だといってその人間を殺すというのは矛盾している」という議論があるけど、この映画を見ていると、やはり誰かがきちんと裁かなければ罪が加速していくのではないかという気分になってくる。

権力はなんのために存在するのか。
誰かが権力を行使してある一定のルールに則り社会を支配し治めなければ、愚かな群衆が暴走していく可能性があるということか。民主主義の危険性。愚民思想が映画の下地としてあるような。誰かが権力を行使し導かなければ人間は「犬」と同じだということか。そしてこの村にはそのような存在がいない。村人は「犬」だ。ドッグビル、犬の村。

貧しく素朴で罪深き人々だ。エンドロールでデビッド・ボウイのヤング・アメリカンズが流れる中、次々に写し出される貧しく愚かな人々。愚かで自分勝手で残酷な、素朴な人々。

少数の賢いエリートが国を治める必要性。ニコール・キッドマンの身にふりかかる、自称素朴な人々によって行われる数々の罪。愚かな大衆が多数決で選択する無邪気な卑劣。

セリフとして出てくるが、人を許すという行為の傲慢さ。キリスト教的な博愛主義、「許しなさい受け入れない」という教えのウソ。ニコール・キッドマンが受け入れ続け、許し続けたがばっかりに暴走した素朴な人々の姿は、観客に強い怒りを覚えさせる無秩序の悪。許し続ければ秩序は保てない。囚人のジレンマゲームでの「シッペ返し」戦略を思い起こした。許し続ければ、相手とのちゃんとした関係は築くことができないのだ。然るべき時には許さないべき、「あなたがしたことは私にとって嫌なことだ」と意思表示をしなければ相手からのリスペクトは得られない。

抵抗しない、あるいは抵抗できない人間は、やがて人間とみなされなくなる。

労働を提供する家畜、性を提供する奴隷となったニコール・キッドマンに対して、素朴でいい人達のはずの村人は、誰一人救いの手をさしのべない。彼女はもはや人間ではなくなったからだ。人間であれば当然受けるべき慈悲を受けることができなくなる。戦場での敵兵士みたいだ。戦場での敵兵士は銃弾を打ち込むべき標的であって人間ではない。人間であってはならない。戦場で「彼には妻と子供がいて、知性とユーモアがあって」などと考えてはいけないのだ。村人達は、ニコール・キッドマンを人間と考えないことに決めた。もはや慈悲の気持ちは生じるはずがない。


1つにまとめるときにもっと加筆・修正しようと思っていたけど、時間も無いし眠いので、とりとめのないまま、以上、おしまい!
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
そーですね (おかぽん)
2005-05-11 01:13:59
トラバありがとうございます。

どーなんでしょうかこの映画。



裁き断罪する存在は、どこかに必要なんでしょうが、この後味の悪さは尋常じゃありませんよね。



いわゆるキリスト原理主義的な教義を元に、アメリカさんが戦争起こし、それを認める方々がたくさんいるこの時代は、旧約の神様の時代に逆行しているような気がしてしまいます。



かといって、彼ら村人を許したくはありませんが・・・難しい映画です。
 
 
 
TBありがとうございました (nicoco)
2005-05-11 17:19:23
拝見できてすごく良かったです。この作品出演者が好きだから、と言う理由で観ただけでしたが、最終的には凄い強烈な許しに対しての想いがありました。

本当に仰る通りですね。通勤時間が長いのですね。お疲れ様です・・。
 
 
 
TBありがとうございました (ぷちてん)
2005-05-11 17:50:22
この映画、嫌な気分にさせる(つまりそういう点で上手い)映画でした。

わたしは、なんともまとまらず感想を書いたのですが、こちらを読ませていただいて、頭の中が少し整理できた気がします。

もう一度見たいと思わないけれども(笑)、3部作のまた次の作品ができた時には、このドッグヴィルをもう一度じっくり見る事にします。
 
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