江利チエミファンのひとりごと

江利チエミという素晴らしい歌手がいた...ということ。
ただただそれを伝えたい...という趣旨のページです。

【31】 ボーカリスト:江利チエミの軌跡

2005年09月11日 | 続・江利チエミ(初期記事・後編)
SP原盤による再現シリーズ/江利チエミ vol.Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ.
   ...現在も入手可能なCDです。

このCDの裏には(昭和26年12月)...といったように録音年月が書いてあります。
VOL.1)1.テネシーワルツ~11.歩いて帰ろうまでが、昭和28年2月までの収録です。
これまでの録音より、12.思い出のワルツ(S28年5月)~18.アンナのほうが声もむしろ可愛らしくなって逆に若返ってる気がします。(デビュー当時の方が声が老けています。)それに「日本語も綺麗に」なってる気がします。

11.と12.のテイクの間...何があったのだろう??
藤原佑好氏著「江利チエミ・テネシーワルツが聴こえる」をひっくり返してみると、ちょうどこの間S28年3月下旬から「渡米して、公演・レコーディング」をしていることが判ります。
--->レッスンも受けて精進してきた...ということだと思います。
発声も高音が響く...
--->それは単にテクニックということではなく、自身の魅力をしっかり見つけて(再発見して)来たという精神面で大収穫だったと。。。
日本は、とくに女性の歌手は高音で澄んだ声=きれいな声...という信仰みたいなものがあります。
ハスキーボイスは当時まだまだ認知されていなかった...
学校教育自体、女の子はソプラノなんだ...と、偏った部分あります...
昔の学校の唱歌は今の子供にはキィが高くて歌えない...と聞きます。

前掲の推測ですが、チエミさんは当初、自身の声にコンプレックス持ってたきらいがあったような気がします。(それは、美空ひばりさんも同じでしょう...)
ひばりさんの場合はそれが笠置シヅ子さんのブギーの世界から歌謡曲...
チエミさんはやはり笠置さんを経由して本場アメリカのジャズへ...
  ドリス・ディはハスキー!...でも「いい声」です。
 --->この世界にチエミさんは活路を見出した。

川田正子さん式「♪みかんの花が~」という童謡歌手以外「ゲテモノ」扱いを子供だったひばりさんもチエミさんも初めは受けるわけです。

それともう一つ、ひばりさんは確かにアルト...ひくい声です。
チエミさん...たしかにアルトだけどそんなに低くない
   --->中音域の人...です。

しかし、どうもハスキーって低いってイメージがあるようです。(森進一さんはかなりな高音なのに「低い声」と思ってる人...今でも結構多いようです。)
そんな間違った風潮が強い頃ですから、「私には高い声はでないんだ。私は子供なのにとっても低い声」...と思い込んでた少女期があったと思うのです。

そんなこんなを、渡米してレッスンを受けたり、いろんな生のステージやテレビの番組にも出演し、また、いろんな人を見て研究できたってことによって「自分再発見!この声はいい声なんだ」...という境地に達したんだと思います。

それから、テネシーワルツの録音の時も最初、英語で吹き込む...と言って譲らなかったことは日本語の唄=きれいな声の人がうたう...とどこかで思っていた...
 --->日本語の歌へのある種の「わだかまり」があったようにも思えます。

江利チエミさんの声...
    ちょっと「こもり気味」というのも「特徴」です。
(女優としてのカツゼツの問題の克服、30年代中盤以降のミュージカルとの出会いによる発声の変化...これによってチエミさんは「こもり」を完全に後年克服しますが、その分、いわゆる「塩辛さ」が増し、喉への負担も大きくなっていったと思われます。)
「こんな声だから何いってんのか判らないからお芝居はヤダ」とはじめて昭和29年、平凡で美空ひばりさんと対談したときにも発言しています。

日本語というのは農耕民族の「おーい 田植えはおわったか~い!!」と、平野で遠くのヒトとコミュニケーションするために「全部母音で終わる」のが特徴です。
対して、狩猟民族の欧州人は、エサとなる動物から襲われるリスクもあって、洞窟生活でもあったから「ゼンブ母音で終わったら何言ってるかわからない」...
自然と「ドームの響きを加味して母音で終わるっていうパターンにならなかった」なんていう説もあります。
このある種「こもり気味」というこの「特徴」を、英語の歌では「特長」に転化していたとも思えるのです。
こもり気味 が、美味く英語の発音では、口腔の中で言葉を響かせる...という日本人に苦手な部分でチエミさんには「ぴったり」だったのです。
ゆえに、民謡などニッポン語の歌唱で「らりるれろ」が綺麗と感じる部分も...
初期は
 La Li Ru Le Lo...と(うまく表記できないですが)日本語がバタくさかったり、またあるときは逆にやけに平坦だったりに私には思えます。
それが「自分の魅力再認識」<---アメリカに招かれてレコーディング。それもヒットを果たし、実演でも成功を治めたのですから...
「ハスキーis beautiful.」という価値観の認識、そしておそらくは数ヶ月日本を離れ
たことによって逆に「自分は日本人」...という部分の確認。
ひょっとすると気持ち的には「封印」していたかもしれない音楽的な面での「ジャパネスク」な部分(充分に歌には日本人のハートが反映していたけれど)を肯定したのでは...
とも想像します。

また、同時に意識していたのかも知れない「クロっぽさ」もすこしマイルドに変化していくようにも思えます。
帰朝第一弾「思い出のワルツ」は、ホントに凄い!!
高音に対するある種の苦手意識が(もちろんきれいな腹式呼吸に変わってる...という技術的な前進もあると思いますが)ふっきれて、ハスキーis beautiful...を、「どんなもんだい」と聴かせてくれるように大きく変化してると思えるのです。

※余談ですが、ひばりさんは、チエミさんとは違った 裏声の屈指 品をつくる...という独自の歌唱法で「ゲテモノ」評価に立ち向かっていったと思います。

話をチエミさんに戻します...
もう一度チエミさんは新婚時期の休業後、(一般のセオリーに反して)1度ならずも2度目の声の「若返り」があった...と思ってます。
これは、なにより「実演の多かった江利チエミ」に充分な休養が与えられた...ということによるものだと思います。
しかし、この後「喉に負担のかかる母音で終る歌=ニッポンの民謡を、喉に負担のかかるこぶしを屈指してボリュームたっぷりに歌い上げる」ということ「舞台で喉に負担のかかるニッポン語で大きな声で歌い台詞を話す」ということ...そして「喉に一番悪い精神的なダメージを受ける」ということが重なり、結果として42年に喉をいためてしまいます。3度目の再生...は悲しいかななされませんでした。

「どうしたら聞いてくださる人が喜んでくれるか...」
ジャス・ポップスから俗曲・民謡 ラテン、ミュージカルを経て歌謡曲まで...1つ1つ練り上げて「チエミスタイル」を完成していったと思います。

かの文芸評論の神様・小林秀雄をして
>「私は、江利チエミさんのファンである。...江利チエミさんの歌で一番感心してゐるのは、言葉の発音の正確である。この正確な発音から、正確な旋律が流れ出すのが、聞いてゐてまことに気持ちがいゝ」...とも言わしめた、美しい日本語も、そのプロ根性で 精進して、モノにしていったのです。

江利チエミさんはかつて流行したモノマネ番組でも「あまりモノマネをされない歌手」でした。 これは「マネができない」ということのように思えます。
ひばりさんあたりは(ホントに似てるひとはまずイナイですけど)モノマネのかっこうの題材です。デフォルメをよけいデフォルメすれば、それなりに聴こえます。

強烈な個性...なのだけど、チエミさんのものまねは...
かつてチータもよく「象印 スターものまね...」でチエミさんをやられて、これは結構似ていたけれど...なんだか違う...似て非なるものでした。

さりげない なんてことなく 自然に...このなかに潜んだ「奥深さ」が、江利チエミの魅力です。
しかし、その「さりげなさ」の奥には彼女の並々ならぬ努力・精進があったのです。

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2 コメント

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気になるブログ10件 (せいさく0319 )
2005-09-11 11:02:32
せいさく0319と申します。

掲載されている日記を興味深く拝見させていただきました。事後の御連絡となりましたが、当方の記事にリンクをはらせていただき、日記を紹介させていただきました。



リンクをはらせていただいた件について、何か差しさわりがございましたら、その旨、御連絡ください。何分、ブログ初心者なもので、ご容赦ください。



また、よろしければ、今後とも、そちらのサイトを拝見させていただくつもりです。よろしくお願いいたします。



せいさく0319 

サイト名 気になるブログ10件

mail:noguchi0319@mail.goo.ne.jp 

http://plaza.rakuten.co.jp/kininaruburogu10/



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せいさく0319殿 (う--でぶ)
2005-09-11 17:45:43
気になるブログ10件 ...ご選定いただき光栄です。

このような辺境のブログですがたまには覗いてやってください。

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