江利チエミファンのひとりごと

江利チエミという素晴らしい歌手がいた...ということ。
ただただそれを伝えたい...という趣旨のページです。

◆ ずいぶん前の江利チエミ特番で流れた自費制作レコード

2020年12月13日 | 江利チエミ(続編)

其の障りの部分が動画にアップされました。
冒頭みのさんの後ろのモニターにうつるチエミさんは「にっぽんの歌 サンフランシスコ・オペラハウス公演」
(共演:藤山一郎 五月みどり 他 昭和52年)でテネシーワルツをうたっているところです。 

リターン・トゥー・京都」もう片面は「ルート新幹線」という題名です。
30周年の際、アメリカ公演も行いましたが、その際にひょっとしたら発売を予定していたのかもしれませんが、幻のEPとなりました。

二代目「音羽たかし」牧野デレクターが江利チエミ30周年のころちょうど洋楽部門の実権を後進にゆだねた時期と重なったともききます。
なんで自費制作に???
牧野さんチエミさんのごり押しがキングレコードのなかできかなくなってしまった...といった話も一説ではあります。

牧野さんの話を再掲載します。

「S盤アワー わが青春のポップス」小藤武門さん著 …アドパックセンター刊 
ビクターさんのお偉いさんの著書です。

ここに興味深い話が書かれています。
雪村いづみ/ビクターvs江利チエミ/キングのフェアプレーともいうべきエピソードが書かれています。

>日本の戦後ポップスは、確かに、この「テネシーワルツ」江利チエミで始まったといっても過言ではないと思っている。
 …フムフム 確かに!ライバル会社の方なのにいいヒトだ!
         (ビクターさんは ひばりさんもチエミさんも落としています。)

>コロムビアとビクターが「子供のサルマネ」と決め付けた筈の、そんなチエミの真価を発見したのは、キングであった。
 …和田プロデューサーの名前は私でもしっかり「初代:音羽たかし」としても、功労者としても知っていましたが、デビュー決定にこぎつけたのには、著者の先輩格にあたる牧野剛さん(著作刊行時のキングR.取締役)の功績であったとも記述されています。

この著者:ビクターの小藤氏と、キングの牧野氏との、すばらしい「フェアプレイ」の話...
アーサー・キット...琥珀色の女王とよばれた、ショッ・ショ・ショジョジーや、ウエディングベルが盗まれた、セ・シボン、ウスクダラ...等数々のヒットを飛ばしたセクシーボイスを売り物にした黒人シンガーです。なぜ彼女の曲を提携会社ではないキングのチエミさんでレコーディングできたか...が、ここにしっかりと書かれています。

>牧野さんと私は、…こちらからチエミに合う歌をキングの牧野さんにおしえたり、また教えられたりして、日本のポップスの発展のために、仲良く談合をやったものである。
「キャンキャン声の雪村いづみには、もってこいの曲だ」と私に「Till I waltz...」をアドバイスしてくれたのは、キングの牧野さんであった。
「アーサーキットをコピーできるのは、チエミにおいてない…」私は、そのお返しにと、新曲を牧野さんにプレゼントした。「チエミには、黒っぽいフィーリングがよく似合う、この歌こそ、まるでチエミのためにできたようなものだ」と。まさにその通りになった、その曲が「ウスク・ダラ」だったのである。


また、この著書ではデルタとの出会いの経緯も少しだけ触れられています。

>「テネシーワルツ」で一躍スターダムにのし上がったチエミは、その年アメリカに渡り、永島達司さん(太洋音楽出版社長)のとりはからいで、デルタ・リズム・ボーイズのリーダー、カール・ジョーンズに師事するチャンスを得た。  ...と。

※雪村いづみさんのデビュー曲ともなった「Till I waltz again with you」の邦題は「想い出のワルツ」で帰朝記念として発売された江利チエミ盤は「思い出のワルツ」となっています。
※永島達司さんのことはここをクリック
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◆参考資料:昭和33年1/11号「週刊東京」記事より

チエミさんによる録音の予定が入っていた「思い出のワルツ」は、キングとビクターの会社を超えたフェア・プレイとフレンドシップによって、雪村いづみさんのデビュー曲「想い出のワルツ」として一足先に発売されました。

思い出のワルツは「帰朝記念盤として発売」すべく、アメリカでもみっちりレッスンをしてきたものだったそうです。羽田空港に到着後、キングの文芸部員と一緒にチエミさんは吉祥寺の自宅に急行、一晩みっちりレッスンをして、なんと翌日に「本番録音」に臨んだ...のだそうです。

羽田空港でペギーさん、松島トモ子さん、そして雪村いづみさんの出迎えを受けたこの翌日に「思い出のワルツ」は録音されました。キングレコードも技術を屈指して「おそらく日本ではじめてではないか」というエコーのかかった録音を試みます。(この録音は数ある江利チエミの名盤の中でも一・二を争うもの... と思います。)

初渡米からのチエミさんの帰国は、昭和28年5月19日のことです。
したがって録音は、5月20日となります。この日は「日活会館」で帰国歓迎会もあったとか...
その翌日からは、デルタ・リズム・ボーイズとのジョイントコンサートがはじまります。
5/21・22の東京を皮切りに、23が岐阜、24が名古屋、25・26が京都、28が静岡、29~6月の5日までが再び東京に戻り「浅草国際劇場」で、そして翌6日から12日までは大阪「大劇」でのステージが待っていました。(この大阪公演の時に、オープンカー・パレードが行なわれました。)
国内航空便、新幹線のないときのスケジュールです。その大変さは想像だにできません。

※デルタ・リズム・ボーイズのことは、
 続編「続江利チエミ」【54】デルタ・リズム・ボーイズ
 http://blog.goo.ne.jp/udebu60827/e/03b845eebfd5352dcbb78815f6faba91

※渡米のくだり・・・は、
 本編「江利チエミ」 6)ゴメンナサイ 
 http://blog.goo.ne.jp/udebu60827/e/f4093a9732da952c6704a2b4fbe80098
 41)デルタ・リズム・ボーイズとの出会いのこと
 http://blog.goo.ne.jp/udebu60827/e/a520b84ce8f571bbad9738dc1f5113c1
 109)ハリー・ジェームス楽団
 http://blog.goo.ne.jp/udebu60827/e/e7a19ae982a796b6f5d76f162f3debde
  続編「新江利チエミ」【31】ボーカリスト・江利チエミの軌跡
 http://blog.goo.ne.jp/udebu60827/e/2a244a13d7d414445741f31767340f80
                           こちらもどうぞご覧になってください。

この江利チエミ帰朝記念盤「思い出のワルツ」...
まだエコーという技術が日本にない時のはずなのに、リフレインで「ゾウ イット メイ ブレーーク ユア ハ--ト・・・」と、リタルダントがかかってアカペラで歌う部分に「突然エコーがかかる」部分があるのです。
巻頭の動画URLをクリックされて聴いてみてください!

コレ... 前にラジオで「日比谷公会堂(1929年開館)の化粧室なんかで録音したりしたこともある」という日本のジャズ特集の番組で語られていたことがあり、これもおそらくはその手法を使ったんだろう...ということを元にかつて「江利チエミの世界HP」(http://www.geocities.jp/chiemi_eri/)の管理人さんに投稿したことがありました。それが私のネット生活のルーツでもあったのですが...

ネット世界に足を踏み入れて...ひょんなことから素晴らしい出逢いを果たしました。
東京キューバンボーイズのメンバーだった方や、ゆかりの方々と3時間ばかりお話をする機会を授かったのです。

「思い出のワルツ」の録音のからくりはこうです...

突然「エコー」がかかる... ということだと、テープ録音などでその部分を「別録」しなくてはいけない... これまでの推測だとそうなります。
しかし、この録音はそうではない!・・・のだそうです。

 江利チエミさん
   バンド     --------------->エコーがかかる(ドーム効果のでる場所)

    ↑                         ↑
 ここに通常のマイクがある。        ここにもマイクを置いておく。

すなわち、エコーがかからない場所で普通の録音をする。
    エコーがかかる部分で「残響がワオ--ンと響く」場所でも同時にマイクで拾う。

録音スタジオ------隣接する化粧室・風呂場のように残響が残る部屋との境を開け放って...  エコーがかからないところ と エコーがかかるところ とにマイクを両方に置いて、そこで同時録音をした... という手法で録音されたものなのだそうです。

のちに厚生年金ホールが落成(1961年開館)されると、舞台でヴォーカルマイク・伴奏マイクを設置して、客席の方で「残響が拾えるところ」でも同時にマイクを設置して、同時収録をする... など、キングレコードは「ありとあらゆる努力」で様々な効果を出す録音をした... のだそうです。

江利チエミ「思い出のワルツ」の録音効果の謎・・・
  これは スタジオ 隣接するエコーがかかる場所(部屋)/あるいはエコーがかかる別部屋にスタジオの音を送って、そこでエコーがかかった江利チエミさんの声を拾う という同時進行で録音されたもの... ということでありました。



 

 


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