41）デルタ・リズム・ボーイズとの出会いのこと

昭和28年、最初に渡米を果たした時...
ロサンゼルスからの帰途、ハワイに立ち寄りここでも公演を行い大成功を収めます。
ここでチエミさんはデルタ・リズム・ボーイズと出会います。
そして帰朝凱旋公演は「ジョイント・コンサート」のスタイルをとります。
なかでも第一テナーのカール・ジョーンズさんはチエミさんを妹のように可愛がり、公演の合間付きっ切りで歌の指導をしたのだそうです。

以下、本田靖春（著）「戦後」より引用します。
>最初に彼が教えたのは「オーバー・ザ・レインボウ」であった。それが上がると、次は「オン・ザ・サニー・サイド・オブ・ザ・ストリート」に移った。そして最後のレッスンとなったのが「レット・ミー・コール・ユー・スィートハート」であった。
たった３曲だが、ジョーンズによる指導は懇切をきわめて、チエミは黒人の身に備わったフィーリングを、じかに吸収することができた。

※画像の週刊誌の表紙は、昭和36年にチエミさん自身も本格的に芸能界に復帰し、自らプロデュースも行なった久々のデルタとのジョイントリサイタルの時のものです。

昭和28年、チエミ凱旋公演がデルタとのジョイントになったくだりは、チエミさん自身が30周年記念のチエミ・グラフィティのライナーノーツ、音楽評論家・安倍寧さんとの対談で語っています。

>デルタは永島達治さんが、私のはじめてのアメリカ公演をプロモートしてくれて、その帰りに一緒に日本に日本に連れて帰って、今で云うジョイント...　ま、私が六でデルタが四という形のものをやろうということで、帰りがけにわざわざハワイによって１ケ月勉強したんです。

デルタリズムボーイズは当時はまだ知名度は低かったようです。
スターといえば、ミルズ・ブラザーズ...　チエミさんの人気に便乗して日本でデルタを売り出す...そんな事情が隠されていたようです。

しかし...このデルタとの出会いはチエミさんにとって非常に大きなものになったのです。
当時の記事であるジャーナリストがチエミさんとデルタの親交をこう書いています。

>黒人のフィーリングは口から口へ、いや、大げさにいえば魂から魂へと伝えられたのである。

（資料参考提供／Ｊ・Ｙさん、大宅壮一文庫...他）

※余談...永島達治さんとは伝説のプロモーターです。プロモーターという呼び名の無い頃は「仕出し」「呼び屋」などと言われていた人...　このひとが後に「ビートルズ来日」の仕掛け人となるのです。
チエミさんは永島さん以前の進駐軍時代には「茂木さん」なるプロモーターの力を借りている時期もあったようです。茂木さんは白鳥みずえさん等の映画出演のパイプや進駐軍キャンプや将校クラブへの仕出しの仕事をしていた実力者だったようです。