
昭和37年「チエミの民謡集/第4週・チエミのムード民謡」LPで発表されました。
翌年初頭にはその中からシングルカットされ「チエミの都々逸」EPのB面にも採用されました。
田原坂は昭和39年6月 日劇「チエミ大いに歌う」でも歌われた曲です。
ジャズ・ポップス ミュージカル 民謡...とレパートリーを広げたこのころ...
かなり「野太い発声法」にかわりつつありました。
キネマ旬報 (第371号 昭和39年8/1発行)
ナイト・スポット■第14回 チエミ大いに歌う
ルポ■大沼 正・白井佳夫 より...
これは、1964年6月23日~6月29日まで日劇で公演した江利チエミさんの「チエミ大いに歌う」のルポ記事です。
日劇伝統の「グランド・ショウ」の惨敗、続くミーハー相手のウエスタン・カーニバル・・・など大人の観客が離れていくことに対して危惧を感じていた記者さんは、この「チエミ大いに歌う」を「日劇近来のヒット!」と大賞賛しています。
この記事からこの「日劇/江利チエミ・ショウ」の内容が読み取れましたので、ここにそれを再現してみます。
原信夫とシャープス&フラッツの素晴らしい演奏で江利チエミ・ヒットメドレーのオーバー・チェアが黄色い緞帳の向こうから響きます。
下手からライト・ブルーのドレスの江利チエミ登場!
第1景
フライング・ホーム
新妻に捧げる歌
ビギン・ザ・ビギン(幾通りにもリズムを替えるアレンジ)
ここで江利チエミ、セリで降りる。
シャープの「思いでのサンフランシスコ」の演奏。
第2景
NDT(日劇ダンシングチーム)と中野ブラザース/啓介さん・章三さんが絡むダンスナンバー「ワシントン・ツイスト」
演奏もダンサーも「添え物ではない」・・・これは江利チエミショウならではの見事な構成!
※このときシャープは「美空ひばりと専属契約」をしていた頃... 6/21~はじまった新宿コマ「美空ひばりショウ」との掛け持ち予定だったのだが、調整が付かず「先約」の江利チエミにシャープ、コマはジュニア・バンドで、ひばりに泣いてもらうことになったとか・・・ 只一人「美空ひばり」と張り合えた芸能人は「江利チエミ」であったことが偲ばれます。
第3景
ここは、高い位置につるされたブランコに乗って江利チエミが歌う「アイリッシュ・ララバイ」
※しかし、これは「録音テープ」・・・???
それは「チエミの子守唄LP(CD)」をお持ちの方はお判りになると思いますが、一人二重唱のアレンジによるもので、チエミさんはナマ唄もテープに合わせるという手法でこの唄を披露したのです。
第4景
ロック・ローモンド
※チエミさんと中野ブラザースが「タップダンス」を魅せます!
第5景
チエミさんの大のお気に入り「ビー玉」こと羽鳥雅一さん、福田富子さんとNDTによるダンスシーン。
ここでもチエミさんは登場しない!はっきりダンサーを立てている。
第6景
「北から南から・日本民謡集」
チエミは粋な芸者姿で登場する。
花笠踊り
八木節
大漁節
深川くずし
さのさ
箱根八里.... からはじまって、
おてもやん、田原坂、鹿児島小原節 と一挙に16曲を披露します。
第7景
民謡に続いてセリが上がり、四台の琴が演奏する「城ヶ島の雨」...
※チエミさんは「失敗してもいいから和楽器とのコラボを一度やってみたかった」のだとか・・・
第8景
吊りり幕が上がりバックに琴が増え10台を越える。
ここからオーケストラ(シャープ)と琴の掛け合いで進行していく。
出し物は「チエミのマイ・フェア・レディ/メドレー」。
第9景
中野ブラザースの「時間通りに教会へ」
第10景
NDT(日劇ダンシングチーム)の「サマータイム」
第11景
「ショウほど素敵な商売はない」
アニーよ銃をとれのナンバーを披露。月光の子守歌など...
フィナーレは「テネシーワルツ」。
記事から引用します。
>・・・客席は満員。一階前の方はかぶりつきが立ち見しているありさまだ。チエミがいかにコンスタントな打率を保っている歌手かを証明した一時間十五分だった。
インタビュー記事から引用します。
Q)このショウで全部で何曲歌っているのか?
>全部で26曲。すべてナマで歌ってます。テープにとったのが2曲ありますけど、これにナマの声をかぶせて二重唱にしてるから、結局1日に3回、合計78曲歌ってるわけね。ちょっと大変です。だから休憩時間は、なるべく身体を休めるようにしてるの。
※この時はまだ「アニーよ銃をとれ」の公演の前だったわけです。
この秋の公演を考えると「力がわいてファイトが出てくる」ともコメントしています。
かなりハードな毎日を「絶頂期の江利チエミ」は過ごしていたのです。
ここでこんな質問も受けています。
Q)ナイト・クラブで歌ってみたいとは思わない?
>トンコ(雪村いづみ)のかわりにピンチ・ヒッターで2曲歌ったことがあるけれど、私はあんまり好きじゃない。ショウを見に来てくださる方だけじゃなくて、お酒を飲みにきてる方もあるわけでしょう。難しいわ。やはり私は、ステージのミュージカルをやりたい。お話が面白くて、笑ったり泣いたりできる、そんなミュージカルをね。
美空ひばりは歌謡曲調の日本の歌を歌う演歌歌手となっていった。
雪村いづみはスポット・ライト1本の照明のなかで絶唱できるシンガーになった。…
※江利チエミは、エンターティナーの道を進んでいった。
映画、テレビ、ステージ、舞台公演...チエミ丸はパンパンに帆を張って大海に漕ぎ出していったのです。